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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
5/37

yes! I gotta believe!

 ヴァステン大陸。

 大小合わせて24の国が分割統治して尚、その広大な大地の3分の1にも満たないという。

 特に大きい国をあげれば5カ国。

 フランツ帝国、ドーツ王国、エタリア共和国、コルウェー国、東夷。

 それぞれが海岸線を覆うように円弧状の形を成しているという。

 その理由は大陸中央部に向かうほど強まる魔物の存在である。

 魔物は退治してもどこからか湧いて出てくるため、比較的弱い魔物が巣食う大陸外縁を統治するしか無いのだ。

 大陸は比較的どの地方においても自然の恵みを享受できるため特に危機せまる貧困などは無いのだという。

 むしろ各地の特色というべき自然の違いが、互いの外交を強固にしている部分もある。

 つまりは各国共に国色が強く、文化の違いを起こしより補う関係になっているのだ。

 一国が全てを保有することは広大な大地では不可能であり、むしろ違う国だからこその協定関係なのである。

 

 そして、今俺――乃木竜平がいる場所はフランツ帝国最北端、通称剣の丘。

 剣の形をしているとも、剣の達人の行き着く最終的な修行場であるからとも言われ、正確な語源は不明なのだという。

 ただ今もなお大陸にその名を馳せる剣豪たちがその生涯でこの地を必ず訪れているということもあり、剣士にとっては神聖な場所であるとともに特別な場所なのである。

 つまりここは由緒名高い土地であり、大陸で随一の有名所。

 ここで修行するためには、厳しい剣の修業と訓練を積んで、その上で一定の実力と資質を持ち師の許しがなければ足を踏み入れることは許されない。

 さらに言えば最北端、そして海岸線沿いでもあるため、地図の見たことがある人は道に迷う事はまずありえないのである。

 そんな場所にひょっこりと顔を出し、ここどこですか? と問われれば首を傾げたくもなるだろう。

 アイラ自身、俺が剣士で修行をしにやってきて、手合わせでも願われるのかと思ったらしい。

 

 

 

 

 

「そうか、なるほどな。たしかにそれじゃあ道に迷ったという言い方は疑いを招くわけだ」


「そういうことだ。まあ中には確かにそれでも道に迷った先人もいるらしいが例外中の例外だろう。その御方は整然とした一本道でも人に道を尋ねたという逸話を持つお人だからな」


 ウンウン、と腕を組みながら童話でも聞かせるように逸話を口にするアイラ。

 だがその口調からは嘲りなど一欠片もなく、尊敬の念と親しみしか感じない。

 

「なんかいいな、案外そういう人の方が超人だったりするもんだし」


 古今東西、どの世界でも天才となんとかは紙一重というやつだ。

 

「ああ、まさにそうだ。その人こそ我が流派『剣刃踏破』で唯一口伝を放てたというくらいだ。開祖ですら理論上可能であるとしか伝えられなかったのだぞ?」


「へぇ……」


「”その刃―――受けるすべ無し。その刃―――避けるすべ無し。その刃―――抗うすべ無し。之を持って流派『剣刃踏破』の最奥とす”………まだ初伝すら放てない私には遠い遥か先ではあるが、いつかはたどり着きたいものだ」


 背後に花畑が見えるくらいに陶酔しているアイラ。

 余程の強い思い入れと憧れが有るのだろう。

 

「俺にもそんな熱中できるものがあればね……こんな世界にはこなかったんだろうけど」


「ならばリュウも剣刃踏破の門を叩いてみるか? 稀人は極めて珍しい異才や資質、身体能力を持つという。もしかするかもしれんぞ?」


「あ、はは……やめておこう。俺には間違いなくそっちの才はないよ」


「む、そうか?」


 身体能力を重点にキャラメイクしてないしなぁ。

 いやちょっと待て。

 

「……なあアイラ、今までの稀人はそんなに凄い才能や資質を持っていたのか?」

 

 そんな俺の言葉に、

 

「うむ、この大陸における革命と呼べる出来事やモノには全て稀人が関わっているというしな。数十年、時に数百年に一度現れるという稀人はまず間違いなく名を残しているし、各国の建国もほぼ稀人の功績だというのが学説らしい」


「はぁ……凄いな」


「何を言う、リュウもその稀人ではないか。それに私も無関係ではなくなったみたいだしな」


「? アイラは稀人になにか関係も持っているのか?」


「? いやリュウお前のことだぞ?」


「ええ!?」


「なんでも稀人に初めて出会い縁を結んだ者は、その殆どが終生の仲であり、時に友として時に夫婦として背中を預けていたのだと聞く。ははは、そう考えればこれからの修行の旅にも張りが出てくるというものだ」


 いやちょっととんでもないことを言い出してるんですけど!

 ひょんな出会いから終生の仲!?

 それって……!?

 

「俺とアイラは生涯付き合っていくってことか!? つまり……!?」


「ん? なんだ? 私では不満か?」


「いやいやそういう意味じゃなくて! その……アイラはそれでいいの、か?」


「私は流浪の剣士だからな。お前に付き合うこと何ら問題はないさ。むしろ望む所といったところか」


「望むところって……」


 いや確かにアイラは美人だし、不満はないって言えば無いけど……そんな簡単に決めていい問題なのかぁ?

 

「まあ、まだ会ったばかりでお互いもろくに知らないんだ。もし気が合わなければそこで道を違えるも良し、絶対の契約というわけじゃないのだからお互いを知るところから始めればいいさ」


 そういうものなのか?

 それでいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……っ」


 昨日はアイラの勧めで小屋へ泊めてもらった。

 なんでも日が出ているうちは、芋虫みたいな弱い魔物しか出てこないらしいが、夜になると強い魔物が徘徊するらしく、危険なのだそうだ。

 日が暮れる前にこの小屋にたどり着けて本当に良かったと冷や汗を流した。

 

 部屋をぐるりと見渡すと、隅で毛布を肩にかけて背中を壁に預ける、剣士的眠り方をしていたアイラの姿は見当たらない。

 外にいるのだろうかと見てみると、

 

―――ヒュン、ヒュン!


 額に汗を流しながら剣を素振りするアイラの姿があった。

 その振りは鋭く、剣なんて全くわからない俺ですら見惚れそうなほど美しい型。

 真剣を振るっているっていうのによくあんな速度を出せるものだと感心するな。

 

「………っふ! ……っふ! ………?」


 此方に気づいたのか、アイラが素振りをやめ此方を向く。

 そして剣を肩に乗せ此方へ歩いてくる。

 

「すまない、少しうるさかったな」


「いや、起きたのは素振りの音が聞こえたわけじゃないし、いいんだけど……」


「? なんだ?」


 俺の視線のちょうど先、彼女の持っている得物だ。

 片刃で弧を描く反り。

 柄の拵えは微妙に違うものの、これって……

 

「日本刀……?」


「!? ニホントウと言ったか、今!」


 ぐるんと首だけを勢いよく回して此方を見るアイラ。

 

「リュウ、お前はニホンを知っているのか!?」


 ものすごい勢いで此方に迫るアイラ。

 少し濡れた赤い髪が肌に張り付いて色っぽい………じゃなくて!

 

「あ、ああ。っていうか俺日本人だし……」


「(パクパクパク)」


 声にならない叫びを上げるアイラ。

 数瞬後、

 

―――ガシッ!!


 勢いよく手を握られる。

 やめて! 童貞には、コレ以上危険よ!

 

「やはり私とリュウの出会いは運命だったのだ!」


「yes! I gotta believe!(そうさ! 俺なら出来るさ!)」


 よくわからないことを口走ってしまった。

 突然のことが起こると人は果てしない方向へ舵をとってしまうものである。

 

 

 

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