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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第二章 パーティ結束編
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獣っていいな


 街で歩いていた人たちから話を聞き、オススメの質のいい武具を売るという店を聞き出した俺達は早速その店へと向かうことにした。

 さすがはフランツ帝国でも有数の街ということで、数多くの店を紹介された。

 その中でも、フランツ帝国最高の腕を持つと言われる鍛冶師の独占販売店があるという噂を聞いた俺達は、迷いなくその店をチョイス。

 やっぱりいいものが売っている店じゃないと、今後の錬成のためにもならないだろうしな。

 

 そうしてルルードの東側にあるといわれるその店へと向かっている。

 しかやっぱりイアンとは違うな。

 そこかしらに歩く人々はどこか垢抜けた人達が多いように思える。

 いやまあ、子供の襟足を伸ばして、無理やりスカジャンを着せるような垢の抜け方ではないが、服装一つとっても生地が違うというか。

 髪型も野暮ったくなく、いかにも手入れしてますって感じだ。

 大きな街だからカリスマ美容師でもいるんだろうか。

 シャンプーやリンスなんてこの世界で見たこと無いが、俺が知らないだけで存在するのかもしれない。

 もしあるのなら旅をする必需品としてキープをしておかねばいかんな。


 それと不思議なことに獣耳……獣人の数が多い。

 歩くたびにピコピコと揺れる耳。

 ウサ耳もいれば猫耳もいる。

 よく観察をしてみると、そこら中とは言わないまでもチラホラと獣耳が街を行き来している。

 元の世界のケモナーが見たら発狂して死んでしまうかもしれないな。

 

「なあ、アイラ。獣人がどうも多いような気がするが、この世界ではこれくらいが普通なのか?」


「ふむ、そう言われれば確かに多いかもしれんな」


 気が付かなかった、と言った感じのアイラ。

 目線だけを動かしてあたりを見回す。

 

「……恐らくだがアマヴァンス大坑道目当てではないのか? 見たところほとんどは冒険者のようだ。耳にピアスをしている」


「………なるほど」


 よくみると獣人のほとんどはピアスをしている。

 黄色であったり赤であったり様々だが、中には腰に剣をさしている人(?)も多い。

 

「獣人の方は夜目もききますし、危機察知能力が高いと聞きます。それに力も強く素早い動きも可能なので冒険者として生計を立てる人が多いみたいですよ」


 横を歩いていたセシリーが獣人講座をしてくれる。

 旅をしてる間に気づいたがセシリーは魔法学園を卒業しているためか、知識量が半端ではない。

 論文などもあらかた読んでいたみたいだし。

 アイラも一般常識などを身につけてはいるようだが、それは一般的での話だ。

 旅をしている時に得た知識なのかはわからないが。

 どこぞの大物であるっぽいしなぁ。


 セシリーも俺達と出会う前は冒険者をしていたみたいだが、+αでの知識は学園で吸収したものなんだろう。

 どんな教育を受けたかは分からないが、学園というからには魔法だけを教えていた訳じゃないんだろうな

 学園では落ちこぼれだと言っていたが、もしかすると教養ではトップクラスだったのかもしれない。

 なんとなく先生が似合いそうな雰囲気だし。

 生徒にいじられる姿が目に浮かぶようだが。

 

「アマヴァンス大坑道は鉱石の採掘依頼だけでなく、魔物の討伐も多く依頼がありますからね。そういった討伐系の依頼を求めてやってきているのでしょう」


「へぇ……」

 

 獣人か。

 確かにモリア坑道は結構暗かったしな。

 そういう夜目のきく仲間がいれば、かなり楽になることは間違いない。

 

「確かに見た感じ皆レベルが高めだしな………うお、43とかいるぞ。もしかして俺達レベル足りないんじゃないか?」


 観察眼(弱)を使い頭の上にでた表示を見ると、比較的高いレベルの人が多かった。

 15~30辺りがほとんどで、偶に40オーバーも見かける。

 俺達は今、俺がLV20、アイラがLV22、セシリーがLV16である。

 周りと比べ平均といえば平均だが、人数が3人なため少し不安を覚えるところだ。

 

「レベルだけ高くても中身が伴っているかはわからんぞ。私は剣の丘に行く最中に腕試しとして、獣人の冒険者と手合わせをした事があるが、負けたことがなかったしな」


「………なるほど。確かにステータスが高くてもそれを活かせなければ強さとはいえないもんなぁ」


 以前天目一箇神の腕輪をつけてアイラと模擬戦をしたことがあるが、結果はボッコボコにやられたのを思い出す。

 手も足も出なかった。

 

「ま、こんなとこで考えても仕方ないか。天目一箇神の腕輪と大口真神の外套というチート極まりない、超性能な武具もあることだしな」


 自分を納得させるように、俺達は目的の武具屋へと足を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~……これはなかなか……」


 目的の店に入って並んでる武具を鑑定眼で調べてみると、結構なモノが陳列されていることに気付いた。

 

『鉄のプレートアーマー』

 +25

 鉄で出来た胸当て

 

 +表示こそ出ていないが、今までの経験上、こうして店で並んでいる量産品は-であることがほとんどだったことを考えると、腕の良い職人が作っていることは間違いないだろう。

 しかしこうして出来合いモノをみると俺がつくろうとしたモノとの差異がよく分かる。

 俺はてっきり剣道の防具のような、後ろで紐で縛る的なモノを考えて錬成していたが、これは二枚の板金を蝶番で可変させ、ベルトで固定している。

 コレを来て腹筋運動はできないだろうが、なるほどと思わされる構造だ。

 横を見てみるとグリーブらしきものも見つけた。

 

『鋼のグリーブ』

 +30

 鋼で出来たすね当て 

 

 おお……鋼か!

 流石に防御力が高いな。

 大口真神の外套と同じ防御力というのが不思議だが、よく考えれば、マントが鋼と同じ防御力という時点でおかしいのかもしれない。

 それにアレには膂力+100と敏捷+100の効果があるからな。

 一概に一緒には出来んな。


 ともあれグリーブもよく観察すると、様々な工夫が凝らされているのがわかる。

 足の動きをできるだけ阻害しないようにという可変部分での細工。

 防具って奥が深いんだな。

 鉄の板を身体に合わせて身に付けるだけじゃなかったんだなぁ。

 

「どうだ、なにか参考になったか?」


「ん? ああ、アイラか。いや、俺の思っていたのと全然違ったな。どれもこれも工夫が合って武器のノウハウとは全く別だった。そりゃ造れないはずだ、というのがよくわかったよ」


「そうか、どうする? 参考にしたい防具があればひと通り買っていけるくらいの金はあるが……」


「そうしてくれるか? あ、あと自分がこの形がいいって言うのを選んでくれるといいかもな。アイラは剣士でこういうプレートアーマーみたいなのを着てちゃ動けないだろ?」


「ふむ……確かに」


「セシリーもなにか作って欲しい形の防具があれば言ってくれ。なるべく善処するからさ」


「………いいんですか?」


 いいのです。

 仲間ですから。

 

 俺は引き続き防具のノウハウを学ぶため防具にかじりつくように眺め、構造を解析していく。

 しかしなんだな、本当にここの品揃えはいいな。

 -も混じってはいるが、稀に+も見かける。

 腕の良い冒険者は鍛冶師からの特注が多く、良い材料などはそちらのほうに回すと聞いているんだが。

 腕の良い職人が卸している看板は偽りではないっていうことか。

 この腕ならいっそその人に造ってもらうか、教えてもらうのも手かもしれないな。

 俺は暫くの間防具を眺めながらイソイソとメモを取っていった。

 

 

 

 

 しめて12000ベール。

 それが俺達が先ほどの店でつかった金額である。

 かなりの金額だが、俺達の持ち金はまだ余裕が有るため大丈夫……だと思いたい。

 ちょうど買い物が終わった頃、日が暮れ始めていたこともあり、宿屋を探すことにした。

 場所的にはアマヴァンス大坑道の近くが望ましい。

 これからそこに出入りを頻繁にするつもりだからな。

 

 そうして見つけたのが『戦士の休息場』。

 実にらしいネーミングである。

 

 カウンターの人(この人も獣人だった)に10日ほどの滞在を伝え、部屋の鍵を受け取る。

 もちろん俺は一部屋、アイラとセシリーで一部屋と合計2部屋である。

 一緒の部屋はまずいだろうということでわけた。

 俺も錬成は一人で静かにやりたいしな。

 

 そして数時間後、お互いに荷物をおき、宿屋の一階にある飲食スペースに集まっていた。

 

「さて、拠点も用意出来たことだし、今後の方針を決めようと思うのだが」


 テーブルを囲みながら、作戦会議である。

 

「先ほど冒険者の話を聞いたのだが、アマヴァンス坑道の魔物はかなり強いらしい。Dランクの冒険者もトライすることがあるらしいが、そのほとんどは魔物に太刀打ちできず撤退していくのだとか」


「魔法学校での書物では、Cランク以下は立ち寄らない方がいい、と教えられました。もっともCランクと言っても強さの目安みたいなものですから、私達みたいなランクを上げることに執心していないパーティもいますし、一概にそうとは言い切れない部分もありますが」


 さすがの知識量。

 セシペディアとでも言うべきだな。

 ゴロが悪いけど。

 

「買ってきた防具もあるしなぁ。全員が布の服でトライっていうのも、ちょっとばかり厳しいか?」


「防具を着たからといって戦力アップするとも限らんがな。重さによって動きの阻害や疲労も違ってくる。だからといって布の服では相手の攻撃を受ければ致命傷、なんていうのも考えられる話だし……さて、どうしたものか」


 アイラはそう言って腕を組む。

 その意見は確かにそうだ。

 今まで俺達は防具らしい防具をしてこなかったため、その使い勝手がわからないところがある。

 しかも鉱石を目的として坑道に潜るのだから、荷物がかさばることは必死だ。

 リアカーでも持っていくか?

 絵面的には非常にシュールな感じだが。

 

「とりあえず入ってみないことには判断はできないだろうなぁ。防具を作るにしても鉱石が必要だし。どんな鉱石が取れるか、というのも知りたいからな。比較的軽めの鉱石があれば防具作りに役立つわけだし」


 軽くても錬成で+を上げていけば性能もアップしていく。

 動きやすくていいものが出来る可能性もあるわけだ。

 

「そうですね。ここで話し合っていても意見が堂々めぐりしてしまいますし、一度入ってみて駄目だったら対策を考える、位の余裕を持って行動するべきかと」


「だな」


 そうしてついにアマヴァンス大坑道へと足を踏み入れることになったのである。

 

 

 

 

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