漢のロマン
「終わったか」
身体を真っ二つにされて息絶えたトレントを見下ろしてため息をついた。
「完全に火力不足だな」
森の第2階層を探索開始して大分時間が過ぎた。現在判明している第2階層の魔物はトレント、食人花の他にブラックジャガーやビッグマンティスなどがいるのだが、ハーレム要因の彼女達はその中でも巨体を誇り生命力の高いトレントの相手が苦手であることが判明した。
何せフェンはスピードはあるが力は低く、カーリウスとアピスは攻撃力よりも毒による攻撃を得意としていて、トレントに毒は効きづらい。コイトゥスの暗黒魔法は普通にダメージが通るものの、彼女はいざというときの回復役だ、そう景気良く魔法をばら蒔いていいわけではない。
一応俺の火力なら簡単にトレントを倒すことができるが、トレントを俺だけで対処するのは正直手間である。
「確かにそうですね。同サイズ、毒が効く相手なら私達でも十分対処できますが、トレントのような相手では力不足を実感します」
「単純に力が強いタイプと魔法専門の者が欲しいですわ」
「私は回復用に魔力を温存しなくてはいけませんし……………………」
「……………………このままだと御主人様の負担が大きすぎる」
皆同意見か。パワータイプと魔法タイプのハーレム要因か。ふむ。
パワータイプと言われて真っ先に思い浮かぶのはドワーフなんだけど、コロナは性格的に戦闘には向いてなさそうだし……………………。一応聞くだけ聞いてみるか。
他には……………………、ドラゴニュートとか?
素材がない以上サキュバスみたいにエナジーのみでの作成になるけど作れるかな?難易度がすごく高そうだ。レベル上げが必須だろうな。
魔法タイプはどうだ?ヴァンパイア、エルフ、ダークエルフ、妖精etc……………………。
結構出てくるけど初っぱなのヴァンパイアは日の下での活動が出来ないか制限がつくのは必須だろうな。ダークエルフはいるけどまだ屈服させてないために配下には数えられていない。他は……………………、素材抜きでの作成でいけるか?
戻ったら試してみるか。獣人系でも何か無いか試してみよう。ブラックジャガーから試してみるか。パワータイプは無理そうだけど。
「そうだな、今日はもう少し進んでから戻るとしよう」
森の第2階層の探索を切り上げて拠点に戻った俺はまず自身のレベル上げを行うことにした。これで俺のレベルも36、36かぁ。まずい、このままじゃフェン達に抜かれるぞ。というかウィクトリアにはすでに抜かれてるし。
く、主としての立場が!ただでさえステータスでは下回りっぱなしだっていうのに!
これは俺のレベル上げを急ぐ必要が出てきたな。進化したテラ達を連れてタイターンマラソンで大幅なエナジー補充を行う必要があるかもしれん。
タイターンが相手ならアビリティの成長も促進されるだろうしな。
うん、そうしよう。
はぁ、やることが一杯だな。
「それで、フェンが欲しいアビリティは気配察知と魔力察知だったか?」
「はい。私の戦闘スタイル上敵の懐に潜るので、周囲の状況を確認するための察知系のアビリティを多目に持っておきたいんです。
ふむ、それに敵を察知するアビリティは多いに越したことがないか。多ければ多いほど敵を取りこぼすことも無くなるんだからな。
フェンのアビリティ総数は6。まだまだ余裕もある。
フェンのステータスを開いて新たに取得できるアビリティを確認し、彼女が望む気配察知と魔力察知のアビリティを取得させる。
「ありがとうございます」
自身が新しいアビリティを得たことを感じたのか、フェンが片膝を突いて頭を垂れる。
「気にするな。たまにはわがままの1つや2つ出してくれた方が俺も嬉しいからな」
そう言ってフェンを立たせた俺はカーリウスへと顔を向けた。
「カーリウスは何か欲しいアビリティはあるか?」
「……………………魔物学のアビリティを、できるならば兄弟達全員に」
「ちょっとカーリウス、いくらなんでも図々しいのではなくて!?」
「……………………確かに図々しいかもしれない。でも私達兄弟の役割は斥候、魔物学は任を全うするのにはどうしても必要なアビリティ」
片膝を突いて畏まりなが要望を告げるカーリウスのその内容にアピスが声を荒げた。そりゃそうだろうな、カーリウスだけでなくその兄弟達全員となればかなりのエナジーを消費する上に、1度の操作で全員にポン、と取得させることができるわけではないのだ。
けど、カーリウスが言うことも最もだ。これは彼女達を作るときに覚えさせなかった俺のミスだ。
「アピス、いい」
俺が一声かけると渋々といった様子で下がった。
「わかった、カーリウスの言葉は最もだ。が、とりあえず今はお前だけにアビリティを取得させる。今お前の兄弟達は外に出払ってるからな。戻ってきたやつから順に取得させていこう」
「……………………お手間を取らせてしまい、申し訳ありません」
「お前が気にするようなことじゃない
さて、次はアピスだな」
「は、では私は指揮系統のアビリティを得たいと思っています」
「指揮、か」
「はい、私の眷属達を効率的に扱うには必要な技能だと思っています」
「確かに、大雀蜂達はすごい勢いで増えてるんだったな」
後ろにさがったカーリウスと入れ替わりに前に出てきたアピスの要望を聞いて、彼女が巣を造った部屋を思い出した。
広いはずの空間は天井、床から生えるように造られた蜜蝋の巣によりかなり圧迫間を覚える空間に成り代わり、その増えた表面積を覆い尽くす無数の蜂、蜂、蜂……………………。
思い出した光景におぞけが走った。あれは精神の健康上思い出していいものじゃないな。
だが確かにあの数を制御するとなると指揮系統のアビリティは必要か。
「……………………わかった、指揮系統のアビリティだな」
調べてみるとそれはすぐに見つかった。アビリティ名はそもまま指揮だ。
「ありがとうございます、御主人様」
「ん、次はコイトゥスか……………………」
「いえ、ご主人様。私は今のところ望むアビリティはありませんのでまたの機会にでもよろしいでしょうか?」
「それは別に構わないが、いいのか?」
「はい」
「そうか、無理強いしても意味がないしな
よし、今回はこれで終了だな。各自好きにしてくれ」
解散を宣言すると彼女達は玉座の間からで出ていった。一人残らず……………………。
いや、わかってるんだよ。半日以上森の第2階層にいたんだから汗やらなんやらをかいていて、それの臭いとかを俺に嗅がれたりしたくないのだろう。でもやっぱり少しさびしいか。
それはまぁいいか。とりあえず今できることをしないとな。
「コールアンデット、スケルトンウォーリア」
死霊魔術用に持ち歩いている骨を取りだしてスケルトンウォーリアを召喚する。
召喚されたのは手に槍を持つ女性骨格のスケルトンウォーリアだ。
スケルトンウォーリアをその場に待機させて森で手にいれたブラックジャガーの死体を持たせそれらを素材に配下作成を行った。
いつもと変わらぬ光の柱。それが収まった時その場に立っていたのは褐色に肌に漆黒の髪としなやかな四肢を持つ女性だった。胸は大きすぎず小さすぎず美乳。腰の辺りからは猫科の動物特有の細長い尾を持ち、黒髪の合間からは僅かに丸みを帯びた三角形の耳が生えていた。
俺の姿を確認し土下座をするように畏まる彼女の種族はワージャガー。コールアンデットで召喚したスケルトンウォーリアが素材として使用できるかはちょっとした実験のつもりだったんだけど、成功してよかったな。
彼女については少し失敗だったけど。失敗の理由?今俺が欲しているのが力の強い配下なのに対して、彼女の力はCランク。フェンと同等の力しかないんだよ。
望む能力を持ってないからって蔑ろにするつもりは無いけどね。
「俺がお前の主の黄麻大地だ」
「大地様、全霊をもって支えさせていただきます」
「ん」
さて、彼女のアビリティを整えるに当たって、欲しいアビリティが無いか確認しておくか。
てかすでに結構あるな。剣術、槍術、舞術、呪術に隠密か。呪術とか初めて見たな。とりあえず何を覚えさせるか、とりあえず気配察知は覚えさせておこう。
今後も察知系は最低1つ覚えさせることにしよう。
「さて、お前のアビリティについてだけど、何か覚えたいアビリティはあるか?」
異次元ポケットの中から外套を取りだし、それをワージャガーの女に被せてやりながら尋ねると、彼女はバネ仕掛け玩具のような勢いで顔を跳ね上げて驚きに表情で見上げてきた。
「ん、どうした?」
「あ、し、失礼しました!
まさか、アビリティをボクに決めさせてもらえるとは思っても見なかったので……………………」
「そういうことか。まぁ要望を全て叶えることができる訳じゃないが、ある程度ならな。
それで覚えたいアビリティはあるのか?」
「あ、申し訳ございません!
で、では投擲もアビリティを……………………」
再度尋ねると彼女は再び顔を伏せて畏まりながら、恐る恐るといった様子で要望を口にした。
投擲か……………………、投げ槍でもするのか?
「わかった、投擲だな」
ん?投擲はあるけど、これは、吹き矢?面白いアビリティがあるな。これも取得させるか。そうだな、あとは隠密もつけてやろう。
イメージとしては南米の原住民だな。ついでだし弓術も取得させちまえ。
さて、仕上げだな。
「スキル『配下命名』テスカ」
「あ……………………」
「お前の働きに期待しているぞ」
「……………………はい」
名前を付けられ再度驚きの表情を浮かべて顔を上げたワージャガーの女、テスカの前に屈もこんで優しく顎を撫でてやると、彼女は頬を赤く染めて消え入るような声で短く返事を返した。
拠点の中で物理的にも精神的にも最も熱気に包まれた場所、それは工房だ。
熱された金属が金床の上で金槌の打たれる音と、金属を熱するための超高温の炉から発せられる熱気。そしてそれらを扱う鍛冶師達が声を上げそれぞれの仕事をこなしている光景に、テスカは呆然とした様子で見いっていた。
「こ、ここは……………………」
「工房だ。お前の武器、防具を見繕わなきゃいけないからな」
「あ、御館様」
できた品物をしまいにいった帰りなのか、手ぶらで歩いていた女ドワーフが俺たちに気付き慌てたように声を上げて駆け寄ってきた。
「お出迎えもせずに申し訳ございません。本日はどのようなご用件でしょうか」
「彼女の装備をな。頼めるか?」
「はい、喜んでお請けさせていただきます」
「テスカ、このドワーフに着いていけ。妥協なんて一切せずに納得のいくものを用意してもらえ」
「はい」
外套を羽織っただけのテスカが女ドワーフに連れていかれるのを見送ったが、彼女達が終わるまでには大分時間がかかるだろう。その間どうしてようか。こもまま置いていくのもなんだしなぁ。
「おぉ、主、いいところに……………………。
丁度探しに行こうと思っていたところだぞ」
そう声をかけられて振り替えれば、イグニフェルが数人のドワーフを連れて近寄って来るところだった。
「よぉイグニフェル、仕事の調子はどうだ?」
「順調だ、今も面白いものが出来たところだ」
「こちらです」
後を着いてきていたドワーフの1人が駆け寄ってきて持っていた物を差し出してきた。
「これは、クロスボウ?」
「うむ、この前市場で弩についての本を見つけてな。それで作ってみたのだ」
差し出されたクロスボウを手に取り見てみると、本体の下部には次矢を装填する部分があり、最高で4発まで連射ができるようになっていた。
「ていきなり連射式の造ったのかよ、普通単発式の作ってからじゃないか?」
「無論作っている。これがそうだ」
もう1人のドワーフが手にしていた物を見せてもらうと、確かにそちらは単発式だった。
「しかもこれ、連射式の方で箱が付いてるとこにでかい杭が付いてるし、もしかしてパイルバンカー!?」
「連射式より単純な構造ゆえ耐久度も高くてな、連射ができない代わりに近接用の補助武装を付けてみた。調合さえできれば火薬を使用したかったのだが、今だ材料もなく断念した。
その代わり内部には弾性の低い硬いバネと弓部分も蜜蝋で硬化した木材と金属の複合式にしてあるから威力は高いぞ。一度使用すると再使用すのに相当力がいるがな」
「しかもこれ、アピスとその姉妹が使うことを前提にしてないか?
グリップの溝と杭にある螺旋状の溝って毒を流すためのだろ」
「その通りだ。それとも杭の溝は2種類あってな、片方は確かに毒液用だがもう片方は杭を回転させて貫通力を高めるためのものだ」
貫通力を高めた毒の杭撃ち機とか凶悪すぎる代物だなぁおい。
「蜂人の娘達に聞いたが、やはり普通の弓矢では両手が塞がりいざというときに武器も交換に手間がかかるという話だったのでな。これなら片手で扱えるのでいいだろうと思ったのだ」
確かに、アピスもその手間が嫌で弓はほとんど使ってないんだよな。
「こいつらはまだまだ改良の余地がある。ドワーフ達に専門のチームを作らせようと思っているにだがいいか?」
「わかった。工房に関してはお前に一任してるんだし、そこら辺は好きにしろ。必要ならドワーフの増員もするが?」
「よろしくお願いしたい」
「わかった。こいつらを使うかどうかは本人達に決めさせよう。それと毒液併用以外のも作っておいてくれ。毒が効かない相手用にもっtp威力が高いものがほしいし、リビングメイル達にも持たせてみたい」
「了解した」
思わぬところで戦力の向上が行えたか。
うん、ステラの方が終わったらマザープラントの方にも行ってみるか。
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名前:テスカ
性別:女
レベル:1
種族:ワージャガー
クラス:戦士
属性:闇
生命力:D
力:C
魔力:C
素早さ:B
運:C
アビリティ
剣術LV6・槍術LV6・弓術LV6・吹き矢LV6・舞術LV6・投擲LV6・呪術LV6・軽業LV6・隠密LV6・気配察知LV6
スキル
・呪踊
装備
武器1:鋼の手槍
武器2:鋼のショーテル
武器3:鋼のショーテル
武器4:コンボジットボウ
:矢
武器5:吹き矢
防具1:毛皮の胸覆い
防具2:毛皮のスカート
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