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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
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人間万事塞翁が馬(戒め)

「ちくしょぉぉぉぉ! このやろぉぉぉぉ!」


「……ふむ、その掛け声はどうかと思うが、見事な槍さばきではないか」


「うるせえぇぇ! 俺のばかやろぉぉぉ!」


 俺は一心不乱に槍を振るい敵を突いて突いて突きまくる。

 その狙いは逸れることなく、魔物に致命傷を与え続け一撃にて敵を次々に葬り去っていく。

 流石の攻撃力を誇るジルコンスピア。

 やさぐれる気持ちを槍に込めるが如し、だ。

 

 さて、何故俺がそんな無双が出来ているかというと、全ては『天目一箇神の腕輪』のおかげである。

 自分で造ってなんだが非常にチート仕様のこの腕輪。

 器用+200の効果は半端ではなく、使い始めたばかりの槍が手に吸い付くように馴染み、常に最適な槍さばきが可能になるのだ。

 アイラが言っていたようにまさに自分の体が自分の体で無いかのように動く。

 それはいいんだ、それは。

 だが、

 

「この槍を造るのにどんだけ苦労したと思っているんだ! 別にダガーでも弓でも良かったんじゃねえかコレじゃあ!」


「………まあ、そうだな。お互い迂闊だった事は否めん」


「ああ、腹立つ! ジルコンは貴重だったのにぃ!」


 このジルコンスピアはたしかに大したものではあるが、天目一箇神の腕輪があればその時ある武器でも全然問題なかったはずなのだ。

 せめて銀にしておけばよかった。

 いやまあ銀はその重さからか敏捷に-補正がかかる事から敬遠したわけだが。

 おかげで貴重なジルコンは槍の錬成にほぼ使ってしまい、手持ちはない。

 本来なら防具や新しい腕輪や指輪等、色々使えたはずなのだ。

 1週間の坑道での採掘作業がまさに徒労になったような気分である。

 

「まあ別に全くの無駄になったわけではないだろう? いい槍ではないか」


「そうだけど、そうなんだけどさぁ……なんかこう納得がいかないっていうか……」


「奥の方に進めばまだジルコンや他の鉱石があるだろうさ。その槍はそのために大きな力になる、先行投資だったと割り切るんだな」


「………そう願いたいよ、ホント」


 まあ確かにこの槍は強力な攻撃力を持っている。

 魔力の+効果もあるし、あって困るものでは決して無い。

 天目一箇神の腕輪だって一つしか無いのわけだから、その時々で俺とアイラが併用していく。

 槍は前衛側ではあるが剣士のアイラの方が最前線に立つ。

 この先恐らくレベルが並べばこの腕輪はそんなアイラの専用になるだろう。

 コレを造った時間は無駄ではないのだ。

 そう考えることで俺はなんとも言えない気持ちを抑えるのであった。

 

 

 憤懣やるかたない俺はその後順調にレベルが上がっていき、ほぼアイラと肩を並べる事ができるようになっていった。

 坑道中腹までは天目一箇神の腕輪なしでも、もう問題はない。

 此方がその成果の俺のステータスである。

 

・リュウ

 LV19

 HP・163/163 MP・58/58

 膂力・・66 魔力・・43 耐久・・51

 精神・・34 敏捷・・62 器用・・101

 幸運・・58


 攻撃力・256

 防御力・73

 魔防御・65


・装備


 ジルコンスピア+3

 布の服

 スニーカー

 冒険者のピアス


・スキル


パッシブ

『直感』『経験値Ⅱ』『弓Ⅰ』『槍Ⅱ』

アクティブ

『調合』『錬成』

ユニーク

『良縁』『鑑定眼』『観察眼』

『言語理解』『メニュー閲覧』


・パーティーメンバー

 1、アイリィ・ラドネイ LV21


・パーティーボーナス

 経験値上昇(微)

 LVUPステータス上昇補正(微

 

 

 なかなか強くなったと自画自賛してもバチは当たらないだろう。

 まあ経験値Ⅱの効果なのか、平均してLV20辺りの魔物を相手にしていたこともあり上がり方は結構速かった。

 日毎に成長する俺を見てアイラは多少呆れ気味ではあったが。

 地道に修行していた自分と俺とを比較して、なんとも言えない顔で、

 

『………地道に研鑽を積んでいる戦士に刺されないようにな』


 という言葉を承った。

 だが、いいことばかりのように思えるが、しかし急成長する弊害もあった。

 それはアイラと模擬戦闘をした時に強く感じたのだが、いざというときの機転がきかないのである。

 俺と地道に訓練を積んだアイラでは戦闘経験の桁が違う。

 一度、天目一箇神の腕輪をつけた俺と素のアイラで模擬戦闘を行ったが、全く刃が立たなかった。

 器用はぶっちぎりで俺。

 他のステータスも差は多少あるもののあっさり敗北するほどの差ではないはずだ。

 それでもやはり勝てない辺り、積み重ねというものは大きいんだろう。

 本能で動く魔物と違い、フェイントを織り交ぜたり体捌きが洗練された流派を学ぶアイラでは勝手が違う。

 努力は裏切らないという格言は、まさにその通りだったという訳だ。

 まあ対人戦闘なんていうのはそう機会があるモノでもないからな。

 魔物に対しての制圧力があればいいかな、とは思うがね。


 さて、そうなってくると次は防具である。

 あの虚しい事件から防具の作成に取り掛かってはいるが、正直進展は芳しくなかった。

 爆発が爆発を呼ぶ爆発のための爆発の日々だったと言っても過言ではない。

 何故そんなに失敗するのか。

 恐らくそれは俺が防具というものの構造や概念を理解していないためだろう。

 元いた世界で俺は防具を見た経験がないし、知識も持っていない。

 どんな形にして、ここはこうで、こうなるといった理論構築が出来ないのだ。

 武器に関してはこういうものだというイメージが沸くのだが、防具ではそれが沸かない。

 そんな防具ありえませんから! みたいなツッコミを爆発によって入れられているようにすら感じた位だ。

 

―――これ以上は無駄に資源を消費するだけなんじゃないのか。


 そんな日々を過ごす中、俺はある決断を下そうと決意した。

 

 

 

 

 

「なあ、アイラ。一度街に戻ってみないか?」


「む、どうしたんだ急に?」


 焚き火を前にしての食事中。

 今日もまた派手に爆発を起こした俺は、素敵に決まったカーリーヘアーをなびかせそう切り出した。

 突然そんな話を持ちかけられたアイラは、スープをすくう木のスプーンを咥えながら不思議そうに首を傾げる。


「なんていうかギブアップだ。全く防具を造れる気がしない」


「ふむ……」


 そう言ってずず、とアイラはスープを一気に飲み干し、空になった器を脇に避ける。

 

「街に帰ることに異存は無いがな。どうするつもりなんだ? 素直に金策をして既成品を見繕ってでも見るか? それとも防具はすっぱり諦めてお前の本来の目的である『異世界観光』とやらでもするか?」

 

 俺がこの世界でやりたい事。

 それはせっかく異世界に来たのだからという思いからの異世界観光だった。

 その為にはまず装備をと思いこの坑道にきていたのだ。

 調合や錬成をしてみたいという気持ちも多分にあったのは確かだが、大本はこの世界での生活を楽しみたいという所から来ている。

 このまま防具の錬成にトライアンドエラーを繰り返しているようでは本末転倒である。

 

「色々考えたんだがな、防具の錬成を諦めたくはない。かと言って今のままでは無理。そもそも今の現状は目的のための目的って感じで生産的とはいえない」


「ふむ」


「それに俺はこの世界にきてから、一番興味がある事を失念していたみたいだ」


「………話がよく見えてこないな。つまり何をしようというのだ?」


 アイラが不思議そうに顎に手を当てる。

 そう、俺は失念していたのだ。

 此処は異世界。

 しかもファンタジー満載の世界観だ。

 そしてファンタジーといえばこの存在を抜きにしては語れないだろうという要素がある。

 元の世界では決して拝むことの出来ない、非科学的な空想の産物。

 そう、

 

「『魔法使い』の『魔法』を見てみたいんだ、俺は。そしてできることなら使ってみたい。そのために魔法使いを仲間に迎えないか? そうすれば異世界観光の旅も楽になるだろうし一石二鳥だ」

 

 魔法。

 それは永遠の憧れである。

 

 そうして俺達は共に旅をする魔法使いの仲間を探すことになったのだった。

 

 


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