リル7
さてと、まずは住む所を探さねばなりません。
ん?私の今までですか?今までは住み込みメイドでしたからね。
まぁ、メイドの皆さんは大体住み込みで働いております。
わがままなご主人に当たると昼夜問わず働かなくてはなりませんので。
「おかみさん」
とりあえず、おかみさんのいる果物屋にやってきました。
「リルかい?どうしたんだい?そんな大きな荷物を持って」
「はい、私とうとうご主人様の所を解雇されてしまいました」
あ、いけない。今はもうご主人様ではなかったですね。
うーん、初めて勤めた屋敷ということもあり、癖がなかなか抜けないものです。
「・・・・は!?」
おかみさんは私の言葉に驚いています。
「な、な、ななんでまた!」
「うーん・・・・。なんでと言われましても。なんとも理不尽な事を言われたり、解雇ももっともだったり・・・・。ま、どちらにしてもようやくすっきりしました!」
にこりと笑ってみせると、おかみさんは何やら頭を抱え込んでしまいました。
「・・・おかみさん?」
頭が痛いのでしょうか?もしかして具合がわるいとか!?
大変です!すぐに休んだ方がいいですね!!
「た、体調がすぐれないのでしたら、お店番は私がやりますから奥で休んで下さい!!」
そう言うと、おかみさんは横に首を振った。
「い、いや、そういうわけじゃ・・・・。リルのその優しいところは好きなんだけどねぇ・・・・・」
困ったように笑っております。うん、どうやら具合が悪い訳ではないようで、安心しました。
「あぁ、そうだ。リル、解雇されたってことは行くところはないんだろう?次が決まるまで家にいるかい?」
な、なんてありがたいお言葉なんでしょう!?
毎日毎日同じ果物しか買わなかった私を置いてくれるなんて、おかみさんは本当に心が広いですね!!
「い、いんですか?」
一応、遠慮と言う言葉は知っているのでそう聞いたのですが・・・・。
「もちろんだよ!ついでに暇なときは店を手伝ってくれると助かるけどね」
にかっと笑うおかみさんに思わず抱きついてしまいました。
「手伝います!手伝います!・・・わたし住む所探さなきゃなーって困ってたんです!!」
実家といえども、叔母さんの家には主が長期不在だし。ちょっとここからも遠いので本当に家に帰ろうかどうか迷っていました。
ですから、おかみさんの言葉はまさに天使のさえずりです。
え?意味が違う?
・・・・まぁ・・それくらいの気持ちってことですよ!!汗
と、ともかく、おかみさんの手伝いをしながら私、本格的に就職先を探します!
今度はどんな仕事につこうかな~?
「・・・急いでベネディクト様に確認しなきゃならないね・・・・」
おかみさんがそんな事をぽつりとつぶやいた事など、私、この時全く気付きませんでした。