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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
4/37

弓が戦場で活躍する理由がよく分かる


 目標位置前方およそ20m。

 風向き良し、後方確認。

 

「って!」


 俺の腕から放たれた弾丸は、予測と違わず、目標へと吸い込まれていく。

 

「ピィィィ!?」


 いい声でなくじゃないか。

 ふふ、まるで気分はスナイパーだ。

 まあ使ってるのは弓なんだけど。

 いや、広義的には正しい使い方なのか。

 まあわからんが、それより見てくれアレを。

 

『グリーンキャタピラ』

 LV1 

 4/22

 

 相手に近づかず、離れた場所からでも一撃でコレですよ。

 まさに戦場の革命と言っても過言ではない。

 しかしここまで有効だとは思わなかったな。

 

 

 あれから色々と考えた結果、近距離戦は街までの道程が分からない以上、避けたほうがいいということだ。

 広いレンジを保ちながら一方的に攻撃することが出来る武器。

 それがこれである。

 

『粘糸弓』 +2

 攻撃力+22

 グリーンキャタピラの粘糸を使った木弓。

 しなりがよく、頑丈で扱いやすい

 

 色々と観察眼で辺りを見渡し薬草等を探していた所、目に入ってきたのが丈夫な木+2というよくわからないものだった。

 多分丈夫な木の中でも品質がいいから+2が付いてるんだろう。

 その時ふとグリーンキャタピラのドロップアイテムの粘糸が頭によぎり、弓を作ってみようと思ったわけだ。


 ざっと見たところ、コレ以上品質の良いモノは見つからなかったので、ダガーでなんとか枝を頂いて、錬成によって作り上げたのだ。

 弓の知識もないのに作れるかは不安だったが、錬成は造りたいものをイメージしてスキルを発動させるとおおよそ思い通りに出来てしまうらしい。

 ワンオフものの手作り感がありながら、しっかりとした性能を持つ弓を素人の俺が作れる辺り、錬成はなかなかに使い勝手のいいスキルである。

 矢は木の枝を加工して作ろうかと思ったのだが、これも性能が良ければ威力が上がるのではと丈夫な木+1を使って作った所、

 

『木の矢』 +1

 攻撃力+3 

 丈夫な木の矢。

 普通の木の矢より高威力

 

 が一本の枝で5本できた辺り、質量保存の法則はどうしたと問いたいところだ。

 この弓と矢はこの平原にいる限り無尽蔵に手に入るため、補給には困らない。

 唯一の懸念はもしかしたら弓スキル、射撃スキルみたいなものがあって、弓の熟練度ばかりが上がってしまう可能性があることだ。

 まあ序盤もいいとこではあるため、あまり神経質にならず、まずはLVを上げて道中を楽にすることから始めたほうがいいだろうし気にしないようにしている。

 

 とまあ、説明はこの辺にしておいて、弱っているグリーンキャタピラの始末をしてしまおう。

 

「ピィィィィ…」


 どこか悲しくなる声を上げ消滅していくグリーンキャタピラ。

 消えた先にはドロップアイテムがあった。

 

『緑の触手』

 グリーンキャタピラの触手。

 主に換金や薬の素材となる

 

 ふむ、これで9個目か。

 最初に倒したグリーンキャタピラを含めると合計で10匹倒したのだが、粘糸はあれから出ていない。

 やっぱりレアドロップなだけあって確率は低いのだ。

 それでも一匹目が落とした辺りを鑑みると、俺のリアルラックも捨てたものじゃないな。

 ちなみに今のステータスはこうだ。

 

リュウ 

人間

LV・5  

HP・41/41 MP・7/12

膂力・・18 魔力・・10 耐久・・12

精神・・9 敏捷・・17 器用・・25

幸運・・12


攻撃力・55

防御力・24

魔防御・19


・装備


 粘糸弓+2

 木の矢+1 ×13 

 布の服

 スニーカー


・スキル


パッシブ

『直感』『経験値Ⅱ』

アクティブ

『調合』『錬成』

ユニーク

『良縁』『鑑定眼』『観察眼』

『言語理解』『メニュー閲覧』



 攻撃力がLV1ダガーより格段にアップしている。

 防御力の伸びがイマイチなため、やはり接近戦は難しいだろう。

 しかし弓を使うようになってから、器用さの伸びが著しい。

 それとも錬成をするようになったからだろうか。

 レベルアップごとにしか数字は変化しないのだが、どうにもステータス補正がかかっているように思える。

 精神なんてまだ一桁だし。

 このままレベル上げしながら街に向かうとしたら、ステータスの偏りが結構な具合になりそうだ。

 一度腰を据えてステータス上昇補正について取り組んでみたいな。

 ここでは紙はあっても書くものがないし。

 

 

 

 

 そんなことを考えながら数時間、キャタピラを倒しては錬成しを繰り返していた所、

 

「おお!!」


 ようやく民家らしきものが見つかった。

 流石に何時間も戦闘していながら誰とも会わないっていうのキツかった。

 宿に泊まりたい。

 金はないが緑の触手はダース単位である。

 一応換金アイテムでもあるらしいので、コレで手をうってくれる……はずだ。

 もし駄目なら道中で摘んだ薬草や香草の類で交渉してみよう。

 

―――コンコン


「すいませーん、どなたかいらっしゃいますか?」


 この世界がどういうマナーなのかはしらないが、ノックはきちんとすべきだろう。

 しばらく待つと、

 

「あ~……誰だ?」


 のそりとドアを開けて出てきたのはセミロングの赤い髪を後ろで束ねた女性だった。

 寝起きなのか眠たげに目をこすっている。

 背丈は俺の胸辺りなので比較的小柄だろう。

 今は眠たげにしているが、目鼻立ちはくっきりとしており、ハーフ系の美人だ。

 寝巻きなのかゆったりした服装をしており、体型は分からないがそこそこ出るとこは出ており、スレンダーともグラマーとも言いがたい中間的なスタイルである。

 

 失礼だとは思ったが頭の上に表示されている情報をちらりと見る。

 メニュー閲覧はしないから勘弁して欲しい。 

 

『アイリィ・ラドネイ』

 女

 LV・15

 HP・98 MP・21

  

 おお、初めて見る人だが結構レベルも高いな。

 グリーンキャタピラなんかはまるで相手にならなそうだ。

 ひと通りの感想を抱きながら、

 

「すいません、寝てるところでしたか?」


「………いや、気にするな。で、そちらは?」


 一瞬なんて言っていいか迷う。

 正直に異世界から来ました、なんて言えばそれこそキチガイもいいところだ。

 とりあえず無難に思える辺りにしておこう。


「なんというかその……迷子、ですかね?」


「―――む?」

 

 俺の言葉が予想外だったのか、目の前の女性は声を噛み殺すように肩を揺らし笑い始めた。

 ようやく笑いの虫が収まったのか、

 

「ああ、すまない。あまりに唐突な事を言うものだから……くっく」


「あの……」


 声を上げた俺を手で抑え、

 

「ごほん……! まあ、とりあえず中に入るといい。笑って済まなかったな」


「はぁ……」


 そういうと扉を開き、俺を招き入れてくれた。

 とりあえず断るのも変なので、おじゃますることにしよう。

 

 

 

 

 

 

「さて、まずは私から名乗らせてもらおう。私の名前はアイリィ・グランヴェル、流浪の剣士とでも名乗っておこうか。アイリィだと幼く聞こえるので、アイラとでも呼んでくれ」


「あ、はい……って、グランヴェル?」


「? どうした、別に珍しい名字でもあるまい?」


 この人の表示されている名前はアイリィ・『ラドネイ』だ。

 偽名を使っているのだろうか?

 名前はそのままで苗字だけ隠すなんていうのはちょっと不自然だ。

 だが、それを口にしても怪しまれるだけだしな。

 初めての異世界コミュニケーションだ。

 慎重に事を運ぼう。

 

「俺は乃木竜平です。あ、乃木が苗字だからリューヘイ・ノギになるのかな。友人たちはリュウって呼びますので気軽にリュウと読んでください」


「そうか、なら遠慮無くリュウと呼ばせてもらおうか。率直に聞くが、迷子というのは嘘だろう?」


「――!」


 一瞬返事に詰まる。

 

「そんな驚いた顔をするな。少し考えれば分かることだ、リュウも本気で迷子と言っていたわけではあるまい」


「えー……」


 いや、本気で騙そうとしていたんですけど。

 そんな俺の表情に、アイラは逆に驚いた顔をしてみせる。

 

「まさか本気で道に迷っている……とでもいうのか? この剣の丘で?」


「け、剣の丘? で、でもこんなに広ければ道に迷いも………しますよね?」


 いかん。

 思わず疑問形になってしまった。

 

「…………」


 うわ、沈黙した。

 そんなに不自然か!?

 いやでもこんなに広いし、道標もないんだから道に迷っても仕方ないと思うのだが。

 しばらく気まずい雰囲気が続く中、アイラは静かに口を開いた。

 

「……失礼を承知で率直に聞く。貴方は『稀人』か?」

 

「稀人……とはなんでしょうか?」


「稀人を知らない?」


「………はい」


 ここは正直に答えないほうが良かったか?

 なんか非常に緊張してきたんですけど!

 

「そうか。稀人を知らない、さらに剣の丘で道に迷っているという。それこそが稀人たる証なのかもしれないな」


「はぁ……」


「貴方が稀人だというのなら恐らくは『この世界のことは何も知らないのだろう』。袖振り合うも多生の縁という。知っておくべきことも多かろうし、私で良ければ力になろうではないか稀人殿。

―――いや『異世界からの旅人』殿」

 

「!?」


 そうして俺はアイラ・グランヴェル―――アイリィ・ラドネイと出会ったのである。

 

 

 

 

 

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