デート
第3階層を突破して10日が過ぎた。礼によって寝て起きて1日経過という数え方だがだいたいこれであっているということにしている。この10日間で上がった俺のレベルは3。現在のレベルは19に達している。他にあった俺の変化といえば、【魔物学】というアビリティをとったことかな。最初は巨人の弱点でも分かればもう少し楽に勝てるようになるかと考え、そう言う知識を得られそうなアビリティとしてこれを取ったのだが思っていた以上に有用なアビリティだった。なんとアビリティレベル次第ではあるが相手の弱点を看破したりする事が出来るようになるのだが、他にもその魔物の進化に関連する知識なども思うだけで得ることが出来てしまったのだ。このままレベルが上がっていってくれれば配下の作成も捗るようになるだろう。他にあったことといえば新たなスキルを得たことか。正直ダンジョンの探索には全く意味のないスキルではあるが、夜の探索には非常に有用なスキルだった。
俺以外の変化も当然ある。たとえば牧場に放たれた家畜達と、それの世話を行うコボルト達だ。コボルト達はちょいと脅してやれば簡単に配下に加わった。ゴブリンと比較してもあまり高い訳ではないが、飼育のアビリティを覚えさせてやったら家畜の世話にまじめに取り組むようになった。おかげで調理場を購入できたこともあって、今では野菜炒めのような簡単な料理からステーキやスープ、ハンバーグなどなどといろいろな料理が食卓に並ぶようになり、フェンと一緒に舌鼓を打つ日々だ。こうなってくると欲は広がるばかりで、今では米が食いたい刺身が食いたい、ピザだと食べたい物が次々と出てくる。
ちなみに調理場セットのE、C、JとはEUのEとチャイナのC、ジャパンのJだったらしく、それぞれ西洋料理道具のセット、中華料理道具セット、日本料理道具セットという内容だった。
俺たちの着る物にも変化がある。今までは第1階層で手に入る布の服を着用していたのだが、いまでは狼娘メイドたちが仕立てた服を着ている。この服の材料は家畜の羊の毛に、配下作成の研究中に作り上げたビッグスパイダーという魔物の糸も使用していて、薄手の服ながら非常に丈夫だ。この服を作り上げた狼娘メイド達のメイド服も作らせて着せた結果、彼女たちも役職を得ることが出来るようになった。もちろんメイドの役職である。これで正真正銘のメイドとして(仮)を取ることが出来たのだ。現在彼女たちは俺の依頼を受けて様々なコスチュームを制作中である。当然フェンやこれから増えるハーレムのメンバーに着せるためのコスチュームだ。エロい新作が出来た日などは夜の探索が激しくなるのが嬉しい悩みだ。
エレメンタルナイツが討伐を続けるフロアボスのドロップするアイテムはピンキリが激しい。ゴブリンジェネラルは今のところは変わらずに鉄製の武器全般のみがドロップしており、レザーリビングメイルの装備の充実が進んでいる。狼男からは狼男の毛皮や爪、牙と現状使い道の多くない物ばかりだ。せいぜい狼娘メイドが毛皮をなめしてコートなどを作る材料になるぐらいで、コートなど暑くも寒くもないダンジョン内ではとくに使い道のない装備だ。ただ本当にときおり鋼のインゴットを落とすことがあるようで、なん十回と討伐して二つだけ確保している。エレメンタルナイツの進化に使うにはまだまだ少なすぎる量なので、今は宝物庫という名の倉庫にて埃を被っている状態だ。そして一番の問題児がシャドウストーカーの上位種、第3階層のフロアボスであったシャドウグールだ。落とす物は様々なドレスに衣服、ネックレスにイアリング。それには価値はあるのだろうが、衣服は見た目相当の防御能力しかなく、ネックレス等はは特別な力もないただの装飾品だ。人間社会等ならば価値があるのだろうが、俺とその配下しかいないここでそんな物になんの価値があるのだろうか?いやフェンを着飾るのはいろんな意味でおもしろいけどね?ダンジョンの攻略にはなんの役にも立たない。
それでもフロアボスの討伐をつづけているのは、ゴブリンジェネラルを初めて討伐したときに手に入れた強化読本のような特殊なアイテムがある可能性を捨てきれないからだ。そうでもなければとっくにゴブリンジェネラル一本に絞って討伐を行っている。鉄の武器はまだ全ての配下に行き渡るほど揃っているわけではないのだ。
スケルトンの振り下ろす剣をウィクトリアで受け流し、身体の流れた敵に盾で強打してさらに体勢を崩させる。後ろに転倒しそうになるのを脚を下げて防ぐものの上半身は背後に傾いており、すぐに武器を構えることの出来ない状態。そんな状態のスケルトンに、俺は慈悲をくわえてやる理由もなくウィクトリアを振り下ろす。その最中ウィクトリアの刀身が炎に包まれ、切り捨てたスケルトンを業火で包み込み焼き尽くした。
これはウィクトリアの覚えたスキル【魔導剣】、魔法と斬撃を同時に相手に叩き込む強力なスキルだ。威力は単純に魔法と斬撃をくわえる場合の数倍はあるかと思われる。何度かフロアボスで試してみたが、敵の受けたダメージは相当な物のようだった。
俺の、いや俺達切り札として活躍してもらうことになるだろう。ただ問題なのは魔法を絡めた攻撃であるため、あの巨人にどれだけの効果があるのか未知数なことだ。最悪の場合魔法と同様に全く効果が無い可能性もある。
こればかりは実際に試してみないことにはどうなるかわからないので、次に奴と戦うときには真っ先に試して効果のほどを見てみるべきだろう。
効くといいんだけどなぁ。
「お見事です」
「そっちも終わったか」
かけられた声に振り替えれば、そこには鉄製の棍を手にしたフェンの姿。彼女の持つ鉄棍はつい昨日エレメンタルナイツがゴブリンジェネラルとの戦闘でドロップしたと持ってきたものだ。これのおかげで彼女もようやく棍術のアビリティを成長させることが出来るようになったと言うわけだ。フェンも順調に成長して来ているが、一緒に第4階層に潜るにはまだまだ不安が残るステータスだ。早く一緒に気兼ねなくダンジョンデートが出来るようになりたいものだ
「はい、この鉄棍は扱いやすいですから、スケルトン程度でしたら問題になりませんね」
楽しそうに鉄棍をくるりと回転させるフェンだが、スケルトン程度だったらそもそも素手でどうとでもできるでしょうに。
「そうか、それじゃスケルトンどもが何をドロップしたか確認させて貰うとするか」
フェンの楽しげな様子に茶々をいれるのもなんなので、思ったことはそのまま心の内の閉まっておいて戦利品の回収を行うことにする。
「骨が1つか」
「私の方は宝箱が1つです」
今回倒したスケルトンは全部で10体だ。宝箱と合わせて2つというのは少々少ない。
「少ないな。しかも宝箱か」
現在この第3階層にはフェンと二人で潜っている。探せばアイアンリビングメイルかレザーリビングメイルがいるだろうが、ここ場にいるのは俺達だけだ。そして俺も彼女も宝箱の罠も有無を調べるアビリティを取得いない。つまり俺達はこの宝箱を罠の有無を天に任せて開けるしかないというわけだ。そしてもし罠があった場合、物によっては死に戻りをすることになるのだが………………。
「いちいちこんなことで死に戻りなんてしてやれるかっての
コールアンデット.・スケルトン」
スケルトンから拾ったばかりの骨を放り投げて死霊魔法を唱えてスケルトンを呼び出す。
「俺が合図をしたら宝箱を抉じ開けろ」
俺の指示を聞いたスケルトンが宝箱の前に移動するのを確認するのもそこそこに、俺とフェンは宝箱からほどよく離れた場所で盾を構えてその影に隠れるように身を寄せ会う。
「いいか?」
「大丈夫です」
「やれ!」
俺の命令を聞いたスケルトンが宝箱に手をかけ、そして。
轟音が通路を埋め尽くした。
「やっぱり罠付きか……。」
「耳が痛いです」
盾の影から立ち上がりスケルトンばはおろか宝箱すら跡形もなく消し飛んでしまった爆心地を眺めてぼそりとこぼす。フェンは盾の影に隠れながらも耳を押さえていたのだが、それでもあの爆発音はいかんともしがたいらしく、頭の上の両耳をペタンと伏せながら嫌そうに顔をしかめている。
「死に戻りするよりかは遥かにマシだろ?」
俺だけならともかく、フェンをはじめとして配下は死に戻りできる回数が決まっているのだ。敵と戦い力及ばず倒されてしまったというならまだ諦めがつくが、宝箱の罠などというどうとでもなるような代物で死に戻りなど、罠の解除に失敗したというならまだしも不用意に開いてなど認められるものじゃない。
「確かにその通りですが………………」
わかってはいるが、それでも辛いものは辛いのだろう。どこか釈然としない面持ちで言葉を濁すフェン。
「私に罠解除と解錠のアビリティを覚えさせればいいだけだと思うのですが」
「お前は戦闘用のアビリティだけでだいぶ枠を埋めてるんだ、この先いつ何のアビリティを取らなくてはいけなくなるかわかったものじゃないんだぞ。後で消すこともできるからって余計なアビリティを取得するべきじゃない。
アビリティを取得するのにも少なくないエナジーを消費するんだからな」
「でしたら斥候専門の配下を用意して同行させる手もあるのでは無いですか?」
確かにそれならば必要ならば他の配下に同行させたりと、使い道も多く有効な手段ではあるのだろう。けどな……………………………。
「それじゃデートにならないだろう。ただでさえ今もレザーリビングメイル達とすれ違ったりしてるっていうのに」
「で、デートォッ!?」
俺のその言葉にフェンが顔を真っ赤にしながらすっとんきょうな声で叫ぶ。
毎日ベットの中で(自主規制)してるというのに初な反応である。そこのところが可愛いのだが。普段がクールビューティー然としているだけにそのギャップが特にである。
顔を真っ赤にしてあわあわしている姿が可愛いのでもう少しからかうおうかと思ったのだが、そこで此方に近づく気配を感じて諦める。
「フェン、お客様さんだ」
赤くなった顔を隠すように掌っっで覆いながら尻尾をはち切れんばかりに振っていたフェンも、俺の言葉にすぐさま表情を引き締め、何かを探るように鼻を鳴らした。
「これは、コボルトの臭いです」
結構離れているというのにその相手の臭いをかぎ分けることのできる嗅覚察知のスキルは本当に役に立つな。俺は取得できないしそもそも取得する気も無いけど。
「そうか。それじゃそいつらをさっさとと倒して今回は引き上げるか。アイテムも結構集まってるしな」
「主様の判断に従いまう」
「帰ったら飯だな。確か今日はハンバーグだったはずだ」
「ハンバーグ………………」
今日の献立を聞いたフェンが喉を鳴らす。呟いた声は非情に小さく聞き逃しかねないような声量だったが、運良く俺の耳に届いた。本人は聞かれたと思っていないのかいつもの凛とした表情をしているのだが、腰の辺りから生える尻尾は大きく振られ本人の気持ちを雄弁に物語っていた。
「そんなに楽しみ?」
「何のことですか?」
「尻尾」
からかいを含んだ俺の問いにフェンは澄まし顔で答えるが、何よりも現在の感情を表している尻尾のことを言うと、彼女は慌てて自身の背後を振り返りその状態を見て再び顔を真っ赤にして俯いてしまう。言い訳の言葉が見つからないのだろう。
「さぁ、フェンが楽しみにしてる飯に早くありつけるよう、さっさと敵を片付けるとするか」
「主様~」
続けられる俺のからかいの言葉に情けない声をあげるが、それを無視してコボルト達の向かってくる方へと足を向けた。
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名前:黄麻大地
おうまだいち
性別:男
レベル:19
職業:魔王候補生
クラス:魔法戦士
生命力:E
力:D
魔力:C
素早さ:D
運:B
アビリティ
剣術LV36(LV2up)・盾術LV31(LV1up)・鎧術LV12・根源魔法LV35(LV1up)・付与魔法LV25・死霊魔法LV19(LV3up)・ジャンプLV16・ダッシュLV28(LV1up)・鑑定LV35・気配察知LV31・魔力察知LV20・直感LV22(LV2up)・魔物学LV15(LV14up)
スキル
・根源魔法/炎/雷/風/水/氷/光/闇
・付与魔法/炎/風/土/水/氷/雷/光/闇
・死霊魔法/フィジカルカース/コールアンデット
・配下作成
・配下命名
・精強
装備
武器1:魔剣ウィクトリア
武器2:鉄の盾(土属性付与)
頭部:アイアンプレート(冑)(闇属性付与)
上半身:布の服
防具:アイアンプレート(闇属性付与)
下半身:革のズボン
足:アイアンプレート(ブーツ)(闇属性付与)
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名前:ウィクトリア
性別:無
レベル:15
種族:リビングウェポン
クラス:魔剣
属性:混沌
生命力:C
力:C
魔力:C
素早さ:F
運:E
アビリティ
補助魔法LV27(LV3up)・根源魔法LV27(LV1up)
スキル
・物理耐性/中
・属性耐性/大
・生贄融合
・鍛錬強化
・血統強化
・魔導剣
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名前:フェン
性別:女
レベル:11
種族:人狼族
クラス:拳士
属性:氷
生命力:D
力:D
魔力:E
素早さ:C
運:E
アビリティ
拳術LV29(LV9up)・就術LV25(LV6up)・棍術LV12(LV6up)・投げ技LV14(LV2up)・組技LV8・嗅覚察知LV18(LV3up)
スキル
装備
武器1:鉄の棍
上半身:布の服
防具:革の鎧(胸部、足甲のみ)
下半身:革のズボン
足:革の靴