ベネディクト6
あぁあ・・・・・。私はなんて事を・・・。
「くぅ・・・。済まない・・・・。リル」
あぁ、何だが視界がぼやけて見えるのはなぜだ。
ん、なんだこの目から流れる汗は・・・・。
リルを追い出した部屋で一人残された私は思わず床に膝をついてしまう。
「あ、あんな事言って私は嫌われたりしていないだろうか・・・・。あぁ・・・・」
馬鹿だ。私は本当に馬鹿だ。
見たか!?あの涙が浮かんだリルの瞳・・・。
きっと今頃可愛い瞳から涙がぼろぼろとこぼれ落ちているに違いない!
くそ!今すぐ慰めたい。この腕の中に捕まえてその涙をぬぐってやりたい!
そう思うが、リルとの将来を考え私はここで今までにないくらいの我慢をしていた。
「こ、これで、リルが私の元へ・・・・・」
メイド頭の言葉が頭の中でこだまする。
『まずは、リルをこの屋敷から出すのです。きっとリルは職を探す事になるでしょう。そこでリルが養子となる男爵家のメイド募集に目をつけさせます。え?そんなにうまくいくかと?大丈夫です。リルが職を選ぶ基準は承知しておりますので。それが何かって?・・・・・ごほんっ。あ、話を続けさせていただきますね。そこで、男爵家のメイドとして一旦男爵家へと入ります。すると、そこの男爵に気に入られ養女になってくれと懇願される。リルはある程度の条件をつけるでしょうが、涙をさそう話でもすればころりと信用するでしょう。・・・それでも母親がわりかと?・・・・母代りだからわかるのですよ。ま、まぁその話はおいておいて・・・。男爵家の娘ともなれば教育もされる事でしょう。その辺りは男爵様にお願い致しますが・・・。そして、リルが苦悩しているときに侯爵様が優しくリルを慰め、リルは侯爵様に惹かれ結婚!え?そんな廻りくどい事しなくても、リルはすぐに結婚に承諾するだろう?・・・・・べ、ベネディクト様!!女はプロセスも大事なのです!!そう!まずは教養を身につけ、ベネディクト様に相応しくなれるようにする事です!!は?この屋敷でもできる!?
いえいえ、リルはその様な姿きっとベネディクト様に見せたくなどないはずです。ええ!きっと。陰ながら頑張りベネディクト様に相応しくなったところでベネディクト様から求婚されれば、リルはきっと喜びますとも!!』
その言葉につられて私はリルを追い出してしまったが、本当に良かったのだろうか。
そういえば、そのあとメイド頭が何か言っていた様な気もしなくもないが・・・・・。
まぁ、リルは私にみっともない所は見せたくないだろう。
その気持ちはわからないでもない。
私とて、情けない姿をリルに見られるのは嫌だからな。
男爵家にリルを預けるというのは聊かひっかかりはするが、リルの為だ。仕方がない。・・・念の為、我が屋敷の者を送り込んでおこう・・・・。
ともかく、そう言う事でリルを追い出したのだが、よくよく考えれば当分の間私はリルと離ればなれとなるのだよな・・・・。
我慢できるだろうか・・・・・。