表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第二章 パーティ結束編
22/37

最近良く会いますね

 

 

 翌朝、目が覚めるとアルベルトは姿を消していた。

 おそらくあれからアイラがアルベルトと話をつけたんだろう。

 どんな話し合いをしたかは分からないが、朝顔を合わせたアイラはスッキリとした顔をしていたのでうまく話がまとまったのだろうと思う。

 セシリーも不思議そうにはしていたものの、何かを言うことはなく顔を洗って食事の支度をしている。

 うん、いつもの朝だな。


「む、リュウか。早いな」


「早いって言ってももう二人共おきてるが……」


「そうか、うん、そうかもしれんな」


 若干アイラの挙動が怪しいが、それも一過性のものだろう。

 一応日課にしていた槍の素振りを終えると、食事が出来上がっていた。

 三人で焚き木を囲んで食事をする。

 

「今日はどうする? まだ鉱石は結構あるし、出来れば錬成に時間を当てたいんだが」

 

「ふむ。私は構わんが……」


「ボクも別にこれといって……」

 

「そっか…」


 二人の了承を得た俺は、朝食をかっこむと、自分のテントへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 テントに戻った俺は、鉱石を胡座をかいて見据える。

 防具を錬成するとはいっても今のままでは爆発しか起こる気がしない。

 どうやっても、なにをやっても錬成されるのは俺の髪の毛だけだ。

 完成品の防具を手本にすればイケルと思ったんだがなあ。

 何か別のアプローチはないものか。


 何かもう思考が堂々巡りをして、ドードー鳥が頭の中でタップしている気分だ。

 いっそ防具は諦めたほうがいいんじゃないだろうか。

 せっかく手に入れた鉱石もかなりの量を消滅させている。

 それならアイラの鉄のシャムシールをもっといい素材で作っても良かったことだし。

 

「あ~…だめだ。頭がフットーしそうだよぅ!!」


 地団駄を踏む。

 じたばたした足が、アイラの買ってきたブレストプレートに足が当たる。

 かなり八つ当たり気味だがイラッとした俺は、それを両手で握りつぶさんばかりに抱える。

 

「ちくしょう! こんな風にどうやったら出来るっていうんだ。いっそこのままコレを錬成し……て……」


 ピンとくる。

 この形が作れないなら、この形を元にすればいいじゃない。

 

「コレは来たか!!!」


 かなり突拍子のない思いつきだったが、行けるような気がした。

 形は防具でも材料は鉄だ。

 大口真神の外套も毛皮を重ねあわせるように錬成して作ったわけだし。

 この完成品の防具さらにカスタマイズして行く形ならもしくは……

 

「なんだか今日は行けそうな気がする!!」


 さっそく鉱石をかき集め錬成を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

『鉄のブレストプレート』+1

 +28

 鉄で出来た胸当て


 

「うおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」


 思わずガッツポーズをしてしまう。

 ついに防具が錬成できたのだ。

 いや錬成っていうかカスタマイズみたいなものだけど、偉大なる第一歩には違いあるまい。

 苦節1年、ようやく俺は試練を乗り越えたのだ……実際は3ヶ月も立ってないと思うけど。

 これで錬成の幅が広がるな。

 よし、この工程をカスタマイズと名づけよう。

 俄然テンションが上がってきたな!

 とりあえずこの結果を報告しなければ!


「どうしたんだ? なにか叫び声のような声が聞こえたんだが?」


「おお、アイラか!」


 俺はちょうどよくテントを覗いてきたアイラに満面の笑みを浮かべる。

 そして俺は誇らしげに例のブツを掲げた。

 

「む、もしかして錬成に成功したのか?」


「ああ、やっとのことでな」


 そう言ってアイラに出来上がったブツを渡す。

 それをみたアイラは少し眉をひそめた。

 

「……ふむ、あまり違いがわからないが」


「まあ、ただ鉄の錬成に成功したっていうだけだからな」


 形はまんま完成品のブレストプレートのままなので、見た目の違いはわからないだろう。

 

「とりあえずここから、だ。サイズなんかも調整しないといけないしな」


「そうか」

 

 口調はそっけないが、アイラの口元があがっている。

 俺が懸命に錬成しているのを一番知っているのはアイラだ。

 内心かなり喜んでくれているのだろう。

 

「と、いうわけで詳しいサイズをだな……」


「調子に乗るな」


 俺は魔力切れでもないのに、アゴに閃光のようなフックをくらい意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから俺は防具を作るマンと化した。

 買い込んであった防具をアイラやセシリーにあわせてカスタマイズを繰り返していく。

 足りない鉱石はその都度坑道に出向いて、補充をした。

 そのおかげか、合宿一ヶ月強。

 ついに全員の持ち込み防具がカスタマイズ完了したのだった。

 

・リュウ


 ジルコンスピア+3

 鉄のハーフアーマー+3

 鉄のグローブ+3

 銀のグリーブ+3

 冒険者のピアス

 大口真神の外套

 

・アイラ

 

 鉄のシャムシール+2

 鉄のブレストプレート+3

 鉄のグローブ+3

 鉄のグリーブ+3

 冒険者のピアス

 天目一箇神の腕輪

 

・セシリー


 樫のロッド

 布の服

 布の靴

 冒険者のピアス

 

 

 うん、完璧である。

 ………セシリー以外は。

 

 セシリーにも防具をつくろうとしたのだがやっぱりと言うか重さがネックになった。

 グリーブとグローブをセシリーは選び買っていたのだが、それをカスタマイズして装備したところヨロヨロになってしまったのだ。

 申し訳ないが今のところは布装備で我慢していただくしか無い。

 もっと色んな街に行けば軽量の完成品防具があるかも知れない。

 魔術師のローブ的なものとかありそうだしな。

 いま着ているのもローブみたいなものだが、実際はただの布をローブの形に繕ったものらしいし。

 今度街に戻った時は探してみよう。

 

 さて、お気づきかと思うが+3。

 コレは俺がカスタマイズできる限界数値らしい。

 +3になった防具をさらに錬成しようとしても形が変わるばかりで、それ以上数値があがらなかったのだ。

 試しに天目一箇神の腕輪を貸してもらい錬成しても結果は同じであった。

 錬成といえば器用だと思ったのだが、どうにも違うらしい。

 前にシャムシールを作った時は+2が限界だったので、もしかしたらレベルが関係するのかもしれない。

 もしくは練成回数、成功回数とか。

 こういうのは検証してみないことにはわからない。

 まあ検証するにもかなり時間がかかるんだろうが。

 まあ、そんなこんなで俺の防具錬成は一段落ついたのである。

 

 

 

 

「ようやく武具が一揃え完成したなぁ」


「よかったですね!」


「うむ、サイズもちょうどいいし動きも阻害されない。いい防具だ」


 すべての作業が終わったその日の夕食。

 俺達はささやかながらパーティを開いていた。

 とはいってもいつもより肉が多めの気持ちばかりのパーティではあったが。

 

「しかし悪いなセシリー。お前の防具……どうにも軽量化っていうのは難しいらしい」


「いえ! お二人は前線でボクは後衛ですから。お二人が優先されるのは当然だと思います」


 慌てたように手をパタパタさせるセシリー。

 正直申し訳ない気持ちでいっぱいである。

 薄くしようと思えば出来るんだが、それでもやはり鉄は鉄である。

 セシリーの膂力では扱いきれなかったのだ。

 かといって薄くし過ぎるとアルミホイルみたいな防御力0のシロモノになってしまう。

 マントみたいに毛皮を利用する防具なら出来るかもしれんな。

 今度作ってみるとしよう。

 

「さて、武具も一応は揃ったわけだが……これからの方針はどうする?」


「………ふむ。この坑道には主がいると聞く。それを討伐するというのはどうだ?」


「……ぬ、主ですか? かなりの強敵だと聞きますけど……」


「セシリーも大分魔法に慣れたようだし、ひとつ強敵と戦うのもありではないか、な」


「主かぁ……」


 今俺たちはこの合宿の甲斐もあってかなりレベルが上昇している。

 魔物のレベルが全体的に強い事と、本来ならありえないような強力な装備品を手にしているため、パワーレベリングのような形になってしまっているのだ。

 しかも俺の経験値Ⅱ、パーティボーナスの経験値上昇(小)の効果もあるため戦闘即レベルアップ状態である。


 ちなみに今の俺達のレベルは俺が32、アイラが33、セシリーが28だ。

 一ヶ月ちょいでこれだけレベルが上がる奴はなかなか無いだろう。

 しかも成長率UP(微)のおまけ付きだ。

 確かに自分の今の実力を試してみたいという気持ちはあるのだが。

 

「うーん、そうだな……防具も揃ったし、鉱石の余りでアイラの新しい武器を造ればいけないこともないの……か?」


「私の新しい武器? 作ってくれるのか?」


「まあ、俺のジルコンスピアはこの辺でも相当なランクの武器だろうし、アイラはまだ鉄素材だしな。後はセシリーにもロッドを造らないといけないか」


「ぼ、ボクもですか?」


 何時迄も樫のロッドじゃあなぁ。

 確かジルコンは魔力に+補正がかかるはず。

 ロッドって普通に棒って意味だしな。

 セシリーが使ってるロッドも先端に宝石とかそういう細工はないみたいだし。

 特に難しいことはないはずだ。

 

「とりあえず俺が錬成する間、考えてみたらどうだ? セシリーも自信がないんだったら正直に言ってくれてもいいしな」


「……いえ、ボク頑張ってみます」


 むん、と拳を握り気合を入れるセシリー。

 なんとも微笑ましい気合の入れ方に、俺は少し苦笑してしまった。


「ふむ。ならば私は錬成の間に鍛錬を続けるとしよう」


「じゃあ決まりか。俺はこれからテントに戻って作業するか」


 そう言って俺は残った食事を流しこむように食べた。




 


 


『銀のシャムシール』+3

 攻撃力+130 膂力+5

 

 銀で作られた曲刀

 

 

「ふむん、なかなかじゃない?」


 刀身をかざしてみる。

 銀で出来ているだけあって、美術品としても価値がありそうだ。

 最初はジルコンでつくろうと思ったのだが、セシリーのロッドに使う分を考えると量が心もとないため、銀で作ってみた。

 作り始める前、銀は敏捷にマイナス補正がかかるため、身軽な剣術を使うアイラには不向きかと思ったが、精錬していく内にマイナスが消えて膂力に+補正まで加わってしまった。

 棚から牡丹餅というやつか。

 さて、アイラの武器も作ったことだし、今度はセシリーの武器か。

 一応樫のロッドを借りてあるし、似たような形で造ればなんとかなるかね。

 

 

 

 

『思金神の杖』

 攻撃力+50 魔力+100 精神+100

 魔法威力増幅(強) 

 

 思金神の加護を受けている杖

 

 

 また会いましたね。

 いつもいつも唐突にご苦労様です。

 もうなんて言うか言葉が見当たりませんが、多分明日お世話になると思うのでよろしくお願いします。

 

 俺は現実から目を背けるように、横になりそっと目を閉じ意識を閉じていった。

 次の日出来上がったブツをセシリーに渡したら、悲鳴を上げて腰を抜かしたことを追記しておく。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ