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ハーレムぞういんちゅう

「どぉぅりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 黒光する巨大な金棒が振り抜かれ、その一撃を受けたトレントの体がくの字に折れ曲がりながら宙に浮かばされる。


「まったく暑苦しいな」


 宙に浮いたトレントの上に人影が現れる。人影は薄暗い森の中に確かな光の軌跡を描きながら白刃を抜き放ち、半ばまでへし折れていたトレントの身体を真っ二つに切り裂いた。


朱苑しゅえん、黙れとは言わんがもう少し静かに戦うことはできんのか?正直やかましくて叶わんのだが」


「んだと、梅絹ばいけん。俺の戦い方にケチつけようってのかよ」


「そんなこと言うておらんだろ。拙者はただもう少し静かにしてくれと言っておるだけじゃ」


「それをケチつけてるって言うんだろうが!」


「はいはい、喧嘩はそこまでにしなさい。主様の前なのよ」


 薄暗い森の中。複数のトレントとの戦闘が終わり相反する性格の二人の喧嘩に苦笑していた俺は、フェンの言葉にはっとなる2人に気にするなと手を振るった。


「す、すまねぇ御館様!」


「申し訳ございませぬ、殿」


「気にすんなって」


 朱苑と梅絹。テスカに続いて作られたハーレムの一員だ。


 1人目、朱苑は燃えるような朱い髪に赤銅色の肌を持つなんとも太陽とビーチが似合いそうな長身の美女。虎柄の胸覆いと腰巻きという軽装で自身の2ある身長をさらに越える巨大な金棒を振り回す彼女は、赤髪の合間から2つの角が示すとおり鬼族の女性だ。【鉄肌】という肌に鉄のごとき防御力を与えるアビリティを持っており、まだアビリティのレベルが低い状態でありながらテラ達リビングメイル系統と同等の防御力を得ている彼女だがアビリティの効果は『防御力を上げる』というものであるため、実際に触ってみるとアスリートのようにスラリと引き締まった身体は女性特有の柔らかさも持ち合わせている。

 性格は豪快の一言で、戦い方もまさしくそのままだ。

 ちなみに履いてない


 2人目の梅絹は黒い髪を腰の辺りまで延びた髪をポニーテール状に纏めた中性的な和風美人だ。梅の花を思わせる赤い着流しに1振りの刀を腰に差しており、中にはさらしと足には草履とまるで江戸時代から来ましたと言われても違和感がない女性である。

 そんな彼女の種族は樹人という植物系の種族で、俺が作り出したのではなくマザープラントから産まれた配下の第1号でもある。

 マザープラントという横文字の存在からこんな和風な種族が生まれてくるとは思っていなかったが、それについてはそう言うこともあるんだということで深く考えるのは止めることにした。

 梅絹もまた朱苑同様軽装ではあるが、彼女も朱苑同様防御力を上げるアビリティを持っていると言うわけでは無く、彼女の場合は【見切り】という回避系のアビリティを持っているがゆえである。

 梅絹は他にも驚くべきアビリティを持っている。そのアビリティの名は【刀術】。剣術から派生する上位アビリティの1つを彼女は生まれながらにして取得していたのだ。


 派生型上位アビリティと言うのは、剣術や槍術と言った基礎アビリティのレベルを60まで上げることで変化させることができるアビリティで、基礎アビリティ事態は無くなってしまい取得した上位アビリティ以外の武器、例えば梅絹の場合は刀以外のバスタードソードやダガーといった剣の扱いに対する補正が半分になってしまう代わりに、刀に属する武器ならばそれまでの倍以上の補正を得られる特化アビリティなのだ。


 そんな派生型上位アビリティだが、基礎アビリティから変化する際基礎アビリティのレベルの8割のレベルに下がるようになっている。しかし生まれつき刀術のアビリティを持つ梅絹の場合レベル1からのスタートとなり、現在アビリティレベルを上げるために頑張っているところだ。


 ちなみに彼女も履いてない。


「これで課題の片方はクリアできたか」


 朱苑を作ったことで物理的な火力を得ることができた。そうすると次は魔法タイプだな。あのダークエルフの調教が終われば彼女達を……………………、いや無理か。あいつら元々隠密だ。魔法役にさせても中途半端になりかねないな。

 こんどアルネミアラに頼んで魔物辞典を揃えてもらうかな。あれがあると新しい配下を作るのがかなり楽になるし。


「……………………御主人様、南の方にホブゴブリンの集落を見つけました」


 今後のことについて考えていると、周囲の探索に出ていたカーリウスが戻ってきた。

 次の相手はホブゴブリンの群れか


「数はどれくらいだ?」


「およそ50ほど」


 真っ正面からぶつかっても倒せる相手だな。


 今この場にいるのはフェン、カーリウス、アピス、コイトゥス、テスカ、朱苑、梅絹に俺を含めた8人だ。1人頭12体だとしてもお釣りがくるな。


「あの、大地様」


「ん」


 皆に行こうか、と声をかけようとしたところで逆に呼ばれて振り返ると、テスカがどこか緊張した面持ちで俺を見つめていた。


「あの、そのホブゴブリンぼ集落、ボクにやらせてもらえませんか」


「それってつまりテスカ1人でってことか?」


「はい」


 テスカ1人で、ねぇ。できなくはないとは思うけど……………………、少し危なくないか?


「呪術を試してみたいんです」


 呪術、あぁそうか呪術か。そういえばまだ呪術はやらせたことがなかったな。


「皆はかまわないか?」


「私はかまいません」


「……………………御主人様に従います」


「かまいませんわ」


「私もかまいませんわ」


「俺もいいぜ」


「拙者も殿の判断におまかせします」


 満場一致だな。皆の返事を聞いてテスカに頷くと、彼女は笑顔を浮かべて頭を下げた。






 森の中にぽっかりと空いた開けた空間。周囲を警戒する俺たちとは別にテスカの槍が土を削り地面に大きな魔方陣を描いて行く。


 描かれる魔法陣は拠点にある転送用の魔方陣のように緻密なものでは無いが、何かの法則に乗っ取って描かれていることが知識のない俺にも理解できた。

 魔法陣もそうだが、それを槍を使って描いているテスカもまた凄かった。何故なら彼女はこの魔方陣を描き始めてから1度も身体を止めていない。手をではなく、身体を、だ。


 宙を翻り穂先が空中に煌めく軌跡を残し、振るった腕からは浮かんだ汗が周囲に飛び散る。尻尾が細い腰の回りを走り、引き締まった脚が軽やかにステップをふむ。


 時に速く時に軽やかにテスカは踊る。


 テスカは踊りながら魔方陣を描いているのだ。


「こいつはすごいな」


 思わず魅入ってしまっていた。


 アビリティとスキルに踊り関連の物があったのは覚えているが、それでもこれはすごい、としか感想が浮かばない。


 魔方陣が描き終わったのか、テスカは手にしていた槍を魔法陣の中心に突き立てると、今度は腰に差していたショーテルを引き抜きよりいっそう激しく踊り始めた。正直伴奏が無いのが勿体ないくらいだ。


 それから暫く魔物の襲撃もなく、テスカのステップ、ショーテルが風を切る音、つまり彼女の踊る音のみがその場を支配していた。


 そんな場に変化が現れる。踊るテスカの周囲に黒い靄のような闇が現れ、彼女の踊りに応じるように蠢き始めたのだ。

 対するテスカの踊りもさらに激しさをまし、黒い靄もまた加速度的に増えて行く。


 黒い靄がショーテルの切っ先を追うように動き、また彼女の尾に伸ばされ空中に複雑な軌跡を刻む。


 それらの黒い靄は次第に魔法陣中央に突き刺さった手槍に収束してゆき、やがて長大で禍々しい槍へと変貌した。


 そしてテスカが跳ぶ。いつの間にか手にしていたショーテルは槍の側に突き立てられており、無手となった彼女は魔法陣の中央に、禍々しい靄の槍の上へと跳んだ。


 身体を捻りつき出された右足の爪先を下に向け、槍の上へと、着地する。


 爪先が槍の石突きに触れると同時に、槍が地面の中へと押し込まれてゆき、そして消えていった。






「……………………終わりました」


「うまくいったのか?」


「おそらく。ボクも呪術を使うのは初めてなので確証があるわけではありませんが、手応えはありました」


「カーリウス」


「……………………すぐに確認してきます」


 名前を呼んだだけで俺の言いたいことを理解したカーリウスが森の中へと消えて行く。長時間に及ぶ術の行使により肩で息をしているテスカの頭を撫でてやると、彼女は気持ち良さそうに笑みを浮かべ、尻尾が甘えるように俺の体に巻き付いてきた。


 テスカのやつ尻尾の動きに気づいていないな。かわいいから黙っておこう。


「それで、今回使った呪術はいったいどんなものなんだ?」


「えっと、使った呪術は対象に軽い幻痛を与えるだけの呪いです。けど今回は呪踊と魔法陣で規模と効果の拡大ができたので、その程度ではすまないはずです」


 下手すると激痛でショック死ってか?いや上手くいけばか。


 暫く待っているとカーリウスが戻ってきた。普段はベッドの上以外で表情を変えることのなかった彼女は、テスカの方に顔を向けるとわずかに微笑んで見せた。


「……………………成功です。テスカの呪術によりホブゴブリンのおよそ6割が死亡、残りも激痛にのたうち回っているようでまともに動けるのはいないようです」


「結果は上々か。テスカ、よくやったな」


「は、はいっ」


 わしゃわしゃと頭をかき回してやり、皆に出発を告げた。






 ホブゴブリンの集落は正しく地獄絵図といった様子だった。

 まずカーリウスの報告のとおりまともに動ける個体がいない。目につくホブゴブリン全てが地に伏し全身を襲っているのだろう激痛に身体を震わせている。


 さらに限界を超えたらしい個体は俺達がとどめを刺す必要すらなく、勝手に消滅していく始末だ。


「すごいな、こいつは

 各自散開。たぶんいないだろうがまともに動ける奴が隠れていないか調べろ。そのついでにドロップアイテムの回収だ」


「そうは仰られてもこれではどっちがついでか分からなくなりそうですわね」


 苦笑しながら感想を告げるコイトゥスに俺も苦笑を返した。実際俺もそう思っているからだ。ただここまで何度も油断により死に戻っている身としては、彼女の言葉にただ頷くわけにもいかないのだ。


「かもしれないが油断は禁物だ。念のために2人1組で動け。

 あ、テスカはオレとここで待機な」


 俺の指示を聞いて皆が動き出す。うちの連中は同時期に作られた相手に対してライバル意識を持つ傾向にあるようだが、それはけして仲が悪いと言うわけではない。むしろ相手のことをより認めている間柄であるようだ。その証拠と言うわけでは無いだろうが、特に指示を出さずに2人1組にするとカーリウスとアピス、朱苑と梅絹といった組に分かれることになる。当然残りはフェンとコイトゥスの組み合わせだ。


 アピスが森に向けて口笛を吹くと数匹の翠玉大雀蜂が飛んできてフェン、コイトゥス、朱苑、梅絹、そして俺の肩に止まる。もしもの場合の連絡要員といったところだろう。


 そうして準備が整い彼女達はホブゴブリンの集落へと散っていった。それを見送った俺とテスカも付近に倒れるホブゴブリンに止めを刺しながらドロップしたアイテムを拾い、彼女達が戻ってくるのを待つことにした。


 しかしすごいよなこれ。テスカの魔力はけして高くないのにこれだけの規模の集落をほぼ全滅させた。相手がホブゴブリンとい言う雑魚であることを加味しても、逆に言えばテスカ本人の呪術のレベルはまだまだ低いと言うのにだ。これだけの規模で発動させるのには非常に時間がかかるようなので戦闘中に行うことはできないだろうが、それでも十分すぎる威力を発揮している。

 これを見たあとでは彼女に死霊魔法を取得させられなかったことが悔しく感じられる。


 今度呪術と死霊魔法の両方を取得できるのを作りたいな。絶対作ろう。それも部隊単位で。






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名前:朱苑

性別:女

レベル:7

種族:鬼族

クラス:戦士

属性:無

生命力:A

力:A

魔力:F

素早さ:E

運:C

アビリティ

剛力LV14・鉄肌LV19・気配察知LV8・聴覚察知LV9・直感LV7・力強化LV6・生命力強化LV7・物理攻撃力強化LV7・物理防御力強化LV6・魔法防御力強化LV6

スキル

・超治癒能力

・超回復

装備

武器1:特大金棒

防具:虎柄の胸覆い

下半身:虎柄の腰巻き


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名前:梅絹

性別:女

レベル:6

種族:樹人

クラス:剣士

属性:土

生命力:C

力:C

魔力:E

素早さ:B

運:D

アビリティ

刀術LV15・見切りLV19・ジャンプLV9・ダッシュLV8・気配察知LV9・魔力察知LV9・技力向上LV6

スキル

・植物操作/簡易

装備

武器:鋼刀

防具:スパイダーシルクの着流し


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