部屋
爽やかな目覚めだ。
ハーレムが増えた翌朝は毎回こう言ってる気がするが気にしない。
「お目覚めですか、御主人様?」
そう問いかけてくるのは俺の右腕に抱きついて眠っていたコイトゥスだ。シーツの下でごそごそと身体を動かすと上半身を俺の胸の上に乗せてきた。形のいい乳が互いの胸に挟まれ卑猥に歪む。
「あぁ、今目が覚めた」
コイトゥスはさすがにサキュバスーーー淫魔なだけあって、フェン達のように動けなくなるようなことはなかった。ただし昨晩先に潰れたのは彼女の方だったがな!
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
自由になった右手で頭を撫でてやっていると、反対側でもシーツが動き出した。
「ある、じ、さま?」
「おはよう、フェン。身体の方は大丈夫か?」
昨晩コイトゥスと一緒に相手をしたフェンが、普段の彼女からは想像できない気だるそうな様子で俺を見上げ、そして抱いていた俺の左手に力なく頭を乗せた。
「少し、身体が重いような気がします
カーリウスとアピスがいなくてよかったです。2人がいたらまた動けなくなってたと思いますから」
「ははは、ここ3日は森にこもってやってなかったからな。溜まってたんだよ」
さすがに魔物が跋扈する場所で(自主規制)するわけにもいかないからな。屋外だしそれはそれで燃えるんだが、少なくとも今のレベルでは止めるべきだろう。
「フェンは今日のところは休め。いくら生き返れるからって身体に違和感があるのがわかっててダンジョンに出るべきじゃない」
「はい、申し訳ありません」
「御主人様、私は御一緒させていただきますわよ?」
「当然だろ、お前にはレベルを上げてもらわなきゃいけないだんだからな」
エナジーが溜まったらサキュバスも量産しなきゃな。今のところ唯一の治癒魔法取得可能な配下だし。ただ問題は食事だよなぁ。サキュバスが普通に食い物食えるのは昨晩聞いたけど、あまり効率良くないらしいし。一番は男の精だって言ってたんだよな。
サキュバス増やすとき市場で男の奴隷でも買ってくるか。サキュバスの食事用に。ただ買う相手はしっかりと厳選しなきゃだな、反乱とか起こされても困るし。
子供を買ってしつけるか?
そこらへんのことはサキュバスを増やしてからでいいか。
増やすといえば部屋も用意しなきゃだな。カーリウスやアピスの兄弟の部屋。いや、一応フェン達にも個室を用意するべき?寝るのは俺の寝室だし必要ないかとか思ってたけど、やっぱいるかな、プライベート空間は。
テラ達やグランディア達は必要ないって言ってたんだけど。本人に聞けばいいか。
それに彼女たちには自由に市場に行くことを許可してお小遣いもあげてるんだった。このままじゃ買ったものをしまっておく場所がないな。
うん、やっぱり個室も作ろう。
本人に聞こうとか言っておきながら自己完結しちゃったよ。
しかし部屋を作るにしても空き空間は広いからな。森で木を切って仕切りを作るか。
戦力だけじゃなくバックスタッフの充実も課題だな。イグニフェルだって手が足りてる訳じゃないし、今回の件だって専用の人がほしいし。あとで市場で探してくるかな、素材になる死体。
ドワーフがいればこう言った大工仕事もイグニフェルの部下として鍛冶仕事も出来るしな。素材屋に売ってないかな?
あぁ、問題が山積みだ。
とりあえず朝食をとった俺はコイトゥスを連れて森に繰り出すことにした。エレメンタルナイツや精霊達は昨日のうちに森に出発させていたので、調度拠点に戻ってきたハードレザーリビングメイル一組をつれてだ。
まずハードレザーリビングメイルだが、確かに進化しただけの能力を持っていた。
進化前だったら直撃していたフォレストウルフやビッグベアの攻撃を盾で受け止めたり回避して反撃するようになっていた。全体的な能力が向上している証だろう。
コイトゥスはどうか。
彼女も強かった第3改装のフロアボス(名前忘れた)からドロップした背中が大きく開いたワインレッドのドレスを身に纏い、宙を滑るように舞いながら眼下の敵へと魔法を放つのが彼女の戦い方だ。
系統魔法も覚えられれば良かったんだけど、彼女無理だったんだよな。
日が大分傾くまで森に潜った俺は、ダンジョンに戻るとそのまま市場に向かうことにした。目的は勿論配下を作成するための素材だ。
中央広場にある魔方陣に転送された俺は、いつも変わらず魔方陣近くで読書をしていた大矢に一言挨拶をしてマテリアルストリートへと足を向けた。
「イラッシャイマセ」
マテリアルストリートの奥からさらに脇に入った場所にある店『屍屋』。やたらと達筆な筆遣いで書かれた看板を掲げた店の暖簾を潜った俺を出迎えてくれたのは、焦点の合わない白い瞳に青白い肌を持ったメイドだった。
「こんにちわ、前に来たときも思ったけど、全然客いないよね」
「ウリモノガウリモノデスカラ。コノミセヲゴリヨウシテクダサルカタハヒジョウニカギラレテイマス」
たどたどしい口調で話す彼女だが、実は彼女『エンシェントプリエステス・リッチ』なる超上位の魔物で、俺では手も足も出ないような相手なのだ。おそらく持てる戦力全てを用いて仕掛けても勝てないだろう。
そんな彼女が店長を勤めていると言うのだから、彼女の主である魔王候補生はいったいどれだけの実力者なのか。
「それもそうか
ドワーフの死体ってあるかなはてな?」
「ドワーフデスカ?ショウショウオマチヲ」
この店では商品の陳列は行っていないため、欲しい死体を告げて店の奥から品物を持って来て貰う形式になっている。まぁ誰も好き好んで死体がずらりと並ぶような店には入りたくないだろうし、時間はかかるがこれが正解なのだろう。
「オマタセシマシタ」
割合早く彼女は戻ってきた。自身大型のワゴンを押しながら、背後にも彼女と同じ格好をしてワゴンを押す、おそらくは彼女と同位または下位のリッチを従えて。
店内に並べられた死体は5つ。どれも傷ひとつない、まるで眠っているだけのような、今にも起き出してきそうなドワーフの死体だ。
「ゲンザイトウテンニアル、ドワーフノザイコハコレデスベテデス」
髭もじゃな男のドワーフが3体に、ロリな女ドワーフが2人かか。
死体の良し悪しなんて分からないからな、さてどうするか。
「ふむ、値段は変わらないのかな?」
「フツウノドワーフデスノデ、イチリツデ30000ニナリマス」
比較対照が無いから高いのか安いのか分からん。分からんけど、5体全部買っても十分に余裕があるし、全部買ってくか。
「了解、全部もらってくよ」
「オカイアゲアリガトウゴザイマス」
彼女から差し出される水晶に手を触れると、その水晶が淡い光を放つ。これで俺の金の中からドワーフの死体5体文の代金が振り込まれたことになる。財布を持ち歩く必要がないため非常に便利なこの機能、当然この店独自の機能と言うわけではなく市場のお店全店共通の昨日である。
ドワーフの死体を異次元ポケットにしまって店を出ると、外は夕日で赤く染まっていた。なんとなくその夕日を眺めながら、こんな風に夕日を眺めるのはいつ以来だったかと記憶を思い返す。
きっと相当昔だろうと明確な答えも出さずに昔を思い出すのを止める。このまま過去を思い出そうとしてもろくなことを思い出さないだろうから。
さて、拠点に戻ってきた俺はさっそくドワーフの死体を元に配下作成を行おうと思ったんだけど……………………。今日あまり森で狩ってなかったからなぁ。エナジーがあまり無い。とりあえず大工仕事専任のドワーフを作るか。
異次元ポケットにしまってあったドワーフの死体を玉座の間の床に置いてスキルを発動させる。
「スキル『配下作成』」
ドワーフの死体を中心に以下省略。
光の柱が消えた後、俺は後悔した。
「あんたがワシの主人か?」
「……………………あぁ、そうだ」
視線をそらしつつそう返せば畏まる気配を感じて再び顔を向ける。
俺の前に畏まるのは背は低いが筋骨隆々の男。いつかのイグニフェル同様に顔中を髪と髭に覆われたドワーフ。そしてこれもいつかのイグニフェル同様、フルチン!
見たくもないもの見ちまった。あぁくそ、全裸で出てくるのは女だけでいいのに。
グチグチと心の中で愚痴りながらメイドを呼んで服を取りに行かせてからアビリティを調える。といってもデフォルトで鍛冶が付いてるのな。とりあえず建築と伐採を取得させて、木工もとっておくか伐採をとるなら斧術もだな。ついでだ石工と細工も取得させちまえ。
メイドには至急と言っておいたためか、アビリティの取得を終えた頃には服が届き、身体は小さい癖して俺の自信に傷を付けてくれやがる物を見なくてすむようになる。
身なりを整えたドワーフの鋼の斧を与え、追加した空き空間に部屋を作るように命令する。1部屋の広さは空き空間の4分の1ほど。フェン、カーリウス、アピス、コイトゥスの部屋に予備の4部屋。他にもメイド達や、畑に隣接させて作った空き空間に雑魚寝させているゴブリンやコボルトの部屋を整えるようにも指示を出した。正直1人でこなすには無理がある無いような気もするがそこは仕方がない。エナジーが溜まり次第彼を元に複製するのでそれまで待ってもらいたい。
よし、とりあえずはこんなものか。
いやいや忘れるところだった。メイドに倉庫から骨を持って来て貰い、それを手にスキルを発動させる。
「スキル『クリエイトアンデット・バトルスケルトン』」
発動させたのは最近覚えた死霊魔法で1度でも見たことのあるアンデットを作成するというなかなかに強力な魔法だ。
今こいつを作成したのはドワーフが森に伐採にいく際の護衛として使うためだ。日の中では能力が半減するアンデットだが、森の中なら日の当たらない場所も多いのでそこまで痛手にはならないだろう。念のためもう2、3体作っておくか。
話のストックが切れました。
1度書き貯めてから投稿再開したいとおもいます




