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あれ?見知らぬ魔物が?

「主、言われた物ができたゆえ持ってきたぞ」


 のっしのっしという音が聞こえてきそうな雰囲気で玉座の間に入ってきたのはイグニフェルだ。彼の背後には荷物を持ったドワーフ達が続いてきている。


「お、調度いいところに来たな」


「ふむ、なにが調度いいのかは分からんが、先に頼まれていたものを渡させてくれんか?」


「あぁ頼む。それを含めての調度いいだからな」


 俺が頷くのと同時にドワーフ達が持ってきたものを組み立て始める。それは大型の金属鎧だ。それもただの金属鎧ではない上半身こそ人型のそれであるが、下半身はまるで馬。というか馬用の金属鎧だ。そのためみた組み立てられた見た目はケンタウロスという半人半馬とでも言うべき姿だ。


「どうだ主よ、なかなかであろう」


「あぁ、俺が想像してた以上だ」


 それじゃ、早速……………………。


「スキル『配下作成』」


 組み立てられた鎧にスキルを使用した。


 鎧の下に描かれる魔法陣。俺の中から引き出されたエナジーが鎧へと注ぎ込まれて行く。そして……………………。


「ほう」


 ガシャリと音を立てて自らの足で立ち上がる鎧。いや『アイアンリビングホースメイル』。人馬型のリビングメイルだ。下半身が馬用の鎧のため多くの隙間があるわけだが、そもそもレザーリビングメイルの頃からそれはあったのだから問題ないだろう。


「こうするための鎧だったか」


「ダッシュのアビリティは最初から所持してるか。よし、一度玉座の間を一回りしてこい。全力でな」


 無言でコクりと頷いたアイアンリビングホースメイル床を蹴って走り始める。最初はゆっくりと、しかし徐々にその速度をあげていく姿はかつてのアイアンホースとは比べ物にならなかった。


「すまないがイグニースとフルーメンを呼んできてくれないか?多分リビングメイルの詰所に居るはずだから」


 アイアンリビングホースメイルの駆ける姿に魅いっていたドワーフにそう頼むと、彼は慌てたように頭を下げて2人を呼びに玉座の間を去っていった。


「イグニフェル、お前とコロナに命名権をやるから工房のドワーフ達に名前を付けてやってくれ。アビリティのレベルに変化がある訳じゃないが、名前があるのとないのとじゃ色々と違うだろ」


「む、良いのか?」


「いい、というか俺としては個人で名前を持てなかった今までがおかしかったと思ってるんだ」


「そうか、あいつらも喜ぶだろう。皆口にこそ出さなかったが名を欲していたからな」


 俺達の会話が聞こえていたのか、その場に残っていたドワーフ達が互いに顔を向けて笑みを浮かべているのを見て、俺も僅かに頬が緩む。そして戻ってきたアイアンリビングホースメイルを労いその場に待機させて再びステータスを開く。所持アビリティはダッシュだけ、新しいアビリティを覚えさせなきゃな。


 アイアンリビングホースメイルのアビリティの調整が終わる頃に調度よくフルーメンとイグニースの2人が玉座の間にやってきた。


「フルーメン、オ呼ビト聞キ馳セ参ジマシタ」


「クイグニース、同ジク馳セ参ジマシタ」


「おう、ご苦労。すぐ済むから少し待ってくれ」


 アイアンリビングホースメイルに僅かに視線を向けながら、膝を突きかしこまるふ2人を待たせ俺はスキルを発動する。


「スキル『配下複製』」


 一気にごっそりとエナジーを消費して100騎に及ぶアイアンリビングホースメイルが玉座の間に産み出され、その壮観な眺めに笑みを浮かべて2人に顔を向けた。


「こいつらは新しく作成したアイアンリビングホースメイルだ。

 イグニースが率いていた斧持ちのリビングメイル達の指揮権をフルーメンに渡せ。代わりに以後イグニースはフレイムホースを駆ってこのアイアンリビングホースメイルを率いろ」


「ハッ、カシコマリマシタ」


「御期待ニ応エラレルヨウ全力ヲ尽クシマス」


「よし、フルーメンは今後槍持ちと斧持ちとの連携を徹底して訓練させろ。もしもこの魔王育成プログラムを卒業した先、そこで大きな戦いが起こった場合、主力となるのはお前達になるからな」


「必ズヤダイチ様ノ期待以上ノモノニシテミセマショウ」


「イグニフェル、アイアンリビングホースメイルの装備だけど、ハルベルトと大盾、それと例のアレも頼む」


「む、こいつらにアレを持たせるのか?」


 例のアレ、作ったはいいが大きすぎて持ち運びが大変な武装を装備させようと言う俺にイグニフェルは驚くが、アレは取り回しが悪いと言うだけの理由で倉庫の肥やしにしておくのは惜しすぎる武器だ。


「こいつらは見ての通りでかいし力もある。アレを扱うにはうってつけだ。今はあるだけでいいから装備させて、問題点が出てきたらそこを改善しながら量産してくれ」


「他ならぬ主が決めたことだ。従おう」


「よし、イグニースはアイアンリビングホースメイルの装備が整いしだい草原の攻略に向かえ。そしてその運用を研究、確立させてこい」


「ハッ、必ズヤ」


 頭を垂れてかしこまるイグニースに頷き、2人にも配下の名前をつける権限を与えて下がらせた。


「さて、次は魔物の育成役の用意だな」


 呟きながら開いた魔物事典のページ。そこに書かれたのは猫耳と猫の尻尾を持った人の姿。


 『ケット・シー』と呼ばれる種族だ。動物の調教に長け、魔物使いとしての適正を持つ種族。配下の魔物の世話と調教を行うのにこれだけピッタリの種族も他に居ないだろう。問題はほぼすべての配下の魔物のレベルがこれから作る彼らよりも高いことだが……………………。そこは配下成長を使って底上げを行えばいいだろう。

 もう1つ問題なのは、素材が無いんだよな。人型だしスケルトンを使うってのがあるけど、それだけじゃなぁ。

 無い以上はエナジーを注ぎ込むしかないか。


「コールアンデット、スケルトン」


 呼び出した2体のスケルトンを目の前に立たせ、スキルを発動する。


「スキル『一括作成』」


 体内から一気に大量のエナジーが放出される。スケルトンの足下にはいつもより複雑な魔法陣。放出されたエナジーがスケルトンへと注ぎ込まれ光の柱が立ち上る。そして光の柱が消えたときそこには男女2人のケット・シーが立っていた。


 開いた目が俺の姿を確認した瞬間、2人は同時に跪いた。

 2人の容姿は同時に作成されたからか、男女の差はあれど非常に似かよっていた。互いに薄茶色の髪を短くまとめ、その中から三角形の猫耳がピョンと飛び出している。

 体格は男の方が大きく、しかしどちらも筋肉が引き締まっており短距離走などの陸上選手を彷彿させる。


「顔を上げろ」


 2人が命令に従い顔を上げると、先ほどちらりと見えた非常によく似かよった容姿を再び確認することができた。どちらも猫を思わせるやや釣りぎみ碧眼で、鼻梁はやや高くケット・シーなだけあってやはり全体的に猫らしい雰囲気を醸し出している。


 アビリティを確認するとどちらも調教のアビリティを取得しており、他にも直感や幸運という未見のアビリティを取得していた。


 よし、とりあえず剣術と鞭術を覚えさせるか。あ、補助魔法も覚えられるのか、なら覚えさせよう。それに魔物学も必要だな。捕獲、解錠、罠解除、軽業、採取に調薬。魔物使いならこんなものかな。


「スキル『一括成長』調教」


 2人の調教のアビリティにエナジーを注ぎ込み一気に30レベルまでアビリティのレベルを引き上げる。そこでエナジーにまだ余裕があることを確認してさらにレベルを10まであげてやり、2人をベースに配下複製を行い男女それぞれ30名に増やす。毎度思うけどこの複製ってどうなってるんだろ。能力は変わらずけど外見は誰1人一緒になら無いんだよな。


「スキル『配下命名』マイア。

 スキル『配下命名』バックス」


 最初に作成した2人に命名を行いこれで一段落といったところか。


「さて、長く待たせて悪かったな。わかってると思うが俺がお前達の主の黄麻大地だ。

 いきなりで悪いがお前達の役目を教えるぞ。お前達の役目はこの拠点に居る魔物の世話と調教だ。家畜としての魔物、戦闘で使う魔物と役割は様々。よってお前達にも拠点内での活動と同時にダンジョンでも魔物を率いてもらうことになる。やってくれるな」


「それが我々の存在理由なのでしたら是非もありません」


「例えこの身朽ちようとも最後まで大地様のために尽くすこと誓います」


 女ケット・シーであるマイアの言葉に同意するように全員が頷き、その光景に満足した俺は笑みを浮かべた。


「マイア、バックス。お前達に仲間の命名権を与えるなるべく早い内に名前を付けてやれ」


「は、ありがとうございます」


 代表するようにバックスが返事を返し、俺はパチン、と指を鳴らした。すると隣の部屋に待機していたメイド達が入ってきて抱えていた服をケット・シー達に配っていく。


「着替え終わったら工房で装備を見繕ってこい。それと拠点での決まりごとなどは後で担当の者に説明させる。

 よし、お前が工房に案内してやってくれ」


「かしこまりました」


 ちょうどすぐそばにいたメイドに案内を命じ、俺は身体から力を抜いて玉座にもたれた。これでまた一区切り。次は俺達の足となる配下、なんだけど……………………。

 結構エナジーを消費しちまったな。作成できても1、2体。複製はちょっと無理だな。


 作成するだけして育ててから複製するんでもいいか。けど何を作成するか。


 開いた魔物事典は適当だ。とりあえず人型編や大型編のもの以外で探してみようと思う。そう言えば前に作成したフレイムホースは結構エナジー食ったんだよな。最初は特に特別な能力を求めたりしない方が良いのかの知れないな。

 とはいえ騎乗に適した奴となると馬系しか思い付かないし、事典を捲っていても見当たらないし……………………。どうしたものか。


「……………………御主人様、よろしいでしょうか」


「カーリウスか、どうした?」


 あぁでもないこうでもないと頭を悩ませているとカーリウスがやってきた。彼女は今兄弟達と森に出ていたはずなんだけどな。


「……………………弟からの報告です。森の第3階層にて亜竜種を発見したとのことです」


「!?」


 彼女の報告を聞いた瞬間俺はバネ仕掛けのおもちゃか何かのような勢いで跳ね起きていた。


 それはいまやファンタジーには付き物と言えるぐらいに定番と言える魔物の一体系。知恵と力を兼ね揃えた最強種たるエルダーやらエンシェントを冠するドラゴン達を頂点に、強力な敵役ともなるドラゴン達。それよりもさらに下位存在でありながら、やはり強力な存在であるレッサードラゴン。その能力は個体によって本当にマチマチではあるが、常に強さとロマンと共にあるドラゴンが見つかっただと?


 いや、カーリウスが見つけたと言ったのは亜竜種だ。亜竜種というのはドラゴンの中でも下位種であるレッサードラゴンのさらに傍流たる本当に末端の系統の魔物だ。


 そんな末端の系統の魔物なのだがそれでもドラゴンの系統に連なるものである以上、そこらの魔物とはまた格の違う存在である。

 そんな存在が森の第3階層で見つかったというのか。


「……………………亜竜は群れで北東に2日ほどの場所に居り、おそらく数日ほどで別に場所に移動するにではとのことです。

 ……………………いかがなさいますか?」


「いかがもなにも、行くに決まってるだろ。そいつらをどうするかは実際に見てから決めるぞ」


「……………………御意」


 あぁでも亜竜、ドラゴン。できることなら捕獲したいな。亜竜種でも進化させていけば相当強くなるに違いない。


「フェン達に出発の準備をさせろ。宝玉蜂騎士団も呼び戻せ。

 それと、あぁ、イグニース達はそのまま現状維持、というか予定通り草原入りさせろ。イグニース以外のエレメンタルナイツはレザー系リビングメイルを率いて森へ。朱苑にも鬼族を率いさせろ。コイトゥスにもサキュバスを全員動員するように伝えてくれ。それと、あぁ……………………、なんとか捕獲するには……………………、捕獲持ちのマイア達?いやレベルが低すぎる。そうだゲル達にも召集をかけろ。あいつらはうちの中で一番捕獲の経験がある」


 アロス達も連れていきたいけどあいつら足が遅いからなぁ。始まりのダンジョンならどの階層も広くても1日あれば殆どを踏破できる広さだったけど、森はその比じゃ無いからなぁ。


 とにかく揃えられる戦力は揃えられただろう。後は全力で当たるだけだ。


 そう思いながら転送用魔法陣の部屋に向かうとそこには、透き通った黄色い人型がいた。


「マスターオヒサシブリデゴザイマス」


「はい?」

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