第2話 不思議なこと
今日は高校2年生になって2日目の朝。
希龍は朝練があっていつも一緒に登校したりはしない。
他の友人もいるが僕は何気に1人が好きだったりするんだ。
それに僕の家の方面はあまり同じ高校に通ってる人が少ないから無理して遠回りしようとも考えない。
今日は神沢真夜来るのだろうか。
来たところでどうってことはないのだけれど。
やはり隣の席だと妙に緊張してしまうじゃないか。
昇降口に入り、上履きを取り出す。
すると後ろから女子達の声が聞こえた。
“月宮君”という単語が入ってたから月宮怜がいるんだろう。
僕は振り返ることなく進もうとした。
「俺、2-Aだから」
「うん♪」
「バイバーイ♪」
「また後でね♪」
女子のセリフがとても気持ち悪いと思った。
「……後で会うわけねーっつーの」
呟きが聞こえた。
もしかして自分が口に出してしまったのかと思い焦った。
しかし女子達はその発言に全く気づいてるようには見えなかった。
後ろを振り返ると月宮怜がものすごく機嫌の悪そうな顔をしていた。
目つきが悪い分余計に怖く見える。
「あ、もしかして今の聞こえた?」
月宮怜と目が合ってしまった。
今の?
あの呟きのことだろうか?
「気にしないでくれ。気分を悪くしたのなら謝る」
自分の発言ではなかったことに安心したのは束の間、月宮怜の本心を知ってしまったことに驚いた。
「いいや、謝る必要はないって。僕も似たようなことを思っていたから」
「そうか。あんた2-Aの生徒だったよな?」
「うん」
「良かったら名前を教えてくれるか?まだこの学校に男の友人がいなくてな」
「霧崎聖牙だよ。2日目なんだからまだいなくても普通だと思うよ。焦って友人を捜す必要なんかないさ」
そう、こんな周りに興味を持たない僕でも友人はいるんだ。
そんなに焦って友人をつくる必要はないだろう。
「ありがとう。俺のことは怜、って呼び捨てでいいから」
「僕も聖牙でいいよ」
「よろしくな、聖牙」
「よろしく」
昨日までは転校生と関わらない予定だったが、彼の1番目の友人になってしまった。
だが友人になるくらいどうってことはないだろう。
「じゃあ教室行こうか」
「そうだな」
このときまでは……………。
ホームルームが始まって教科書などが配布された。
僕の隣の席である神沢真夜は今日も休みらしい。
それはそれでホッとしてる自分がいる。
僕は面倒事に巻き込まれるのが1番嫌なんだ。
「……あれ?」
教科書が全て配られて確認をしていたとき、異変に気づいた。
数学の教科書の端が破けていたのだ。
だがそんなに大きく破れていたわけでもなかったのでそのまま他の教科書の確認を始めた。
後々になって破けたとこが気になり、最後にもう1度数学の教科書を出してみた。
配布された日に破くほど僕は物の扱いが雑なわけではない。
けど破れているということは変わらないしそこまで気にすることもないと思い、僕は教科書をしまおうとした。
しまうときに気づいたが何だか切れ端が黒くなっている。
触るとカサカサした感じがして匂いを嗅ぐと少し焦げ臭かった。
焦げ臭い……ということは燃えたということになるが。
もちろんこの短時間で火を起こせるものもない。
しかし焦げ臭いというのも例えだから燃えたとは限らない。
考えれば考えるほどわけがわからなくなったので教科書の破れた端のことを考えること自体をやめた。
そして、その姿をまたもや見ている人物がクラスにいたことに気がつくわけもなかった。
✝✝✝
数日後にはもうそんなこと気にするどころか記憶も曖昧になっていた。
けど、あの日から自分の周りで怪奇なことが起きてることは薄々気づいてはいた。
例を上げるならば自分の体温が少し高くなっているということ。
夏が近づいているから、という線も考えられるが本当にそんな理由だとは思えなかった。
あともう1つ説明しておこう。
家で1人のときに電子レンジで食品を温めて食べようとしたときがあった。
時間は合っていたはずなのになぜかレンジから取り出した食品は焦げていたのだ。
僕はその皿を素手で取り出した。
その後に気づいたが食品が焦げるほどの熱い皿を何故自分が素手で持てたのか?
さすがの僕でもこの“怪奇な現象”は気にせずにはいられなかった。