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魔法薬品技師ミシェラの婚約破棄

作者: 三多来定
掲載日:2026/09/21

 ルメルス伯爵領の田舎の村娘だったミシェラには、国を揺るがすほどの魔法薬品作りの才能があった。

 噂を聞きつけたルメルス伯爵はすぐにミシェラを自身の養女とし、ミシェラと第2王子との婚約を結びつけることに成功した。

 ルメルス伯爵家は、ミシェラの魔法薬品作りの才能のおかげで、王家と親戚関係になるチャンスを得たのだ。

 とはいえミシェラは元は村娘。

 なんの教養もない、美人でもない、貴族の血筋でもない、そんなミシェラを第2王子が煙たく思うのは当然で、第2王子は会うたびミシェラにきつく当たった。

 お茶菓子を無作法に食べるミシェラを叩いたことも1回や2回ではない。

 美人で教養のある公爵令嬢をデートに連れてきてミシェラを置き去りにしたこともある。

 ミシェラがどんな風に扱われようとも、もちろんルメルス伯爵家は文句など言わない。

 養女であるミシェラに何の情もない。

 この婚約は第2王子と魔法薬品の技術との婚約であり、ミシェラは魔法薬品の技術のオマケなのだ。

 どんな扱いを受けても何も言わない笑いもしないミシェラに、ある時王子は言った。

「ああ、婚約破棄したい! 明日目覚めたら、全てがなしになっていたらいいのに!」

 ミシェラはそのとおりにすることにした。

 全てがなしになる魔法薬を2時間で完成させ、第2王子と義父のルメルス伯爵にふりかけた。

 翌日、第2王子とルメルス伯爵は婚約破棄しなければという苦しいほどの衝動に駆られ、ミシェラと第2王子との婚約はあっさり破棄となった。


 しかしミシェラの魔法薬品作りの才能を欲しがる貴族は大勢おり、ミシェラは今度はコルディリネ公爵令息と婚約をすることになった。

 ルメルス伯爵は何故王家との縁を切ってしまったのか未だに分からなかったが、公爵家との縁でも上々だと思っていた。

 しかしコルディリネ公爵令息も第2王子と同じだった。

 第2夫人を持っても、愛人をつくっても良いと言われたが、ミシェラの姿勢の悪さも愛想のなさも全てが我慢ならず、婚約がなしになればいいのにと思っていた。そしてそれをそのままミシェラに伝えた。

 ミシェラは再び魔法薬を作り、コルディリネ公爵令息との婚約も綺麗さっぱりなしになった。


 その後ミシェラは、侯爵令息、辺境伯の後妻、隣国の有力公爵の後妻、と次々に婚約したが、どれも不思議なくらい綺麗に全て婚約破棄となった。


 ルメルス伯爵は諦めた。

 魔法薬品の製作技術はルメルス伯爵領のものだけにすれば良い。

 魔法薬品の流通ルートを考えるのが面倒で有力な貴族と縁づいた方が楽だと思っていたことは内緒だったが、つい酒が入った勢いでミシェラにその愚痴を言ってしまった。でもミシェラは無教養だし大丈夫だろうと思っていた。

 ミシェラはなんだそうだったのねと魔法薬を1時間でつくり、ルメルス伯爵にふりかけた。

 ルメルス伯爵は魔法薬品の流通ルートを考えるのが死ぬほど面倒になり、でもミシェラを他家にとられるのも、ミシェラと一緒に屋敷で暮らすことも嫌なので、考えに考えた結果、養女のまま、元の村に帰すことにした。


 ルメルス伯爵令嬢として故郷の村に大きな屋敷と仲の良かった使用人を与えられたミシェラは、のびのびとした環境と豊富な資金の元、自由気ままに大好きな魔法薬を作ることができた。


 こんなに大きな屋敷を建ててもらって良かったのかねぇ、と言う両親に、ミシェラはいいんじゃない、と言った。


「私はみんなの願いを叶えたの。対価としては安いくらいよ」

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