色
「おやすみなさい。」
最後に見た時計は丁度0時ピッタリを指していた。
さいしょ、そこにいたのはわたしひとり。
だれもいなかった。
しばらくしろいろのばしょをふらふらあるいていると、うしろからこえをかけられた。
さっきまでわたしひとりだったけどなぁ。
「久しぶりだね。」
「あっ、おねーちゃん。」
こえをかけてきたのはおねーちゃんだった。
「ここで何してたの?」
「ひましてた!」
「そうなの...じゃあ絵本でも読んであげようか?」
「ほんとうに!?」
「うん、まずは何がいいかなやっぱり白雪姫からかな。」
まわりのけしきはみどりいろ。
おねーちゃんのふくのいろ。
「おねーちゃんはしらゆきひめってどうおもう?わたしはとてもすてきなおはなしだとおもうの。」
「そっか、でもお姉ちゃんはね、この話はとても怖い話だと思うんだ。どうして王子様は死体の白雪姫を譲るように言ったんだろうね。」
「うーん、よくわからない。」
「あはは、そのうち解るよ。」
しらゆきひめはあかいいろ
まっかなりんごのいろ
「次は人魚姫でも読もうか。」
「わたしにんぎょひめすきー!」
「そっかそっか、どんな所が好きなの?」
「おうじさまをあいしていたところ!きっとにんぎょひめはあわになったことはこうかいしてないとおもうの。」
にんぎょひめはあおいろ
きれいなうみとあわのいろ。
「そうだね、人魚姫はどこまでも純粋で一途で...愚かだったんだろうね。」
「おねーちゃん、ひねくれてる。」
「そうかもね、でも大人は皆こんなもんなんだよ。」
「おとなにはなりたくないなぁ。」
「ならピーターパンにネバーランドへ連れてってもらいなよ。でもお姉ちゃんはそれはとても残酷なことだと思うなぁ。」
「おねーちゃんのかんがえはわたしにはわからないよ。」
「だからいつまで経っても単色なんだよ。」
「たんしょく?なんのこと、おねーちゃん。」
「...あれ?おねーちゃん?」
おねーちゃんはいなくなっていた。
「ほらもう12時だよ、シンデレラは帰らないといけないからね。」
こえだけがひびいた。
ジリリリリリリリリ
けしきはぴんくいろ。
わたしのきてるぱじゃまのいろだった。
あれ...パジャマ?
あぁもう、ジリジリジリジリ煩いなぁ
ジリリリリリリリリ
「...起きなさい!!何時だと思ってるの!まったく、休日だからって...。出かけるんじゃないのー?」
「あれ...。」
時計は12時を指していた。
「おかーさんおはよ...。」
「おはようじゃないわよ、アンタ今何時だと思ってるの、とっくにこんにちはの時間じゃないの。」
「あー...おねーちゃんと話してた。」
「何、アンタまだ寝ぼけてるの?アンタ一人っ子でしょうが。」
「まぁそうなんだけど。」
「ほらもう、さっさと食べて出かけてきなさい。」
「うはぁい。」
そうだった、本屋にいかなければ。
私は用意されていた朝ごはん、もとい昼ごはんを食べて部屋に戻った。
「顔も洗った、服も着替えた、バック持った、鍵持った、お財布...持ってない!!!」
危ない危ない。
学校の鞄からお財布移し忘れることってよくあると思う。
きっと私だけじゃない、うん。
「いってきまーす!!」
「気をつけるのよ〜。」
「はーい。」
ガチャリと音を鳴らしながら扉を開けて外に出てみると、青い空色が目に映った。
一歩外に出てみれば様々な色が目に入る。
木々の青々とした緑色。
ちょっと行ったところのコンビニは赤色とオレンジ。
そこの店員のお兄さんの髪の毛の色は茶色。
虹の色は7色もあるし。
いつの間にか私の世界はもう単色ではなくなっていた。
「白雪姫の王子様はきっと死体愛好家。なんつって。」
もう「白雪姫を連れて帰ったのは愛の力よ!」なんてお花畑脳の小さい頃の私はいなくなっていて、ちょっと捻くれた考えをする私がそこにいた。
でもそれには後悔はしていない。
現実をいつまでたっても一つの見方でしか見れないような小さい頃の私はもういない。単色だった私ももういないのだ。
いつからだったかものを見る角度が増えていた。見える色も増えていった。
大人になるってきっとこういうこと。
今日の私の服は緑色。
おねーちゃんと同んなじ緑色。