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思わぬ問題

予約投稿の設定を間違えて1日あいてしまい、楽しみになさってくださっている方々にご迷惑をお掛け致しました

 さっぱりとした気分で目が覚めた。これだけさっぱりとした気分で起きることができたのはフェンと初めて(自主規制)した時以来だ。


「お目覚めですか、主様」


 声のした方へと視線を向けると、自らの腕で胸元を隠したフェンが上半身を起こしていた。


「おはよう、珍しいなもうお前が起きてるなんて」


「おはようございます。それは、まぁ………………」


 頬を赤く染め、苦笑しながら視線を向けた先にいるのは、いつかの彼女よろしく見るも無惨な姿で気絶するカーリウスとアピスの2人。


「私は慣れていますし、人数が増えたのでむしろ負担は減ったのですが。

 彼女達にとっては少し激しかったようです」


 人数が増えたのは俺の予想通り正解だったようだ。ただ2人については………………。慣れてもらうしかないか。


 仕切りの向こうに待機するメイドに2人の世話を任せて食堂で先に朝食をとる。その後は昨日と同じメンバーで森の探索だ。今日は東の方へと足を伸ばす予定だ。

 カーリウスとアピスはあの調子では今日一日あんな感じだろう。一緒に本格的に潜るのは明日からでもいいだろう。


 今日もフォレストヴァイパーと翠玉巨雀蜂の死骸を手にいれることができるといいんだけど。彼女達にも部下をつけてそれを率いるようになってもらう予定のため、その素材となる死骸は是非ともほしいのである。テラ達エレメンタルナイツのリビングメイル隊、グランディア達精霊部隊。いつの間にか増えていたゲル率いるパラライズスライム捕獲隊のように。

 フェン?彼女には狼娘メイド達をお願いしてます。フェンにはハーレムの纏め役をしてもらうつもりだしね。


 先日魔王の市で大矢からいろいろと話を聞いて、俺も先のことを考えるようになった。もとから配下を増やして戦力を増強してきたのだが、ここを卒業した後異世界に行ってもハーレムを維持していくには、今よりももっと多くの戦力が必要になってくるはずだ。


 それは個々の実力は勿論、あらゆる状況に対処できるようにただ戦力を上げるのではなく多方面へ力を伸ばすことが必要だと俺は考えている。そうして作られたのが隠密技能を持つ暗殺者であるカーリウスに空中での戦闘を行うことのできるアピスなのだ。


 これからはこういったさまざまな配下を増やしていくつもりでいる。


「そのためにはもっと色々と素材を集めることだな」


 魔物の素材はそのまま武具の材料にもなる。

 イグニフェルに回す分の素材も確保しなきゃいけないし……………………、転送用魔方陣周辺だけでもアイアンリビングメイルを回すか。フォレストヴァイパーと翠玉巨雀蜂の素材は特にたくさん欲しいしな。






 そんなわけでアイアンリビングメイルを森に出したのだが、どうやらそれは失敗だったようだ。正直奇襲受けすぎ。


 理由は簡単。一歩歩くだけでもガチャガチャと音を立てるのが原因だ。無機物だかえあ気配がない?熱源察知に引っ掛からない?それを見事に帳消しにして見せる欠点のようでした。

 同じアイアンリビングメイルのテラ達は名前持ちだからなのか、激しく動いてもあまり大きな音を立てないと言うのに。


 俺は大慌てでアイアンリビングメイルを拠点に呼び戻し、まだ進化を行っていなかったレザーリビングメイルを森の探索に行かせることにした。

 レザーリビングメイルなら動くときにガチャガチャと大きな音を立てることもないのでいいかと思ったのだが、まさしくその通りだった。正直ステータス的にアイアンリビングメイルと比べて低いことが心配なのだが、そこは彼らに頑張ってもらうしかないだろう。


「これからはアイアンリビングメイルとレザーリビングメイルの両方を活用していくべきかね」


「ソウデスネ、我々モアノヨウナ弱点ガアルトハ思イマセンデシタ」


 始まりのダンジョンじゃ奇襲なんてどちらからも無かったしなぁ。


 ビッグベアのドロップ品である毛皮を拾い、それを左右に引っ張ってみる。


「やっぱり同じ革鎧でも元の魔物が違えば防御力も変わるのかな?」


「ヤハリ変ワルノデハナイデショウカ?」


 ふむ、イグニフェルに色々と革鎧を作ってもらって、それを素材に進化させてみるか。進化するかどうかは不明だけど。試してみる価値はある、かな多分。


「竜革の鎧なんてあれば確実に進化できそうだよね」


「確カニソレナラ大幅ナ戦力ノ上昇ガ見込メルデショウ」


「タダ近クニドラゴンガイル様子モ無ク、イテモ今ノ我々デ倒セル相手デハナイダロウガナ」


 イグニースの言う通りだよな。今ドラゴンなんかが出てきても勝てるわけがない。


 いつかはドラゴンとかも配下にしてみたいけどね。ドラゴニュートならハーレムに欲しいし。


 と、今はそんなことを考えてる場合じゃないな。

 頭上を見上げるが見えるのは木々に生い茂る緑の天井、空は見えないし当然太陽の位置から現在の時刻を伺い知ることはできない。


「ヴィンディ」


「はい、ダイチ様」


 名を呼ばれたヴィンディが素早く枝を避けながら樹上へと飛んでいく。


「今日はどれくらい進めたのか?」


「距離だけはそこそこ稼いでいると思われますが、探索範囲としてはそう広くはないかと」


 地面に手を当てたグランディアが静かに首を振るい、そこにヴィンディが戻ってきてすでに日は西側へと大分傾いていることを告げる。

 森は始まりのダンジョンと比べて大分広いようだ。この調子では戦闘をせずにまっすぐに森を突っ切ったとしてもその日の内にダンジョンの端までたどり着けるかも怪しいだろう。


「こりゃ森を攻略するには各所に拠点を設置するなり日を跨いで探索する必要がありそうだ。

 今日は一度拠点にの戻ろう」


 これは本気でレザーリビングメイルの数が足りんかもしれないな……………………。






「御主人様!」


 拠点に帰還した俺を出迎えたの焦りを含んだアピスの呼び声だった。

 何事かと声のした方へ振り返るとアピスとその後ろにカーリウスが駆け寄って来るところだった。


「御主人様が後出立されていたと言うのに、付いて行くことはおろかお見送りすらできず、まこと申し訳ありません」


「……………………申し訳ありません、御主人様」


 なんだ、そんなことか。何かあったのかと思った。


 俺のすぐそばに片膝を突いて床に額を突けるほど頭を下げる2人に対して俺が思ったのはその程度だった。


「気にするようなことじゃない。俺が加減を間違えたのが原因なんだからな」


「で、ですが………………」


 どうもなんのお咎めもなしというのでは、2人とも自身を許せないらしい。といっても俺に2人を罰するつもりも無いんだが………………。


 けして顔を上げようとしない2人にどうしたものかと天井を見上げる。


 何か罰の名目で仕事をさせるか。2人にさせられる仕事、仕事。情報収集に戦闘、か。


 運が良いことにフォレストヴァイパーも翠玉巨雀蜂も死骸が手に入ってるし、一足先に部下を作って森の探索をさせるか。


「よし、フェン、イグニフェルのところに行って鋼の細剣を5本、なければあるだけと、鋼のダガーも5本玉座の間に持ってきてくれ」


「はい、かしこまりました主様」


 さらに近くにいた狼娘メイドに革の鎧と衣服を10組、玉座の間に運ぶように指示してカーリウスとアピスをつれて俺は一足先に玉座の間に移動し、まずはフォレストヴァイパーの死骸を取り出して配下作成の準備を行う。


「スキル『配下作成』」


 昨日の戦闘で2人が有用であることはわかったが、命名を行った彼女達に配下複製を使用することはできない。ならそのまま彼女達と同じように作るのかと問われれば、それも否定せざるをえない。なぜならコストがかかりすぎるからだ。


 何せ彼女らの作成には大量のエナジーに素材を注ぎ込み、アビリティを整えて命名まで行っているのだ。今後複製することを考えればまず名前はつけられない。アビリティは仕方ないとして、削れるところは削るべきだ。故に多少のスペックダウンは覚悟の上で作成時の素材とエナジーを削ることで複製時のエナジー消費を少なくするべきだろう。なにせこの先、特に卒業後は異世界に行くことになるだろうし、そこで少数精鋭だけでやっていけるとは思っていない。必ず数が必要になってくるはずだ。その時のためにも量産しやすい配下を用意しておく必要があるのだ。


 そんな考えの下に行われた配下作成、なのだが………………。


 あれぇ?


「初めまして、御主人様」


 光の柱が消え去ったあとそこにいたのは、カーリウスよく似た顔をした……………………、少年だった。


 なんですと?


「あ、あぁ。俺がお前の主の黄麻大地だ」


 ステータスを確認してみるが、間違いなく蛇人だ。

 もしかして、使用したフォレストヴァイパーの死骸、あれ雄のものだったのか?蛇の雌雄の見分け方何て知らないから調べずに使ったんだけど……………………。あと二つあるし試してみるか。


 とりあえず蛇人の少年を下がらせて再びフォレストヴァイパーの死骸を用いて配下作成を行った。


 結果1つ目のフォレストヴァイパーの死骸からは少年が、2つ目からは少女の蛇人が誕生した。どちらも素材として使う際に死骸を調べてみたのだが雄雌の判断は全く付かなかった。


 仕方がないのでアビリティを整えて配下複製を行うことにした。


 俺から放出されたエナジーが蛇人の少年に注ぎ込まれ、その足元に発現した魔方陣へ吸い込まれて行く。そしてそのすぐとなりに現れた魔方陣からエナジーが溢れだし光の柱が立ち上がり、それが収まった後にはもう一人の蛇人の少年が立っていた。


 配下複製は成功。その後に少女の方も複製したところでようやく狼娘メイドが服や革鎧を持ってきた。それを彼らに装備させるのが終わるのと同時に今度はフェンが武器を手に玉座の間に到着する。


「主様、鋼の細剣と鋼のダガーです。

 鋼の細剣はドロップした数が少ないらしく、イグニフェル殿の下にあったのはこの4本だけでした」


「あるだけ十分だ。

 よし、スキル『配下作成』」


 翠玉巨雀蜂の死骸を素材にした配下作成。それによって作り出されるのはアピスと同じエメラルドの髪と複眼を持つ少女だった。


「初めまして、御主人様」


「よし、俺がお前の主である黄麻大地だ」


 もうお決まりの台詞となった自己紹介を行い、片膝を突いて頭を垂れる少女のアビリティを整えて直ぐ様次のスキルを発動させる。


「スキル『配下複製』」


 少女の周囲に描かれる3つの魔方陣。光が収まりそこに立つのは、少女と似通った容姿を持つ3人の少女達。一斉に練習でもしたかのようにタイミングを合わせて片膝をつく姿に苦笑しながら、狼娘メイドに目配せして服と革鎧、そして鋼の細剣を配らせる。


 少女達がそれを装備し終えるのを待ってから、俺はカーリウスとアピスに向き直った。


「まずカーリウス、お前は兄弟達を率いて森の探索を行え。転送用魔方陣から四方、東西南北に夜営用に拠点として使えそうな場所を探し出すことと、森の第1階層に出現する魔物の種類の調査。さらに先日のゴブリン達のような集落を探し出せ」


「はっ……………………!

 ……………………集落を見つけた場合、襲撃し壊滅させればよろしいでしょうか?」


「いや、集落を見つけても襲撃はするな。集落が先日同様ゴブリンやレッドキャップのものだった場合は奴等の行動を出来る限りの観察して情報を収集し、後にアピスに連絡を行え

 集落がゴブリン以外のもの立った場合は情報を収集しつつ報告しろ」


「はっ……………………!」


「アピス、お前はカーリウスから連絡があり次第、姉妹を率いて連絡にあった集落を強襲しこれを殲滅させろ。

 連絡がない場合は転送用魔方陣周辺の魔物を狩れ。レザーリビングメイルとも連絡をとりあい狩り尽くすつもりで狩ってこい」


「かしこまりました」


「よし、じゃぁ行ってこい」


「「はっ!」」


 俺の言葉に駆け足で玉座の間を後にする2人を見送り、俺は盛大に溜め息をはいた。


「お疲れ様です、主様」


「おぅ………………。

 正直今回の件は2人が気にすることじゃ無いんだけどな……………………」


 玉座に腰かけてフェンに手を伸ばせば彼女は意を察して俺の膝の上に横座りになって身体を預けてくれる。


「今の彼女達では二日続けては身体に障ると思いますので、これで良かったのでは?」


「予定を前倒しにしただけだからな。後は手の足りないレザーリビングメイルをどうするかだ……………………」


 気が付いてみれば戦力向上のために進化を行い続けてアイアンリビングメイルの方がレザーリビングメイルよりも多くなってしまっていた。


「夜営用の拠点を設置した後はアイアンリビングメイルに警護をさせてはどうでしょうか?

 彼らが奇襲を受けるのは、動き回る際に音が鳴るのが原因。警護なら探索時ほど奇襲を受けることも無いと思いますので」


「それなら多少は人手不足も解消できるか……………………。

 けどそれでも人手が足りないことには変わりないし、レザーリビングメイルの実力不足もなぁ」


 問題は山積みだ。


 ダンジョン1つ開放するだけでこれだけの問題が出るのか……………………。

 最初の予定ではエナジーに余裕ができしだい開放していくはずだったんだけど、行きなり頓挫か。


 これらの問題を一気に解決する手段がない以上、1つ1つ対処していくしかないわけで……………………。


 ままならないものだ。


 フェンの身体を抱き締め、ほんのりと香る香りを楽しみながら一時考えるのを放棄した。




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