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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
3/37

やめろ芋虫! ぶっ飛ばすぞ!

「ヒィィィィィィ!!」


 思わず劇画調の悲鳴を上げてしまった。

 駄目だろアレは!

 駄目だろちゃんと検閲しなきゃ!

 もぞもぞと動くその巨大な芋虫の姿はちょっとしたホラーである。

 

「ピ?」


 しかもさっきの叫び声で此方に気づいてしまったようだ。

 そして、

 

――――モソモソモソモソ!!


「ぎゃああああああああああっ!!!」


 結構な勢いで此方に突進を仕掛けてきた!

 すかさず俺はダッシュで逃げる、が意外にもこのクリーチャーは手足がない分際で俺のダッシュに追いつこうとしている。

 高速で追いすがる巨大な芋虫。

 デカイ上に動きがキモイため生理的に受け付けない。

 俺は今ただひたすらに逃げたい!

 だが、そうこうしている内に距離は縮まってくる。

 

「くそったれ! やってやんよ! 芋虫ごときが!」


 このままではいずれ追いつかれる。

 ならば、手持ちのダガーで切り刻んでやる!


 ダガーを宙から取り出し、腰が引けながらも切っ先を芋虫に向ける。

 俺が(へっぴり腰ながらも)攻撃態勢をとったのがわかったのか、接触する2m手前で芋虫は停止した。

 お互いににらみ合いが続く。

 

 ……そうして数分の時が流れた。

 と、俺は思っているが、実際には数秒だったかもしれない。


―――先制攻撃だ!


 気持ち的にももうこれ以上向き合っていたくないし、なによりコイツはLV1である。

 ダガーを装備した俺の攻撃力が21。

 アイツの頭の上に表示されてるポップには27/27。

 恐らくはHPであろう数字だ。

 2回、ないしは3回ダガーで攻撃すれば恐らくは倒せるはずである。

 芋虫が硬い皮で覆われているなんてことがなければ、だが。


 くそ、こんなことなら基礎能力アップや能力値重視でステを組むんだったかもしれない。

 よもやこんなリアルでモンスターと対峙するなんて思ってもいなかったのだ。

 ジリジリと間合いを詰めてくる芋虫。

 此方の間合いを図っているのか、攻撃する機会を窺っているのか。

 そして、

 

「らぁぁぁああ!!」


 先に動いたのは俺。

 右手に持ったダガーを芋虫に切りつける。

 

「ピィィィィ!!?」


 手応えはあった。

 苦悶の声を上げる芋虫。

 返り血ならぬ返り体液が俺の頬に跳ねる。

 決していい感触ではないが、今は気にしている場合ではない。

 ヒットアンドアウェイの要領で一旦後ろにステップする。

 芋虫のHPは13に減っていた。

 なら後一撃だ!

 俺は勢いに任せてダガーを振りかぶるが、それより速く、というか苦悶で暴れていた芋虫の胴体が運悪く俺の腹にヒットする。

 

「ぐぅえっ!」


 思わぬ反撃をしかもモロにミゾに入ってしまった。

 たまらず膝からくずおれる。

 胃が揺さぶられたかのような衝撃。

 実は芋虫程度の攻撃なら大して聞かないのではと思っていたが、大きな間違いであり、バットで思いっきり腹をフルスイングされた位のダメージを受けた。

 その思わぬ攻撃に、俺は怯むどころか逆に腹が立ってきた。

 

「この……ヤロウが!」


 こういうのを覚悟が決まるというのだろうか。

 むしろ逆ギレしたと言ってもいいのかもしれない。

 

「お返しだ!」


 渾身の力を込めて芋虫のヤロウにヤクザキックをかます。

 芋虫のHPが9になる。

 必ずしも得物で攻撃しなければならないというわけではないらしい。

 トドメとばかりに追撃しようとするが芋虫も必死なのか、暴れる力が強くなっている。

 迂闊に近づけない。

 ならどうするか?

 

「ぶん投げればいい!」


 俺は右手に持ったダガーを芋虫に投げつける。

 感情的になっていい加減に投げたダガーだが、幸運にも芋虫の眉間にサクッと突き刺さった。

 その瞬間芋虫のHPは0になり、淡く光りながら消えていく。

 まるで何事もなかったように俺の周りに静寂が満ちた。

 そして、

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉ!!!」

 

 俺は思わず雄叫びを上げガッツポーズだ。

 憎き宿敵をこの手で屠ってやった、まるで吉良上野介を討ち取った大石内蔵助の如くであった。

 

―――そしてこの行為と記憶は俺の歴史から抹消したい記録となるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくらテンパってたからってダガーを投げるかね、俺」


 およそ3分ほど興奮と感動の後の揺り戻しで、LV1芋虫に手こずった挙句、武器を投げつけた俺の落ち込みようは酷かった。

 コレ以上弱い敵いないんじゃないかという魔物だろう。

 いくら初陣とはいえ限度はある。

 

「でももう一度戦えと言われれば、また投げてしまうかもしれないが」


 現在の俺のHPは16/23だ。

 指を切って戦う前は22だった為、芋虫の一撃で6食らった計算になる。

 いまだ影すら見えない街に辿り着く前にこの調子ではやられてしまうだろう。

 どうにか対策を建てたいところではあるのだが。

 

「ん?」


 何か違和感を感じ、ふと地面を見ると糸のような何かを発見した。

 

「なんだこれ?」


 よく目を凝らしてみてみると、

 

『粘糸』

 グリーンキャタピラの吐く糸。

 粘りと頑丈さを兼ね備えているため、

 弓の弦として最適。 

 ☆グリーンキャタピラのレアドロップ

 

「アイツ……糸を吐くのか!?」


 レアドロップという事実より、現実の芋虫が糸を吐くかどうかは俺には分からないが、アイツは吐く事に驚愕を感じてしまった。

 『粘りと頑丈さを兼ね備えている』ということは初期ステでもかなり貧弱な俺は、陸の上で跳ねる一匹のエビとなっていたのかもしれない。

 

「そうなるとますます状況が詰んでくるな。一度ステータスを見てなにか考えてみるか」


 そう言ってメニューを開く。

 

リュウ 

人間

LV・2  

HP・16/28 MP・7/8

膂力・・12 魔力・・7 耐久・・8

精神・・8 敏捷・・10 器用・・11

幸運・・9


攻撃力・27

防御力・20

魔防御・11


・装備


 ダガー 

 布の服

 スニーカー


・スキル


パッシブ

『直感』『経験値Ⅱ』

アクティブ

『調合』『錬成』

ユニーク

『良縁』『鑑定眼』『観察眼』

『言語理解』『メニュー閲覧』


 

「おお!? 一回戦っただけでレベルが上がったのか!」


 芋虫はさほど強い魔物ではないだろうし(ヘタすると最弱)、最初はよほど必要経験値少なかったのか、もしくは、

 

『経験値Ⅱ』


 このパッシブスキルのおかげだろう。

 恐らくは%での上昇なんだろうが、果たしてどれくらい上がっているものなのか。

 そしてステータスの上がり方もなかなかだ。

 確か2桁のステはなかったはずなので、最小でも3上がってるステがあるはずである。

 メモしておけばよかったな。

 経験値は上昇しても、ステ振りは上昇しないと思うんだがどうなんだろう。

 経験値Ⅱが%の上昇なのか、+αでⅡなのか。

 後者は無いとは思うんだが。

 

「どうにか検証出来ないものか」


 俺は基本的に乱数調整できるものはしていくタイプのゲーマーだ。

 炎の○章シリーズでも最低4回はピンピンという音を聞かないとリセットしていた。

 あの踊り子は平気で無音で終わるから腹立つんだよな。

 そんな益体もないことを考えていると、

 

「あ」


 メニュー画面を触ってしまったらしく、画面が変化し、

 

 

『経験値Ⅱ』 パッシブスキル

 取得経験値が1,75倍になる。

 パーティ全員に効果。

 同種スキルは重複可能

 

 

「ヘルプ機能もあるのか!? っていうかタッチパネル!?」


 日本の技術は素晴らしいな。

 他のスキルもみてみるか。

 ポチポチと音はならないが、気分的にそんな感じで。

 

 

『直感』 パッシブスキル

 敵の行動や力量を察知する危険把握能力。

 同種スキルは重複可能

 

『調合』 アクティブスキル

 二つ以上のものからを一つを作り出すスキル』


『錬成』 アクティブスキル

 材料を元に鍛え上げ、物を作ったり、性能を向上させるスキル』

 

『良縁』 ユニークスキル

 人との出会いの巡り運が向上する。

 パーティ仲が深まりやすくなる

 

『鑑定眼』 ユニークスキル

 アイテムの名前や価値、性能が分かる

 

『観察眼』  ユニークスキル

 物などを探し当てやすくなるスキル。

 他人や魔物の名前、LV、HP、MPが見れる

 

『言語理解』 ユニークスキル

 異なる言語を通訳するスキル。

 ただし魔物の言葉や知能の低い動物には無効

 

『メニュー閲覧』 ユニークスキル

 指定した相手の能力一覧をメニュー表示するスキル。

 他人に見せることは出来ない

 

 


「…………なるほど」


 さっき倒したグリーンキャタピラの頭上にポップしていた情報は、観察眼によるものってことか。

 そうなるとこの世界では相手の能力を把握することが基本的に出来ないということか?

 自分自身に対してもメニュー閲覧でしか見ることは出来ない?

 ………どうだろう、そこら辺はまだわからない点だよな。

 とりあえず無闇矢鱈に人のステータスを吹聴したり、教えたりするのはやめたほうが良さそうだな。

 プライバシーもあるだろうし、うん。

 ………まあ自分自身の胸に秘めておくのは構わないよな、多分。

 

 ひと通り目を通してみたが、どうにも俺は生産職向きのようだ。

 まあ何となくわかってはいたんだが。

 能力の差をアイテムで埋めるといった行動が主体になるんだろうな。

 何はともあれ、とにかく街に行かないことには始まらないだろう。

 その為には色々知恵を絞る必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 


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