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探索再開

「う、うぅ………………、こ、ころ、せ……………………」


 あら、まだ意識があるのか。最初の3日は(自主規制)が終われば気を失っていたのに、これも調教のアビリティを取った影響なのかね。


 息も絶え絶えの状態でベッドに横たわるダークエルフに感心しながら、しかし彼女の台詞に呆れた表情を見せる俺。


 だってねぇ、ここで殺したりするならわざわざ手間かけて殺すわけがないでしょうに。そう思いながら視線を向ける先にあるのは黒革の首輪。はめた相手の魔法と自殺を封じることのできる、奴隷用としては安物の首輪だ。なんせ高い奴なら自殺どころか体の自由を奪って自在に操ることだってできるんだからすごい話だ。

 俺としては自殺と魔法さえ封じてくれるならそれだけでありがたいんだけどね。


「そんな姿で凄んで見せても逆効果だぞ」


「ひぅんっ……………………!」


 睨み付けてくるダークエルフの胸の先を摘まんでやると、彼女は可愛らしい悲鳴を上げながら身体を弓なりに跳ねさせる。


「ね、ねぇ、さん……………………」


 あ、もう1人の方も起きてたか。


 ダークエルフの集落を襲撃してから5日。そろそろ森の道も完成する頃、俺は例のダークエルフの調教の真っ只中だった。いやしかし、今まではフェンを初め従順な娘ばかりだったけど、このダークエルフ達みたいに反抗的な娘って言うのもやっぱりいいね。特に組伏しているときの征服感とか。

 おかげでここのところハッスルしすぎてフェンはおろかコイトゥスにまでひかれる始末だ。お前達にはこんなことしないんだからひくこと無いのに。


 そうそう、ダークエルフといえばこの二人どうやら姉妹らしい。よく見てみれば目元もよく似ている。どちらも銀色の髪を長く伸ばし切れ長の鋭い眼差しをしている。


 目元だけでなく全体的な顔の作りも似てるか。森に出てくる連中は種族ごとで大体顔が似ているものだが、彼女達は一際そっくりなような気がする。


 ただ悲しいかな、二人には決定的な違いがある。


 方やメロンとでも呼ぶべき物を持っているのに対し、もう片方のそれは生板と呼ぶべき物しか持っていないと言う事実。姉妹を重ねたときはまさしく調理場にて生板の上にメロンを2つ並べた気分になりました。


 ちなみに前者が妹で後者が姉だ。世の中とは無情なものである。


 ま、俺としてはどっちもありなんだけどね。


「主様、よろしいですか?」


「ん、どうした?」


 先に起きて身体を動かしにいっていたフェンが寝室に戻ってきた。弄んでいたものを手放して彼女に向き直り、渡されたタオルで身体を拭う。


「森の道が完成したと報告が。テラ達も全員帰還しました」


 目を閉じてステータス画面を確認して見ると、エナジーの量がガッツリと増えていた。木々の伐採中にかなりたくさんの魔物が襲ってきたんだろうな。


「わかった。テラ達に今日、明日は疲れを癒すように伝えろ。

 明後日からはレザーリビングメイル達を連れて第2階層の探索に入らせるからな。隠密隊の半分は第1階層に向かわせろ。第2階層が解放されたことでどう変化があるかを調べさせるんだ。残りの半分はいつも通り蜂騎士隊、淫魔部隊とパーティーを組ませて第2階層の探索。アイアンリビングメイル達もテラ達同様疲れを癒してから精霊達と組ませて始まりのダンジョンだ。第2階層の夜営拠点の候補地が見つかるまで出来ることも限られるからな」


「は、そう伝えます」


 フェンが皆に連絡を伝えるために寝室を出ていくのを見送って、視線をダークエルフの姉妹に戻す。

 彼女達は力が入らないのだろう四肢に無理やり力を込めて立ち上がろうとしており、鋭い視線はこちらに向けられている。


 その姿に笑みを浮かべた俺は、パチン、と指をならした。するとベットの枕元から8本の鎖がじゃらじゃらと音を立てながら姿を現し、姉妹の身体を拘束していった。


「く、はな、せぇ……………………」


「ひぃん、どこにさわ、って、いる………………………!」


 リビングチェイン。言ってしまえばウィクトリアの同類だ。イグニフェルが鍛えた鎖を素材にし、これからも増えるだろうこの姉妹達のような奴隷を拘束し、自由を奪わせるために作り上げた魔物だ。全部で16本存在し、残りの半分はシャドウメイルと共にダンジョンに潜ってレベルを上げている。今後ステータスの高い娘を拘束させるためにも必要なことだ。


「さて、先に一風呂浴びておくか。後は任せたぞ」


 リビングチェインにそれだけ告げ、俺は浴場へと足を運ぶことにした。


 脱衣所にはすでにメイド達のてによって着替えとさらに鎧までもが用意されており、さらに3人のメイドが待機して待っていた。

 あれだ、よく小説とかであるお背中をお流ししますとかのあれだ。寝室でただ呟いただけなのにそれ聞き取って準備をしてくれている彼女達に感謝だな。

 拠点にいるメイドは皆かわいい容姿をしており、そんな彼女らに身体を洗ってもらうのは正直願ってもない話だけど、時には自分の手で洗いたい時だってあるし、そこまでする必要性を感じない時だってある。今回は後者の方だ。

 服を脱いで浴場へと向かう俺のあとにメイド達がついてこようとするが、それを片手で制して1人浴場へと入った。






 浴場で汗を流した俺はメイド達に手伝ってもらって鎧を装備し、玉座の間に向かった。

 玉座の間にはフェン、カーリウス、アピス、コイトゥスの4人がすでに待っており、玉座の前には鞘に納められたウィクトリアが立てられていた。


「またせたな」


「御主人様のためでしたら1日だろうと1月だろうとお待ちしますわ」


 どや顔で言い切るアピスに苦笑しながらウィクトリアを納めた鞘を背負い、俺の準備は完了する。


「それじゃ、森の第2階層の探索を始めるぞ」






 転送用の魔方陣を抜けた先にある小さな広場。

 先日は数体のトレントと戦闘を行ったが、今回は近くにその姿は無いようだ。


 フェン達が順に転送してくるのを待ってから移動を始める。


「今回はいかがしますか?」


「とりあえず西に行ってみよう。特に根拠は無いけど情報が無い以上どっちに行ってみても同じだからな」


 頷く彼女らから視線を正面に戻しカーリウスを先頭に森の中を進む。しばらくの間はこれといってなにも起こらなかったが、30分ほど進んだところで気配察知に反応があった。


「こいつは……………………」


「……………………トレントです。それと未確認の魔物もいます」


 俺と同じく気配察知を取得しているカーリウスが気付いた。

 彼女に頷くと、カーリウスは気配を殺して頭上へと飛び上がりそのまま枝を伝って気配のする方角へと偵察へ向かっていった。

 俺も敵の気配に動きが無いかを気配察知で意識しながらウィクトリアを抜き放った。フェン達もそれぞれの得物を手に周囲へよ注意を払っている。


「主様、よろしいでしょうか?」


「どうした?」


 カーリウスの帰りを待っているとこういうときには珍しくフェンが声をかけてきた。


「こんなときに言うのも申し訳ありませんが、拠点に戻ったら私にも気配察知と魔力察知を覚えさせて頂けないでしょうか?」


 アビリティのおねだりか。今のところ何かが欲しいと言ってきたのはアピスが眷属を育てる巣を作る部屋が欲しいと言ってきたもののみだ。


 しかしアビリティか。アビリティはいつも俺が俺がイメージとかで揃えてたけど、彼女達にも自分の考え趣向もあるんだし、今後は覚えたいアビリティを聞いたりするのもいいか。


「わかった、戻ったらそれらを取得させよう。アピス達も欲しいアビリティがあるようなら後で聞いてやるから考えておけ。

 全部叶えられるとは限らないがな。まぁ、よっぽど変なアビリティ出もなければ大丈夫だから気兼ねなく言えばいい」


 戻ったらテラ達にも聞いてみようか。ただ配下全員の望みを聞いてたら切りがないし、とりあえず命名済みの奴ら限定だな。場合によっては受け付けるかもだけど。


 と、そこにカーリウスが戻ってきた。


「……………………ただいま、戻りました」


「ご苦労様、でどうだった?」


「トレントが2、頭部に花を咲かせた人形が4。合計6体の魔物を確認しました」


「頭部に花を咲かせた人形、ね。さて、正体が何かは実際に見てみないとわからないか」


 カーリウスにも拠点に戻ったらアビリティについての要望を聞くことを伝え、俺達は魔物を狩るために静かに移動を開始する。風下に回り込むために森の中を迂回して行き、俺達は件の魔物を視界に納めた。


「食人花、か」


 そこにいたのは頭部に花を咲かせた全裸の美女だった。ただし俺の持つアビリティがその正体を告げてきたことでひきつった笑みを浮かべることになる。

 何せ相手は食人花の名前の通り人を食らう魔物だ。それもその美しい容姿に惹かれてきた男を身体の各所にある複数の口で噛みつき生きたまま補食するという恐ろしくおぞましい生態を持っている植物系モンスター。人形に見えるところは全てが根であり口、男女がアレしてアレするようなところも全部口であり、鋭く硬い歯がずらりと幾重にも並んでいるらしい。

 本当に恐ろしい。


「生け捕りますの?」


「却下」


 コイトゥスの質問を即座に却下すると、皆から驚きの表情を向けられた。く、これが日頃の行いというわけか。


「アレは却下、確かに見目はいいけど中身はとんでもない魔物だから。見た目女でもあれに性別無いから」


 とりあえず納得といった表情を浮かべるフェン達。彼女達は俺の台詞のどの部分に納得したのだろうか。ちょっと怖くて聞けなかった。


「とにかくやるぞ」


 皆が頷きコイトゥスが呪文の詠唱に入った。俺は暗黒魔法も精神魔法も持っていないので、彼女がなんのどんな魔法を準備しているのかはわからない。

 ウィクトリアを握りしめると補助魔法が発動され全身に力がみなぎってくる。


「ダークレイン」


 コイトゥスの魔法が発動された。雨のように漆黒の闇の雫がトレントを中心に降り注ぎ耳障りな悲鳴が響き渡った。


 闇色の雨がスコールのように降り注いだのは僅かな時間だった。しかしそんな僅かな時間でもその魔法は大きな効果を発揮した。トレントも食人花も全身を闇に焼かれのたうち回っている。


「いくぞ!」


 俺の言葉と皆が飛び出すのはどちらが先だったのかは不明だ、だが最初に敵の下に到達したのはアピスだった。


 彼女の死毒のスティレットが頭部の花に突き刺され、そのまま花の根本に死毒のレイピアが走り切り取られ、スティレットに刺したまま上空へと飛んで行き根は動きを止める。


 カーリウスは食人花の背後に回り込み、手にした得物を突き刺してそれを足場に身体の上をかけ上って行く。身体の上を走られた事に怒ったのか身体中の口を開いて彼女に噛みつこうとするが、それよりも速く頭部の花を切り飛ばしていた。


 花を切り飛ばされて動きを止める食人花達。彼女達の予想通りあの花が弱点のようだ。


 トレントの元まで辿り着いたフェンが棍を振るう。自身目掛けて降り下ろされた枝を剃らし、地面に叩きつけられた枝の上に飛び乗り駆け登ってゆく。自身の身体を駆け上る彼女を振り落とそうもう片方の枝も振るわれるが、それは跳躍することで飛び越え、跳躍の勢いのままに身体を捻り回転させて鋭い就撃をトレントに見舞う。


「分かってはいたけど、あまり利いてないわね」


 悔しそうに溢すフェンが地面に着地し、着地する瞬間を狙った攻撃を即座に後退して避ける。


「ダークボール」


 コイトゥスの支援が飛ぶ。執拗にフェンへと攻撃を繰り返そうとするトレントに暗黒魔法が着弾してその身体を大きく揺らした。


 と、一連の出来事がなぜわかるかって?一番最初に飛び出したのにまだ接敵できてないからだよ!


「だっ!」


 エクストラアビリティ、重力操作で俺にかかっている重力を一気に減らして跳躍する。ジャンプのアビリティと相まってそれだけでトレントの頭上まで跳躍することに成功する。真下へと重力を操作して急降下。超振動を発動させて破壊力の増したウィクトリアをトレントに叩き込んだ。


 フェンへと意識を向けていたトレントにそれを防御することはできず、無防備に攻撃を受けることとなった。

 ダメージを受けていたとはいえタイターンすら屠った一撃をトレントに耐えられるわけもなく、トレントはその一撃でその身を光の粒子に変えて霧散した。


「主様!」


 もう一匹のトレントが攻撃を仕掛けてくるのとフェンが警告したのはほぼ同時だった。地面を転がった俺のすぐ横にトレントの太い枝が叩き付けられた。


 立ち上がると同時にウィクトリアを包むように暴風が巻き起こる。切っ先を枝へ受けるとそれは小さな竜巻となって枝を撃ち抜き揺らした。


 トレントから距離を取りながら周囲を見回せばカーリウスとアピスはすでに食人花を片付けており、残るは目の前のトレントのみとなっていた。


「よし、一気に仕留めるぞ!」





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