ベネディクト5
衣装はメイド頭にまかせて正解だったらしい。
城で一運動した後、屋敷に戻ってみればメイド頭から早速報告があった。
既に採寸は終わったと。やはり、仕事は早い。その報告に満足しながら頷いていると、メイド頭はまた素晴らしい提案をしてくるではないか。
「ベネディクト様。私、リルの母代りとしてお願いしたい事があるのですが・・・」
「なんだ?申してみろ」
「はい、リルの花嫁姿を見られるのは本当に嬉しく思います。が、しかし、何分リルは今までメイドとして働いてきたしがない使用人でございます。ベネディクト様と結婚されるとなれば貴族の仲間入り・・・。まったく教養もなければ淑女としてのたしなみも知りません。その様な者をベネディクト様の隣りに置くなど、ベネディクト様の恥にしかなりません」
メイド頭の言葉に思わず怒鳴りつけてしまった。
「リルが恥だと!?」
「お待ちください!お話は最後までお聞きください!!」
珍しくメイド頭が声を張るので私は思わず怯んでしまった。その隙に彼女はまた話し始めた。
「・・・いまのままではそうだと申し上げているのです。いえ、それどころかベネディクト様だけではなく、リル自身恥をかくのです。ですから、リルをどこに出しても恥ずかしくない教養をつけさせたいと思います」
彼女の話に私は眉を寄せながらもリルが恥をかくと言われ私は頭を抱えた。
「・・・教養をつけると申すと、家庭教師でもつけると言う事か?」
「そうですね。しかし、リルには秘密との事・・・・。そこで、私に少し考えがあるのですが・・・・・」
メイド頭はにやりと笑うとその提案を私にしてきた。
私は黙ってその話を聞いていたが、次第に頬が緩んでくるのが自分でわかった。
「ふむ・・・。なるほど、それはいい考えだな」
「ありがとうございます。あぁ、ベネディクト様もくれぐれもリルにばれないようご協力お願い致します」
「もちろんだとも。さすが、リルの母代りなだけあるな。うむ、その件すべてお前に任せよう」
「はい。あ、ベネディクト様、今回の件に当たり必要な物をそろえたいと思うのですが・・・・」
「よい。お前の思う通りにやれ。金は私の私財から出せばよいからな」
「あぁ!ありがとうございます。では、私、早速用意を致しますので、これで失礼致します」
そう言って、メイド頭は部屋を後にした。
あぁ、いけない。顔が思わず緩んでしまう。
メイド頭に提案されたそれを考えると今すぐにでもリルに会い抱きつきたくなってしまう。
しかし、今はまだ我慢だ。
まずは、リルをこの屋敷から追い出さなければ話にならない。
あぁ、可愛い私のリル。一時でもお前と離れるのは寂しいが、これもすべてリルを幸せにする為・・・。
そして、次に戻ってくるときにはずっと傍にいられるだろう。
今は一時の我慢。
そう自分に言い聞かせると私は早速リルを呼んだ。