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単眼の鍛冶師

「ん?」


 タイターンを撃破し、魔王育成プログラムが次の段階へ進んだことを聞いた翌々日。


 先日は丸々フェンと(自主規制)して過ごし、今は寝室のベッドの上で生まれたままの姿で眠るフェンを抱き寄せながら、タイターンからドロップした魔物辞典を読んでいるところだった。


 辞典には始まりのダンジョンの第4階層で戦ったギガースを始め、オーガやトロールといった比較的小さな(とうっても全長3mはあるが)ものから、全長1km以上という巨体を誇るバハムートなど様々な魔物が記載され、さらにはそれらの魔物を仲間に加えたり、作成するのに最適な 方法などが載せられていた。


 そんな中に一際俺の目を捉えて離さない存在がそこには記載されていた。それは俺が現在特に欲しいと思っているアビリティを持つ魔物だった。


 俺はその魔物のページを端か端まで余すことなく目を通し、再度作成するのに最適な素材が書かれているヵ所を凝視していた。


「これとこれはあったはずだな。巨大な眼球、これは無いな。

 幾つか無いものもあるけど、うまくいけば作れそうだな」


 寝室の仕切りの向こうに控えていた狼娘メイドに必要なものを玉座の間に用意しておくように言い付けて、魔物辞典をサイドテーブルの上に放り投げる。望んだ場所に乗ったことを確認して大きな枕にもたれていた背をずるずると滑らし布団の中へと入って行く。起きるのはもう少しフェンを堪能してからにしてもバチは当たらんはずだ。


 俺に体を寄せるフェンを抱き締めて、彼女が目を覚ますまで惰眠を貪ることにした。






「スキル『配下作成』」


 体内からガッツリと放出されてゆくエナジーを知覚する。放出されるエナジーの量はアロスを作った時ほどではないが、それでもかなりの量が持っていかれた。


 目の前に描かれ巨大な魔方陣とその上に並ぶ素材。その素材へと大量にエナジーが注ぎ込まれてゆく。


 そして目の前に立ち上る光の柱。もう見慣れた光景だ。


 光の柱が消え去りまず俺に目に入ったのは……………………。


 俺の自信を粉々に打ち砕く光景だった。いや、種族的に大きくなるのは分かるんだが、男としては………


「貴方が俺の主か?」


 低く太い声が頭上から降り注ぐ。片膝を付いて畏まってなお見上げなくては目を合わせることの出来ない巨体。顔全体を覆うように伸びた髪と髭の合間から大きな単眼。俺の胴回りと同じくらいに太い四肢が支える身体も分厚い筋肉に覆われた大男、いや巨人。


「そうだ、俺がお前の主の黄麻大地だ」


 単眼の巨人の問に応えると、俺は目を閉じて彼のステータスを確認し手早くアビリティを整えてゆく。


「スキル『配下命名』イグニフェル。お前には俺の下で存分にその腕を振るってもらうぞ」


「名を与えられしことに最大の感謝を。我が全霊を持って最高の武具鍛え上げて見せよう」


 単眼の巨人、キュクロプスことイグニフェルは深々と頭を垂れた。


 俺が片手を挙げると玉座の横に控えていたフェンがイグニフェルの前へと進み出て、手に持っていた物を差し出した。


「イグニフェル、とりあえずそれを履いておけ。メイド達に仕立てさせたズボンだ」


「ありがたい………………」


 それをさっさと履いてブラブラさせている巨大な物をさっさと隠してくれ。いや、マジで。


 ズボンを履いて立ち上がったイグニフェルを改めて見上げる。身長は6mはあるのでは無いだろうか?タイターンよりもでかい。筋肉に覆われた体躯は分厚くも引き締まっておりスマートにも見えるというちょいと不思議な体型だ。


「お前には鍛冶を始め裁縫やアイテムの作成など、物造り全般を統率していってもらうつもりだ。統率って言っても今はメイド達が裁縫できる程度だが、そのうち部下をつける予定だ」


「承知した。主の期待に添えるよう、俺の全霊をもって職務に当たろう」


 腕を組深々と頷くイグニフェルに俺も頷き返し、それから彼の意見を聞きながら鍛冶場を設置し道具を整えてゆく。


 今後のことも考えて広く作った鍛冶場の周囲に多くの部屋を設置してゆく。素材をしまう部屋や糸を紡ぎ絹を織る部屋等々。とにかく『造る』ということに特化した区画を造り上げ、イグニフェルをそこの頭とする。


 出来たばかりの鍛冶場から素材置き場に素材をしかいにいったとき、アロスの作成のために使いきりまだ量が回復しておらず僅かしかない鉄鉱石にイグニフェルは苦い顔をしていたが仕方があるまい。とりあえずいらない鋼製の武具を潰してインゴットにしてもらうことにして、配下に再びコボルトを集中的に狙うように指示を出すことにした。


 その後畑を拡張して穀物畑を追加しその世話をゴブリン達に言い付け、テラ達にはダンジョンから帰還後には必ず武具の整備を行うように指示を出し、他の配下にもそれを徹底させるように念をおしたところで今回の拡張等に一段落ついた。


 一段落ついたところでふともよおしたため、そそくさとトイレに向かう俺。今回の拡張最大の失敗の場所へ。


 何が失敗だったかって?

 寝室にトイレを置くのが嫌だったから空き空間を用意して設置したのが失敗だったよ。

 あの広い玉座の間の4分の1もサイズ。たとえ4分の1とはいえ、めちゃくちゃひろい。目測だが10畳以上ある広い空間のど真中にポツン、と存在する水洗トイレとかシュールなうえに落ち着いて用も足せないわ。

 設置するときはさ、個室と一緒に設置されるものだとばかり思ってたんだよ。それがこの結果だよこんちくしょう。

 今は仕方がないので周囲を絹のカーテンで覆って仕切りにしてるけど、早いとこちゃんとした壁を作りたいところだ。






 さて、これからどうするか。

 イグニフェルを作るのにエナジーを使い新しいダンジョンを解放でくるだけの量が手元に残っていないが、だからといって今から始まりのダンジョンにいくのもなんだか面倒くさい。エナジーは配下の皆が直ぐに稼いで来てくれるだろうし、それを待とうと思ってるんだけど。


「どうやって暇を潰すかな」


 フェンとは昨日目一杯いちゃついたし、これで今日もとか俺はできるけど彼女の方が身体がもたないかもしれん。実際イグニフェルを作った後で寝室に戻って休んでるし、彼女。


 早くハーレム増やした方がいいよなぁ~。


 そうだ、市場でも見に行くか。なんでも色々あるみたいだし。何かを購入したりしなくても楽しめそうだしな。






 というわけで市場に行くことにした俺は転送の間にやって来ている。転送の間に新たに設置された転送用魔方陣使って市場に行けるようになっているらしい。


 部屋に一角にある魔方陣に足を踏み入れると魔方陣が光を放ち始める。そして俺を飲み込むように光に柱が立ち上ぼり、光の向こう側の景色が一変した。


 今までは魔方陣以外に何もない殺風景な部屋に立ったのが、今目の前に広がるのは人、人、人。頭上を見上げれば青空と太陽が、周囲を見回せば中世ヨーロッパのような町並み。そこを歩く幾人もの人々。いや、普通の人だけではない、フェンのような頭に動物の耳を持つ者や、頭部に角を持つ者。背に翼、鱗持つ肌、歩く樹木。

 数多の種族の者たちが中世ヨーロッパの街並みの中を歩いている。その光景に俺は自分が本当にもとの世界とは違う場所にいるだと強く思い知らされた。


「はぁ、凄いな………………」


「魔王の市へようこそ!」


 耳に届く活気のある声と目の前の光景に圧倒され、思わず言葉をこぼしたところで背後から声をかけられた。

 慌てて背後に振り返ればそこには悪戯が成功した悪餓鬼のような笑みを浮かべた同い年位の男が立っていた。


 おいおい、気配察知に全然引っ掛からなかったぞ。というかこうやって目の前にいるのに気配を感じないってどういうことだよ。


「そう警戒しないでくれよこっちには敵意も害意もない、というかこの市場ではいさかいはご法度だって人工精霊から聞いてないか?」


 得体の知れない相手に警戒心を募らせると、相手は困った、とでも言うような感じで頭を掻きながらそんなことを言ってきた。


 たしかに人工精霊が言っていたことと目の前の男の言っていることは合致している。合致はしているがここにいるのは魔王候補生ないし魔王そのものだ。どう考えても油断していい相手ではない。油断して気づいてみたら~何てのは御免被る。


「はぁ、魔王やその候補生に油断しない方がいいのは確かだけどさ、自分もその一人だってことわかってる?

 それに回りを見てみなよ。君みたいに警戒心バリバリで歩いてるやつがいるかい?」


「な、心読まれた!?」


「そういったエクストラアビリティを持ってるのもいるかもだけど、俺は違うからな。君の顔にそうでかでかと書いてあるし、ここがはじめての奴ってのは大体考えることも同じだからな」


「何で俺がここが初めてだと思うんだ」


 くそぉ、俺ってそんなに分かりやすいのか?


「そりゃあれだけ周囲をキョロキョロと眺めたり驚いてれば普通にわかるよ。

 それに俺はこきじゃ結構な古株だしな。魔王の市を利用する奴は大抵一回は顔を会わせてる。けど君とは初対面だ。

 ほらね、2つだけとはいえ立派な理由だと思わないか?」


 2つ目の理由はともかく、確かに1つ目の理由は納得できる。俺も同じような奴を見かければ同じくそこが初めてなのだろうと思うだろうな。


「俺はこう見えてもプログラムの卒業者なんだ。卒業後に行った世界で成すべきことも成したから暇な身でね、暇潰しに市場の案内や諸々の相談を受けたりしているのさ。君に声をかけたのもそのためさ」


 確かに市場のことを知らないし案内してもらえるならそれはそれで助かる。けど、目の前の男を本当に信用してもいいのか………………。


「別に俺のことを信用何てする必要はないさ、案内やなんかにしても参考程度に思ってくれればいい。

 あ、今のは心を読んだんじゃないぞ。皆最初はそんな感じの反応をするからそれでだ」


 ……………………どうする。正直判断材料が少なすぎる。


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名前:イグニフェル

性別:無

レベル:1

種族:キュクロプス

クラス:ブラックスミス

属性:炎

生命力:B

力:A

魔力:C

素早さ:E

運:E

アビリティ

槌術LV6・弓術LV6・鍛冶LV6・裁縫LV6・薬学LV6・錬金術LV6・付与魔法LV6・剛力LV6・魔力視LV6・鑑定LV6

スキル

・鍛冶神の従卒

・属性魔法耐性/中

装備



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