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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
14/37

魔法使いセシリー・マルティニークはハーフエルフで行きます!


「困るんですよねえ、こういうことされると。いくら相手が悪いからって獲物を振り回しちゃいかんだろう」


「………大変申し訳無い」


「いやね、周りの証言も多く目撃者も多数いたから大体の経緯と悪気がなかったのは認めるよ? 俺もこんな仕事してるから人を助けるっていうのは素晴らしいことだと個人的には褒めたいところだけど……規則ってものがあってねぇ

 

「………その、反省してます」


「若いうちは多少元気が合ったほうがいいけど、物には限度ってものがあってだね。今回は相手側の非が明らかだから、君たちには特別重い罰則をかせられるわけじゃないんだけど、ギルド側と店側の双方が損害賠償と名誉毀損を訴える可能性だってあったんだよ? だいたい暴力ってのはさ――――」


「「…………………………」」

 

 

 

 

 

 

「あー……ひどい目に合ったな、全く」


「まあ私達も飲んで酔っていたしな。それでも罰則は課せられないという話だから御の字だろう」


「しこたま説教されたけどな。もう深夜もいいとこだ」

 

 大きくため息を吐く。

 シャバの空気が上手いぜ、とでも言いたくなる有り様だな。

 

 酒場で乱闘騒ぎを起こした俺達は衛所に送還され数時間にも及ぶ取り調べと説教を受けた。

 あの時、ひどい暴言や暴力まで振るったあの集団に無性に腹が立って、割って止めに入ったのまでは良かった。

 止めに入ったのまでは良かったのだが、頭に血が上った両者は口論ではとても収まりが着かず、獲物を使った切った張ったにまで発展したのがまずかった。

 お前ら表へ出ろ、と某有名キャラクターの如く店に迷惑をかけないように胸ぐら掴んで外に放り投げてやったのだが、結局その後の場外乱闘でベンチや街頭等の器物破損で店側に迷惑をかけてしまったのだ。

 LV19とLV21が本気で暴れればそりゃそうなるよ、という当然の結末である。

 まるでお祭り騒ぎのような事件になってしまい、衛兵が駆けつけてきてその場を鎮圧。

 俺達は衛所に放り込まれてしまったというわけだ。

 

「結局最後はお互い様だったもんな」


「店側にはひどい迷惑をかけてしまった、しばらくは顔を出せまい」


「………いい店だったんだけどなぁ」


 酒も料理も上手かったが、店員の接客もそれ以上に良かった。

 俺達の止まっている宿からも近かった。

 贔屓の店だったのだ。

 これからは少し離れている違う店を選ばなくてはなるまい。

 

「俺の串鳥……」


「そうぼやくな。串鳥くらい他の店にもあるだろうさ」


「あの店の焼き加減と何よりタレがフェイバリットだったんだよ」

 

「訳がわからんぞ」


「お前は酒ばっか飲んでいたからな。俺はどっちかというと酒より料理が好きだったんだ


「失礼な。確かに酒は好きだが、そこまで指摘されるほど飲んでもいなければ好きでもないっ」


「はいはい、そうだなそうですね」


「リュウ! お前本当に最近遠慮がないぞっ、もっとちゃんと人の話をだな……っ」


 そんなとりとめのない会話をしながら宿へ向かおうと足を進めていると、

 

「あ、あの……っ」


「ん? ああ、あの時の…!」


 俺達に声をかけてくる帽子をかぶりローブで身を包んだ人物。

 いかにも魔法使いといった姿。

 記憶に新しいどころか最新の女性であった。

 

「その、今日はすみませんでしたっ」


 ペコリ、という擬音がつきそうなお辞儀だ。

 

「いや、気にしないでくれ。っていうか俺達もどっちかというと加害者側っぽいし」


「喧嘩両成敗というやつだな。ともあれ大きな怪我がないようでよかった」


「あ、ハイ。ボクはなんともありません。本当にすみませんでした」


 ペコペコと此方が恐縮するくらいに頭の下げる女性。

 女性、でいいんだよな?

 髪が長かったしな。

 今は髪を帽子で隠しており、身体のラインがわからないローブを身にまとっているので性別が判断しづらい。

 しかしボクっ娘か。

 さすが異世界だな、素晴らしい。

 

「それで、俺達になにか用か? もし詫びを言うためにだけに待っていてくれたんなら非常に恐縮な話だが……」


「え? あ、はい……特に用事は無いんですけど、どうしてもお詫びをしなくちゃって」


「それでこんな時間まで待っていたのか? 律儀だな」


「そんなっ。ボクのせいで色々迷惑をかけたみたいですから…」


 落ち込んだようにそう語る女性にアイラが肩をすくめた。


「本当に気にすることはないぞ。ああいう女性に暴力をふるう輩が私は一番好かんのだ。貴方のためと言うよりは私の矜持ゆえ、と言った方が正しいしな」


 何このカッコイイ人。

 女にしておくには勿体無いくらいの男前っぷりである。

 

「詫びは確かに受け取った。これ以上は不要。もう深夜だ、送ろう。いいなリュウ?」


「え? ああ、そりゃもちろん構わんが」

 

 深夜の一人歩きはたしかに危ない。

 でもさらっと送るっていう辺り、アイラは自分の性別をあまり理解していないフシがある。

 なんだかんだといい人なんだよな。

 

「あ、いえ! いいんです! 一人で帰れますから! ホントにお気遣いは……」


「このまま返すほうが気を遣う質でな。どこに泊まっているんだ?」

 

「その……そう! あそこです、なんて言ったかな……えっと」


 慌てたように口にする宿は俺達と同じ宿であった。

 

「奇遇だな、私達も同じ宿だ。手間も省けるし気を遣うこともない」


「ええっ!? うそっ……あ、そうだ! 間違えました、ホントは違う宿で…」


 慌てたように前言を撤回する女性。

 なにか様子が変だな。

 俺とアイラがお互いに顔を傾げると、

 

「何か事情でもあるのか? 俺達に送ってほしくない理由でもあったり、とか」


「うう………」


「なにか事情があるなら言って欲しい。これも何かの縁だろう、出来れば力を貸そう」


「その………」


 しばらく悩んでいたようだったが、思い切ったように顔を上げ、


「…………あの、実はボク」


 そう言って事情を話し始めたのだった。

 

 

 

 

 

「なるほど、あの後喧嘩の原因になったと批難されパーティから追放されたのか。それで宿もパーティで大部屋だったから今夜は部屋なし。さらに持ち金もほぼ尽きていて野宿するつもりだった、と」


「ハイ……どうせ野宿なんだからって、お二人にお詫びをして。その後はギルドで依頼を受けどうにか凌ごうと……」


「ふむ、事情は理解できた。だが、しかし許せんなあの集団は。己の無力を人のせいにして、さらに責任をこの様になすりつけるとは……どこだ、その部屋は。一言言ってやらんと気がすまん」


「待て待て待て! また店に迷惑をかける気かっ!」


「しかしな、こういうのは駄目だろう? 少なくとも私は許せんぞ」


「許せとは言わないって。だが抗議した所でまた喧嘩になる。今度はもう罰則なしというわけに行かないぞ?」


「だが…いや、しかし」


 アイラが話を聞く内に眉がだんだんと角度を鋭くしていき、今はもう完全に怒髪天突くといった形相だ。

 俺が必死で抑える事でどうにか収まってくれているが、放置したら第二次大戦が勃発するのは火を見るより明らかだろう。

 さすがにこれ以上暴れるのはまずい。

 最悪街にいられなくなる可能性すらある。

 そんなアイラに、

 

「いいんです。どうせボクはいつか追い出されてましたから。魔法使いって言っても風を起こすくらいしか出来ない未熟者なので……」


 女性が諦めたように笑ってそういった。

 風をおこすくらい、か。

 どれだけ出来れば魔法使いとして一流かは分からないが、俺からすれば風を起こせるだけで凄いことだと思うんだがな。


「魔術の素質があるだけでも大したものではないか。それにトールズ出身なのだろう?」


「え、な、なんでその事を?」

 

「酒場で口論の内容が聞こえてきてな。盗み聞きをするつもりはなかったのだが、耳に入ってきてしまったのだ」


「そうだったんですか……」


 まあ多少耳を澄ませた部分もあるが。

 それは言わぬが花だろう。

 

「トールズといえば国立トールズ魔法学園で有名だ。そこの出身なら優秀といっても過言ではないはずだろう」


「でもボクは学園でも落ちこぼれでしたから。卒業したっていってもホントにただ卒業できたっていうだけで……」


「卒業できただけでも大したものではないか。私など入学すら出来ないだろうしな」


 魔力の資質がなければ通うことすら出来ないのだ。

 多少言葉遊びの部分はあるが、卒業できたというのならそれなりのモノがなければならないはずだ。

 なら自信を持つべきことであって、貶めることではない。

 

「でもボクは……」


 だが彼女は完全に自信を失っていた。

 どうしたものか。

 

「(リュウ、彼女のステータスとやらを見てみろ)」


「(はぁ?)」

 

 突然アイラが俺に聞こえるぐらいの声量でそんなことを言い出した。

 

「(いきなり何を言い出すんだ?)」

 

「(お前は人のスキルとやらを判別できるのだろう? もしかしたら彼女には資質が隠されているのかもしれんではないか)」

 

「(だからってなぁ。だいたいプライバシーとか色々あるだろう? 勝手に人の情報を見るのは……その、どうなんだ?)」

 

「(緊急処置だ。お前はこのまま彼女が自分に自信が持てないままでいいというのか? もし才能があった場合、彼女人生に大きな転機を与えられるだろう。いいのか? もしかしたら優秀な人材の損失になる可能性だってあるんだぞ)」

 

「(そうは言っても……なあ?)」

 

「(ええい、ならば彼女の了承を得られればいいのだろうっ)」

 

 そう言ってアイラはゴホン、と一つ咳を置いた。

 

「そういえば、だな。この男は人の資質を占う事ができるのだ。どうだ、一度見てもらわんか?」


「え?」


 いきなりの話に彼女が戸惑っている。

 何を言っているんだコイツは、と言わんばかりの勢いである。

 そりゃそうだ。

 いきなりそんなこと脈絡もなく言われれば俺もそんな反応をするだろう。

 

「貴方は自分に自信がないというが、それはイコール資質がないとはいえないだろう? だからどうだ、駄目で元々と占ってもらえば、もしかしたらもしかするかもしれんな、うん」


 うん、じゃねーよ。

 もう完全に不審者のそれだよ。

 だが、彼女は元来人を疑うことがないのか、不安げだがすがるような瞳で顔を上げた。

 

「本当にそうなんでしょうか? ボク、もしかしたら本当に出来るようになるんでしょうか?」

 

「見てみなければわからんが、トールズに通って卒業できたくらいだ。もしかしたら素晴らしい資質を持っているのかもわからんな、うん」


 その言葉が効いたのか、彼女は俺の方を向き直り、土下座をせんばかりの勢いで頭を下げた。

 

「お願いします! ボク、自分が今までダメだって思ってきました。でももし、貴方が本当に人の資質が見抜けるなら……お願いします、ボクを占ってください!」

 

「え、えぇ~……」


 決意を秘めた瞳で俺を見る女性。

 もし俺が資質がないよ、って言ったら実家に帰ってしまいかねないくらいの真剣さだ。

 っていうかもし本当に資質がなくてもキミ才能がないわ、なんてこんな状況で言えるわけ無いだろうが。

 アイラを見るとこれでいいだろ? みたいな顔で俺を睨んでいる。

 くそう、結局貧乏くじを引くのは俺なんだがなぁ。

 

「………わかった。占ってみよう」


「ハイ、お願いします!」


 そういって背筋を伸ばす彼女。

 目にはおもいっきりの不安と一欠片の希望が宿っている。

 俺は一つため息を吐くと、彼女のステータスを閲覧しようと目を凝らした。

 すると、

 

 

・セシリー・マルティニーク

 ハーフエルフ 

 女

 LV5

 HP・29/29 MP・101/101

 膂力・・7 魔力・・53 耐久・・5

 精神・・45 敏捷・・9 器用・・11

 幸運・・3


 攻撃力・17

 防御力・37

 魔防御・71


・装備

 樫のロッド

 布のローブ

 布の靴

 冒険者のピアス


・スキル

パッシブ

『巫女』

アクティブ

『風Ⅰ』『雷Ⅳ』

ユニーク

『雷の天禀』『精霊の加護』



「―――アホかっ!? 全力で才能の方向を間違えてるじゃねぇか!」


「ええーっ!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまった。

 


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