リル8
「いらっしゃいませぇ!!」
「おっ!リルちゃん、今日も元気がいいねぇ!」
「はい!私、こういうの一度やってみたかったんですよね!」
うふふ、果物屋さんの前にたって呼び込みってやつですね!
いつも元気のいいおかみさんがやっているのを見てて、私も一度やりたいと思っていたのですが、やっとそれが叶いました!
「リル、いつもありがとね。でも、今日はそろそろ終わりにするから、仕事でも探してきな。きっといいところが見つかるよ!」
おかみさんの言葉に私は頷き、エプロンをとると街の中の掲示板へと向かった。
「・・・毎日毎日おかみさんにはいい仕事が見つかるよって声をかけてもらうけど・・・・」
今のところここだ!という仕事が中々見つかりません。
「・・・今日こそは、いいところがあるといいのですが・・・・・」
町の掲示板には、求人を始め町でのイベントのお知らせやら注意事項やらが貼られていた。
「えーと・・・・、掃除・・・・洗濯・・・・剪定・・・メイド・・・・ん?メイド?」
珍しいですね。メイド募集の求人が出るとは。
メイドと契約をするようになってからは、雇用の保障をされているため、中々辞めるものはおらず求人募集を見つけられるのは奇跡に等しい。
だから、たまに出る求人は倍率が高いか、もしくは、誰も行きたがらない屋敷だったりする。
「今回は・・・・え!?ジョナ男爵様の所!?そ、それに給金が前の給料よりも断然いい!!」
思わずその貼り紙をはぎ取って懐に入れると急いで家に帰りました。
お、おかみさんに見せなくては!!
「お、おかみさ~んっ!!み、見て!見て下さいっ!!」
思わず大きな声で呼ぶと、おかみさんは店の奥から慌ててやってきた。
「な、何事だい!?今度は一体何があったのさっ!」
・・・そ、そんないつも何かある様な事言わないで下さい。
っと、それどころじゃなかった。
「これ!これ見て下さい!このメイド募集!わたしこれに応募してみようと思うのですがどうでしょう!?」
もしこれに合格したら、この店のお手伝いはできなくなりますからね。
おかみさんにも承諾して頂かなくては。
「な、なんだ。慌てて店に入ってくるからまたあの人が何かしたのかと・・・・。っと」
ん?なにか慌てて口を押さえていますがどうしたのでしょう?あの人とは一体誰の事でしょう?
首をひねっていたら、おかみさんが私の手にあったメイド募集の紙を手に取りました。
「なるほど。やっと・・・・とと、これの事かい?」
「はい!どう思いますか?すぐにでも働けるみたいなので、こちらにはご迷惑をかけるとはおもうのですが・・・」
張り紙には、採用後すぐにでも働くようになっていました。
え?なぜ採用されるとおもっているのかって?
・・・・この給金・・・げふん。なにがなんでもこの仕事、私の手の中に収めます!!
「いいんじゃないかい?すぐにでも連絡するといいと思うよ」
おかみさんは快く承諾してくれました。
相変わらず、心の広いおかみさんに私はますます惚れこんでしまいそうです。
「では、明日にでも私この屋敷に行ってきます!」
そう言うと、早速私は明日に備えて布団にもぐりました。
「やっと見つけたのか・・・。まったく、もう張り出されて5日も立ってると言うのに・・・」
おかみさんが私が寝た後にそんな事を言ってため息をついていた事なんて、私全然知りませんでした。