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アビリティ

 やっちまった。最後の最後で宝箱とか……………………。しかもこの前調子に乗って罠にかかってからまだ4日しか経ってないぞ、全然成長できてないじゃねぇか。


 玉座に座ったまま頭を抱える俺。理由はもちろん始まりのダンジョンの最後の最後でまたも宝箱の罠にかかって死に戻りしたことだ。


 宝箱の罠にかかって死に戻りした回数は過去3回。3回も、それも全て始まりのダンジョンでの死に戻りだ。


「勝って兜の緒を締めろ、か。まさしくだな」


 はぁ、いつまでも落ち込んでても仕方がないな。


 俺はメイドを呼んでアロスへ第4階層でのレベル上げを再開するように伝えさせると同時に、寝室の本棚から『アビリティ大全集』を持って来るように言い付けた。


 死に戻りしてなければ寝室で一眠りするつもりだったんだけど、一度死んでこうして生き返るとそれまでの疲労なんかも全てリセットされる。便利ではあるけど生き返った直後は身体が重くなって動きに支障が出るため再度ダンジョンに、というわけにはいかないけどな。


「主様、大丈夫ですか!?」


 メイドが本を持ってくるのを待っているとフェンが慌てた様子で玉座の間に駆け込んできた。その後ろには大全集を抱えた先のメイドがいるので、本を取りに行ったメイドから俺が死に戻りしたことを聞いたのだろう。


「宝箱の罠で死に戻っただけだ。完全に俺の油断だよ。自業自得だ」


「そんな、やはりカーリウスを、いえせめてリビングメイルだけでもお連れしてはいかがでしょうか」


「いや、やっぱりそれはなしだな」


 俺の足元に片膝をついて心配そうに見上げてくる彼女に苦笑しながら首を振る。


「確かに誰かが一緒にいればそれだけ楽になるけどさ、俺個人の強さを鍛えるのに不都合なんだよ。

 単純な戦闘力だけでなく、1対多の戦い方や戦場での心構えとか。

 今回の死に戻りの原因だって、俺が最後まで気を抜かなければ回避できたわけだしな。

 別にみんなが邪魔って訳じゃない。ただみんなと一緒では鍛えられない部分を鍛えるために1人で挑んでるんだ」


 フェンの頭を撫でながらメイドから大全集を受け取り、同時に用意されたテーブルに上級編を置いてアルネミアラの店で買ったアビリティ大全集下級編(写本)を開いた。


「でも心配してくれてありがとうな」


「私が、いえ私達が御身の心配をするのは当然です。主様あってこその私達なのですから」






 さて、いつまでもフェンと甘い空気を作っていても仕方がない。(自主規制)するときとそうでないときのメリハリをちゃんとつけないと際限が無いからな。


 現在俺のアビリティは……………………。

 まずエクストラアビリティが重力操作、超振動、せいぎのちから、せいぎのみわざ、属性相殺……………………、さらに増えてるな。雷光師?どうやら魔力を一切用いずに雷を操るエクストラアビリティらしい。かなり強力なアビリティだな。これを覚えたのは、間違いなく第4階層でやったあれが原因だよな。


 次は普通のアビリティだな。

 現在剣術のレベルが62、盾術が42、鎧術34、根源魔法60、付与魔法31、死霊魔法42、ジャンプ40、ダッシュ47、鑑定51、気配察知50、魔力察知48、直感38、魔物学50、調教31。合計14個。1人が取得できるアビリティの最大数が15個だから、今の俺はほとんどギリギリだな。


 ここからアビリティを整理するとしてだ、絶対に必要なのは剣術に、盾術か。俺の戦闘の根幹だし必須だよな。あ、そうだ。後で剣術を大剣に派生進化させておこう。

 敵の攻撃を受ける機会が少ないからあまり育ってないけど、鎧術もいざというとき薄皮1枚で首を繋いでくれる可能性があるから外せない。根源魔法も主力アビリティだから外せないし、死霊魔法も配下作成するときに使う。ジャンプもダッシュもあるだけで戦闘が全然違ってくるよな。高速で動いたり跳躍しての回避に攻撃、移動も結構楽になる。

 鑑定は言わずもながだ。無いとアイテムの詳しい情報がわからん。これは魔物学にも言えることだな。正直人に説明してもらったとしてもそれをしっかりと覚えていられる自信無いしな。俺記憶力無いし。


 気配察知、魔力察知。


 後は付与魔法と直感、調教だな。まず付与魔法だが……………………、正直俺が取得しておく理由が見いだせなくなってきてるんだよな。いやだってさ、うちの生産職全員付与魔法持ちでイグニフェルとかコロナなんかすでに俺よりレベル高いし。

 うん、俺が持ってる意味無いよな。


 次々。

 次は直感か。これも実感がなぁ。いや、ごく希にだけど実感はするんだよ。さっきのタイターン戦でも勘で避けたところが1度か2度はあるし。嫌な予感がしてそれに従うと罠を回避できたりとか。

 けど同じくさっきの宝箱の時とか普通に食らったりするんだよな。

 正直扱いが難しい。ただ忘れたころにではあるけど効果を実感する時があるのも事実だし保留、かなぁ?


 で、最後は調教だ。うん。残しておこう。これあるとあのダークエルフも調教がうまく進んでるのが実感できるんだよな。今後も同じようにハーレムを増やすだろうし必須だよね、これ。


 ……………………不要なのが付与しか無いだと?

 あ、洒落じゃないよ?


 いやしかし、整理しようと思ったのに全然整理できんとは。

 とりあえず付与魔法は他のアビリティで上書きするとして、そうすると残るアビリティ枠は2つか。


「主様、お茶が入りました」


「ん、ありがとう」


 いつの間にかお茶が用意されていた。ちょっと視線を向けるとフェンが湯飲みに緑茶を注いでいるところだった。

 湯飲みを受け取り口をつけると、猫舌な俺でも飲みやすい温度で淹れてあり彼女の気遣いを感じることができた。


 にしても美味しいな、これ。フェンって調理も家事のアビリティも持ってないはずなんだけど……………………。


 まぁ特に気にする必要もないか。


「さて、問題は新しく何のアビリティを取得するかだな

 残り2枠しかないししっかりと考えないと」


「それでしたらまずこちらでアビリティの確認をなさってはいかがですか?」


 アビリティ大全集下級編を開こうとしたところを横からそう声をかけられた。言われて再度フェンの方を見れば、彼女の手にあるのはアビリティ大全集上級編だった。


「いや、上級編のアビリティって未だに俺のリストに載ってないんだけど……………………」


 そう、現在俺は上級編に載っているアビリティのほとんどを覚えることができない。

 数瞬先の未来を知ることのできる『予知』。アロスや朱苑の持つ『剛力』。魔力の回復速度を速める『魔力回復』等々だ。人工精霊にどうすれば取得できるのか聞いてはみたが、それぞれ取得方法は異なり詳しい回答は不可能とのことだった。

 だと言うのになぜ上級編を?


「こちらをご覧ください」


 上級編のあるページを開きフェンが指差したのは『軽身功』と書かれた項目だった。


「軽身功、効果は跳躍力、走行力等の強化……………………。ダッシュとジャンプを足したようなアビリティだ」


「実際そういった能力ですから。

 主様に見てもらいたいのはその後です」


「ん?」


 言われて効果を書いた文の後を見てみると、そこには『要ダッシュ・ジャンプ・軽業』と書かれていた。これって、もしかして?


「軽身功を取得するにはこの3つのアビリティが必要ってことか?」


「恐らくそうだと思います。他のアビリティには書いてあるものと無いものもございますが、書いてあるものはどれも下級編に載っているアビリティが必要になっているようです」


 これは……………………、1度試してみるか?

 この『軽業』のアビリティはただ単純に身軽に動けるようになるというものだが、単純ゆえに非常に有能な能力だ。

 失敗しても特にデメリットもないし取ってみるか。


 一応アビリティ大全集下級編の方で軽業の効果を確認してそれを取得する。


「……………………少なくともリストに追加はされてないみたいだな」


 『軽業』を取得してアビリティリストを確認してみるも、軽身功は追加されなかった。


「も、申し訳ありません……………………、知ったような口を聞いておいてこのような……………………」


「いや、フェンが謝るようなことじゃないよ。

 よくよく考えてみれば剣術を上位アビリティに変化させるのにもレベルを60以上にするって条件があるんだ。こいつらにも同様の条件があるんだろう」


 とりあえず軽身功を育てて見ないとな。


 よし、剣術を大剣に派生進化させよう。

 アビリティの派生進化を行うとどうなるのか前にも軽く説明したかと思うけどもう一度詳しく説明しよう。

 取り敢えず俺のアビリティを例にあげよう。俺は剣術を大剣に派生進化させるわけだが、まず剣術のアビリティの効果が『剣』というカテゴリーに含まれる武器の扱いをそのレベルに応じて習熟させ理解させられる。さらに攻撃力や攻撃速度、その武器を用いての防御力にレベルに応じて補正がかかるというアビリティだ。

 これが大剣に派生進化すると、まず派生元のレベルで大剣以外の武器への習熟と理解が止まり、逆に大剣に対する理解度と習熟度がさらに上がる。そしてこれは大剣の場合であるが攻撃力等にかかっていた補正率は、短剣や刀、刺突剣等の軽さや技術が特に必要な武器では元の補正率の0,8倍、両手剣や片手剣でも重さや力で振るう武器には1,8倍、そして肝心の大剣で3倍になるのだ。武器の習熟度も加味すれば元の3倍どころではきかない強化率だ。

 ただ派生進化すると元の8割のレベルに下がるが、それでも十分すぎる変化である。俺の剣術のレベルは62だから49か50に下がるのかな?


「んん?」


 アビリティリストに目を通して首をかしげた。所得アビリティのリストも目を通して首をかしげる。


 どうやって派生進化させるんだ?


「なぁ人工精霊」


『何でしょうか?』


 うわ、すごい久しぶりに声聞いたな、じゃなくて。


「アビリティの派生進化ってどうやればいいんだ?」


『現在アビリティの進化及び複合に関するシステムは解放されていません。

 解放条件はシークレットとなっているためお教えすることもできません』


 なんですと?


「うわ、つまりさっきの軽業にしても元から軽身功にはできなかったってことか」


『肯定です』


 仕方がないか。派生進化なんかができるようになるまで地道にアビリティを成長させていこう。









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