初めての強敵
玉座に座ったまま目を覚ますと、目の前にはすでに4体のレザーリビングメイル達が直立不動で勢ぞろいしていた。一応起きるまでアイテム集めを命じてたはず何だけど、起きる直前に集まったのだとしたらどうやって俺の起きる時間を知ったのだろうか?ちょっと怖いな。
視線を少しずらすと、部屋の片隅に彼らが集めてきたのだろうアイテムが積み重なっていた。俺がどれくらい時間寝ていたのか分からないが結構な量だ。そういえば、俺無しでダンジョンに潜った場合敵を倒して得られるエナジーはどうなるのだろうか?ふと気になったので確認してみると、山積みになっているアイテムの量に対して量が少ないような気がするがエナジーが増えていた。
「配下だけでダンジョンに潜ると得られるエナジーは少なくなるのか?」
『肯定です。配下のみでのダンジョン攻略で得られるエナジーは通常の5割から8割となります』
最低でも2割減か。ダンジョンに潜らせてる配下の数によって割り引かれる数値が変わるらしいが、それを差し引いても俺が休んでる間にエナジーが貯まるのは魅力的だよな。
とりあえず鑑定でもしながら飯にしよう。今日はメロンパンだった。このダンジョンに来てからこっちパンしか食べてないな。久しぶりに肉とか野菜も食べたいが、そのためにはダンジョンの攻略を進めなくちゃならない。だからといってがむしゃらに進んでも死に戻る可能性があるわけで、悩ましいな。前回のようなことにならない用にするために【解錠】と【罠解除】のアビリティを弓持ちのレザーリビングメイルに取得させておこう。
集められていたアイテムの1割ほどを鑑定したところでメロンパンを食べ終えた。今のところめぼしい物は木の盾くらいか。斧持ちと槍持ちに盾術を取得させて木の盾を装備させる。属性付与は予備が出来てからでも遅くはないだろう。なんせ失敗すれば装備喪失なんだし慎重にだ。
飯も食べ終えたしダンジョンへ行こう。広間の狼達も復活しているだろうが油断さえしなければ完封できることが分かっているだけに気が軽い。玉座の間を出る前に死霊魔法を取得しておこう。これのレベルをあげてモンスターの死体を入手できるようにしたい。
装備した革鎧を確かめ鉄の剣を手にいざ、ダンジョンへ。
飛びかかってきた狼の下を潜るようにしてその攻撃を回避し、頭上を飛び越える形になった狼へと鉄の剣を振るう。振るわれた鉄の剣は違うことなく狼の腹を切り裂き、一撃で光の粒子へと弾け飛んだ。
「よし、終わりだ」
やはり復活していたあの広間の狼達を殲滅し俺は大きく息を吐いた。今回は宝箱を落とさなかったため弓持ちの出番は無しだ。今倒した狼のドロップは、カッパーダガーか。本当によく出るなこれ。レザーリビングメイル達の持ってきたアイテムを異次元ポケットに放り込み、ようやく未踏の地である広間の奥の通路へと足を踏み入れる。といってもそこでダンジョンの様子ががらりと変わるわけでもないないのだが。
剣持ちと斧持ちを先頭に通路を進んでゆく。モンスターに出会うことなくたどり着いたのは2度目の広間。先の戦闘で一切のダメージもないは分かっている。伺うようにこちらに振り向くレザーリビングメイルに頷いて広間へと進入する。
「うげ……………」
げんなりとした声を上げてしまうのは許してもらいたい。なぜなら俺達が足を踏み入れた広間にはあきらかに10体以上いると思われる大蠅が宙を舞っていたのだから。
「盾を持ってる奴は防御に専念しろ!突撃してきたら盾でど突いてやれ。弓持ちは俺と一緒に大蠅に攻撃だ」
俺の命令を聞いたレザーリビングメイル達はすぐさまそれを実行に移す。俺の横を歩いていた槍持ちが前に出て他の盾持ちの2体とともに盾を前に構えた。そして弓持ちも俺の隣で弓を構え、頭上を飛び回る大蠅へと狙いを定める。
「根源魔法で一気に殲滅といきたいけど、まだ俺じゃそこまでは無理そうだな。ま、さっそくだから新しい魔法を試してみるか」
脳裏に思い浮かべるのは先ほど覚えたばかりの死霊魔法。どのような魔法があるのかが意識を向けるだけで脳裏に思い浮かぶのは本当に便利だ。
「生命枯れ果てし亡者達よ、汝らの憎悪を我が前に在りし愚か者どもへ示せ。フィジカルカース」
使用したのは広範囲に行動阻害を引き起こすフィジカルカースという呪いの魔法。今の俺ではさして効果は強くないが、それでも魔法の効果に抵抗できなかった大蠅達の動きが僅かに鈍る。そして弓持ちのレザーリビングメイルはその隙を逃すことなく矢を放ち、内の一体を一撃でしとめてみせる。
「魔力には余裕があるしな」
それを横目で確認しながら動きの鈍った大蠅へと手をかざし、俺も根源魔法を使用し氷の矢で大蠅を打ち落とす。
よし、これぐらいの動きならしっかり狙っていけば当てることが出来る。次の大蠅に狙いを定めようとした俺の視界に、急降下をしかけてくる大蠅の姿が映る。とっさにそちらに狙いを変えようようとするが、その必要は無かったようだ。急降下を仕掛けてくる大蠅と俺の間に斧持ちが入り込み、先の命令の通り強烈なシールドバッシュが大蠅を襲ったのだ。正面から盾に激突することになった大蠅はその一撃で昏倒したのか床に落ちて動かなくなり、そこに銅の斧が振り下ろされとどめを刺した。俺がその様子を見ている間にも弓持ちは矢を放ち続けており、一体ずつ確実に大蠅を打ち落としている。
俺も負けていられないな。
大蠅へと手をかざし、大蠅へと根源魔法を放つために意識を集中させた。
大蠅との決着もあっさりと着いた俺たちは、そのままダンジョンの攻略を進めることにした。ダンジョンの攻略といってもこうも一本道じゃ攻略してる気にはならないけど。大蠅との戦闘でもめぼしいアイテムのドロップはなかった。やはり初日はものすごくついていたみたいだ。
まっすぐに続く通路を剣持ちと斧持ちを先頭に進んでゆく。狼に大蠅と団体で待ちかまえている部屋が続いたし、たぶんこの先にはゴブリンの団体さんが待ちかまえているだろう。正直負ける気がしない。大蠅の部屋で死霊魔法に根源魔法を何度も使ったが、魔力には多少の余裕がある。敵を確認し次第フィジカルカースで動きを阻害してやれば安全に蹴散らすことが出来るはずだ。
そうして歩いていると、前方にいくつもの気配を感じ取った。気配察知の効果はすごいな、正確な数までは分からないがいくつもの気配が動いているのを感じ取ることが出来る。おそらく大蠅よりもたくさん待ちかまえているのだろう。たとえ相手がゴブリンだとはいえ、数の暴力の怖さは身を持って知っている油断は命取りだ。
気を引き締めて通路を進む俺だったが、そんな俺たちを待ちかまえていたのは広間ではなく通路いっぱいの扉だった。
「扉か、ダンジョンらしくなってきたな。罠の有無を調べてくれ」
念のために弓持ちのレザーリビングメイルに扉を調べさせるが罠の類は無いようだ。言葉を発せないが故に身振り手振りで伝えてきた弓持ちを下がらせ、前衛達を扉の前に並ばせる。
「出来る限り陣形を組んで戦うぞ。油断せず、慎重に」
自分に言い聞かせるように言葉を紡いだのは、扉の前に立ってあることに気付いたからだ。それは扉の向こうから感じる気配。数が多いのは勿論なのだが、ゴブリンにしては大きな気配が一つ存在しているのだ。感じる気配から相手を言い当てるような芸当など出来る訳じゃないが、その気配が狼とも大蠅とも違うのは確実だ。念のために弓持ちに予備の矢束を持たせて下級傷薬と下級魔力薬が異次元ポケットに入っていることを確認する。
「鬼が出るか蛇が出るか、確かめてみようか」
剣持ちに扉を開けるように指示を出し、上半身を揺らして頷いた剣持ちの手により扉が開かれてゆく。扉が開き中へ飛び込む俺たち。前衛の三体が盾を構えて防御の姿勢をとるのを背後から確認し、大きな気配の正体を見た。
「でかいな」
その姿は間違いなくゴブリンだった。濁った瞳に緑色の肌、禿げ上がった頭にとがった耳を持ったまさしくゴブリンだ。ただ違うのは普通のゴブリンが100cmほどしかないのに対し、目の前のゴブリン(?)は俺よりも高く、おそらくは2mはあるんじゃないだろうか?さらにその長身が身に纏うのは引き締まった筋肉の鎧だ。
「ゴブリンの上位種、か?」
その問いに答える物はいない。ゴブリンの異丈夫が手にしていた棍棒を持ち上げると、辺りで好き勝手していたゴブリン達が一斉にこちらへと視線を向けた。
あ、この流れってもしかして?
「グガァァァァアアアアアアアアアッ!!!」
「ギギィ!ギィイィィィィイィィィィッ!!」
ゴブリン上位種(?)が咆哮とともに棍棒を振り下ろし、周囲のゴブリン達が一斉に手にした武器を振り上げ襲いかかってきた。
「作戦通りだ!!」
まさかこんなことになるとは、一気に襲ってくるだろうとは思ったけど上位種(?)がいるってことは統率がとれてる可能性もあるし、先に迎撃のつもりで作戦を立ててよかったわ。
「まずは先制させて貰うとするか!」
広間は今までの中で一番広く、ゴブリンと俺たちの間にはそれなりに距離が空いている。迎撃するにしてもこのままじっとしてこちらに来るのを待っている必要は無い。弓持ちもすでに矢を放ち始めており、俺も両手を敵に向けて死霊魔法を放つ。
死霊魔法の効果は劇的だった。効果範囲内にいたゴブリンの動きが目に見えるくらい鈍くなったのだ。
「大蠅よりも効きがいいって、あぁ、あっちは虫だしそういう感覚がもとから鈍かったのかな?」
そんなことよりも今は目の前の敵に集中するべきか。両手を頭上に翳し、そこに最近になって何となく分かり始めてきた魔力を操る感覚に従って手を翳した先に魔力を集中させていく。
「く、ら、え!」
腕を振り下ろし、頭上に集中させていた魔力がそれに合わせて解放される。解放された魔力は俺のイメージ通りに、いやイメージよりも若干大人しいか?まぁ一応は狙ったとおりに幾つもの雷光となって部屋を駆けめぐった。ゴブリンからゴブリンへと連鎖反応を起こして部屋中を駆ける雷光は上位種までは届かなかったが、殆どのゴブリンを貫いたはずだ。ただ俺の力不足か、範囲攻撃故か一撃で倒すまでには至っていない。そのかわり軽度の麻痺を起こしているのかフィジカルカースで鈍くなった動きがさらに鈍くなり、中にはそのまま転倒して後続に踏まれてそれがとどめとなって消えていく奴までいる。
後は近づいてくる奴から順番に片付けていけばいい。と言っても動きの鈍くなったゴブリン達は弓持ちの放つ矢に一撃でしとめられており、なかなか近づいてこれないんだけど。もう一度広範囲系の魔法を放つ魔力は残ってないし、いらないカッパーダガーでも投げるか。数だけはあるしな。
そうと決めたら異次元ポケットからカッパーダガーを取り出して近づいてくるゴブリンへ投擲する。投擲のアビリティを持っていないので威力は出ないうえに、まっすぐに刃を向けて飛んでいくわけではないためさらに威力が低くなるわけだが。もとより仲間に踏まれただけ死亡するほど弱っているためこの程度の攻撃でも十分だし、適当にだが属性付与も施してあるのだ。投げたカッパーダガーを喰らったゴブリンが面白いように倒れていく。
そうやって5体ほどゴブリンを倒したところでようやく前衛たちの間合いにゴブリン達がたどり着いた。奇声を上げレザーリビングメイル達に攻撃しようと得物を振り上げ、それを振り下ろす間も与えず前衛達の武器がゴブリンを捉える。
全く勝負になっていなかった。フィジカルカースと電撃によって動きの鈍ったゴブリン達は、まともに攻撃することも出来ずに光の粒子となって弾け消えゆく。
どれくらい倒したか、半分以上のゴブリンを殺したところでようやく上位種(?)が動いた。見方がやられていく姿に怒ったのか、武器を振り上げて咆哮を上げてこちらに突撃してきたのだ。
それを見た(?)弓持ちが狙いを上位種へと変えて矢を放つ。放たれた矢はしかし、上位種が振り回した棍棒に弾かれてしまった。
「いや、切り払いとかゴブリンと実力が違いすぎるだろ!」
動きの鈍ったゴブリン達を追い越し、上位種(?)が迫る。剣持ちと斧持ちが盾を構えて上位種(?)を文字通り身体でその進撃を食い止める。
「グガァァァァァァッ!」
咆哮と共に振るわれた棍棒が盾の上から剣持ちを叩く。攻撃を盾で受け止め、動きの止まった瞬間を狙っていたのだろう剣持ちのレザーリビングメイルはその攻撃を受け止めきれず勢いよく吹き飛ばされた。
「嘘だろ………………」
吹き飛ばされたレザーリビングメイルに視線を向けるが、レザーリビングメイルは痛みを感じていないかのごとくすぐさま立ち上がり、追撃をかけようと近づいてきたゴブリンを切り捨てて上位種(?)と走りだす。
「その大型のゴブリンは前衛全員でで押さえ込め、弓持ちは俺と一緒に周りの雑魚を掃討するぞ!」
近くにいたゴブリンの首を撥ねながら命令を下し、レザーリビングメイル達はすぐさま命令を実行に移した。槍持ちと剣持ちが一人で上位種(?)の相手をしていた斧持ちの横に並んだのを確認し、俺は彼らにちょっかいをかけようとする雑魚を優先して刈り始めた。
5体目のゴブリンを始末したところでようやく雑魚の掃討は完了した。上位種(?)はどうなったかと視線を向ければまだまだ健在。所々に傷を負っているもののそれはレザーリビングメイル達も同様だ。レザーリビングメイル達はよく抑えてはいるものの、半ば押され気味のようだ。
3対1でこっちが押され気味って、単純に上位種って訳ではなく2つ3つはランクが何じゃないのか?ゴブリンロードとかキングゴブリンみたいな感じで。とにかく後はあいつ一体だ。前衛達が気を引いてる間に背後に回り込もう。上位種(?)の視界を避けて後ろに回り込もうとすると、前衛達も俺の意図に気付いたのか守勢だったところから攻撃がかすめるのも構わずに手数を増やし、上位種の意識が周りに向かないよう動いてくれた。
さて、奇襲をかけるにしてもチャンスは一回だけだろう。失敗したからもう一回と仕掛けさせてくれる相手とは思えない。そうなるとこの奇襲でしとめるか、勝利への取っ掛かりぐらいは確保したいところだ。狙うのは、やっぱり頭部だよな。背後から飛びかかって頭部に剣をぶっさす。外れても上からの攻撃なら肩とかに当たる可能性も高い。そうすれば敵の攻撃の手を弱めることも出来るはず。攻撃の手を弱めることが出来ればそれこそ数で押し切ることも十分に可能なはずだ。
どこを狙うかを決めた俺は、上位種(?)の背後に回り込んで距離を取った。ここから助走をつけて飛びかかる。上位種(?)の背後から外れないよう位置を調整しつつ機会を伺う。2合3合とレザーリビングメイル達と得物を打ち合わせ、そこでその機会が訪れた頭上に振りかぶった棍棒を振り下ろす大降りの一撃。レザーリビングメイル達を掠めて振り下ろされた棍棒が地面に打ち付けられるのを確認するかしないかというタイミングで俺は走り出した。振り下ろし僅かに前屈みになることで頭の位置が低くなっている、絶好の機会だった。そう、絶好の機会のはずだった。俺のジャンプ力が高ければ………………。
俺は忘れていたのだ。このダンジョンの魔物を相手に一対一なら負け知らずで、日本にいたころでは考えられない動きで剣を振るい続け勘違いしていたのだ。魔物を圧倒できる剣の腕はアビリティの恩恵によるもので、レベルアップしているとはいえ身体能力は対して上がっていないということを。そして【ジャンプ】のアビリティを持っていない以上身体能力以上の跳躍を行うことなど出来ないということを。
助走の勢いを保持したまま地面を蹴って会心の跳躍を行った俺は、突き立てるために逆手に持った鉄の剣を振り上げた。瞬く間に近づく上位種に、しかし対して上がらない視点。全力で行った会心の跳躍は、上位種の頭部はおろか肩にすら届くことなく失速し、俺の身体は放物線を描いて落下を始める。落下をしながらも近づく上位種の背中。やり直しなど出来るはずもない。このままいけば革鎧に包まれた上位種(?)の背中にぶつかるだけだ。自分の失敗に言葉をなくしながら、それでも俺は剣を振り下ろした。上位種(?)の背中に向けて。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!?」
跳躍の勢いを全てそそぎ込んで振り下ろした鉄の剣が革鎧を貫いて上位種(?)の背中に深々と突き刺さった。目論見は外れたが成果は出した。そう気を取り直そうとした俺の視界に影がかかる。そう認識した直後俺の視界に映る全てが線となった。そして俺を襲う衝撃と激痛。
何があったのかと身体を動かそうとして激痛が走り、目の前がチカチカとしていた視界が元に戻る。遙か遠くに上位種(?)が暴れているのを確認し、何となく理解する。どうやら振り回した棍棒が俺を直撃したようだ。俺よりも力があるレザーリビングメイルが盾を構えて受け止めきれない一撃を、盾どころか身構えてすらいなかった俺に耐えられるわけもなく、その一撃で部屋の隅まで吹き飛ばされたようだ。玉座の間に転送されていないということは即死ということはないのだろうが、前進を襲う激痛に身体を動かすことが出来ない。けど、やっぱりまずいな。上位種(?)が手当たり次第に棍棒を振り回して暴れ出している。力任せの一撃のようで棍棒が風を切る音がここまで聞こえてきている。あんなのを喰らったらレザーリビングメイル達でもただではすまないだろう。だというのにレザーリビングメイル達は上位種(?)への攻撃の手を休めようとしないのは俺の命令故か、攻撃の手を休めれば動けない俺のところへ向かうだろうことを察してか。
棍棒が振り回される音が響く中近づいてくる音に気づき、そちらに顔を向けるがたったそれだけの動作でも体中に激痛が走る。駆け寄ってきたのは弓持ちのレザーリビングメイルだった。弓持ちの手が異次元ポケットの中に差し込まれる、って配下も異次元ポケット使えたんだ。取り出されたのは下級傷薬か。動けば激痛、動かなくても痛みが走る現状それは非常にありがたい。弓持ちが傷薬の栓を開けて中身を俺に振りかける。効果は劇的だった。全身の痛みが瞬く間に退いていく。全ての痛みが完全に消えるわけではなかったが、これは本当にありがたかった。わずかに痛みの残る頭部に触れると手に血が付いた。傷口は傷薬のおかげで塞がったようだが、そうか棍棒の直撃はやはり相当な威力だったんだな。
弓持ちのレザーリビングメイルに支えられて立ち上がり改めて上位種(?)を見やると、奴の背中には俺の突き刺した鉄の剣が刺さったままだった。あんな痛い思いをさせてくれたんだ、その成果がしっかりと残っててよかったよ。しかし、このままじゃまずいな、俺は傷を回復させ痛みは大分退いたとはいえレザーリビングメイルに支えられてようやく立ち上がれる程度。前衛達もまだ直撃こそないものの先ほどよりも攻撃を喰らうことが多くなっているようだ。俺たちに切れる手札は殆どない、そう殆どだ。殆どということは全部というわけではないということ、まだ切れる手札は、残っている。
異次元ポケットから下級魔力薬を取り出し一気に煽る。
「初めて使ったけど、魔力が回復するのを実感できるな」
減っていた魔力が満たされていくのを感じとり、言葉がこぼれる。だいたい5割くらいだが、これだけあれば先の広範囲の電撃をもう一度放つことだって出来る量だ。使わないけどね、敵は一体だけだし魔力の消費量に対して威力もすこし低いし。けど、雷系の攻撃というのは正解だろう。上位種(?)の背には俺の鉄の剣が刺さっているのだ。あれには炎属性付与を施してあるが鉄で出来ていることには変わりなく、電気をよく通してくれるだろう。おまけに刺さっているということは刀身が内蔵に触れているということのはず、そこに電流が流れれば…………………。剣が刺さったまま暴れ回りレザーリビングメイル達を圧倒するようなタフな奴なわけだが、体内から電気に焼かれて耐えることが出来るか?
「撃ち抜け!」
上位種(?)へと翳した掌から電撃が走り、宙を駆けたそれは導かれるように俺が突き刺した鉄の剣を捉え、上位種(?)の体内へと極上の電撃を流し込んだ。
「グガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァァァァアアアッァァァァァァァァァァァァッァァッ!!!」
俺の掌から放出し続ける魔力が電撃へと変換され、電撃が俺と上位種(?)を繋ぐ。上位種の全身から肉の焼ける臭いと煙が立ち上り、空気をつんざくような悲鳴が広間に木霊する。しかしそれでも俺は魔法の行使を緩めない。下級魔力薬で回復した分も、元から残っていた分の魔力も全て電撃へと変換して上位種(?)へと流し込む。
時間にしてどれくらいそうしていたのか。魔力が切れて電撃が収まると電撃を喰らいながら痙攣を起こしていた上位種の身体も、全身から煙を立たせながら膝を突き、そして光の粒子となって消えていった。残ったのは奴の身体に突き刺さっていた鉄の剣と、普段見る物よりも少し大きな宝箱が一つ。
「は、はははは、勝った!!」
強敵との戦いに勝利し、俺は握りしめた拳を頭上へと突き上げた。
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名前:黄麻大地
性別:男
レベル:6
職業:魔王候補生
クラス:未定
生命力:E
力:E
魔力:D
素早さ:D
運:B
アビリティ
剣術LV13(LV2up)・盾術LV6(LV1up)・根源魔法LV11(LV3up)・付与魔法LV5・死霊魔法LV3(LV2up)new・鑑定LV8・気配察知LV11(LV1up)
スキル
・根源魔法/炎/雷/風/水/氷
・付与魔法/炎/風/土/水/氷/雷
・死霊魔法/フィジカルカース
・配下作成
装備
武器1:鉄の剣(炎属性付与)
武器2:木の盾(土属性付与)
上半身:布の服
防具:革鎧(風属性付与)
下半身:革のズボン
足:底のすり減った安全靴(土属性付与)
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名前:
性別:無
レベル:4
種族:レザーリビングメイル
クラス:未定
属性:土
生命力:D
力:D
魔力:F
素早さ:E
運:E
アビリティ
剣術LV6(LV4up)・盾術LV6(LV5up)
スキル
装備
武器1:銅の剣(炎属性付与)
武器2:木の盾(土属性付与)
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名前:
性別:無
レベル:4
種族:レザーリビングメイル
クラス:未定
属性:風
生命力:D
力:E
魔力:F
素早さ:D
運:E
アビリティ
弓術LV7(LV5up)・解錠LV3(LV2up)new・罠解除LV1new
スキル
装備
武器1:木の弓(雷属性付与)
:矢
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名前:
性別:無
レベル:4
種族:レザーリビングメイル
クラス:未定
属性:水
生命力:C
力:E
魔力:F
素早さ:E
運:E
アビリティ
槍術LV6(LV4up)・盾術LV5(LV4up)new
スキル
装備
武器1:銅の槍(氷属性付与)
武器2:木の盾
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名前:
性別:無
レベル:4
種族:レザーリビングメイル
クラス:未定
属性:炎
生命力:D
力:C
魔力:F
素早さ:E
運:E
アビリティ
斧術LV6(LV4up)・盾術LV5(LV4up)
スキル
装備
武器1:銅の斧(炎属性付与)
武器2:木の盾




