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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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7 島への招待

「カウンターの裏とか、確かにあいつらがいるかもしれないからアタシがカギを探してくるほうがいいわね」

「よろしくね。それじゃ私は物資を積めるだけ軽トラに積む作業してる」


 軽トラの運転はできるのかって?

 もちろんですとも。

 私は防災用品会社勤務だ。当然、商品を積載してあちこちに持っていくこともある。

 その時は軽トラを使うことが多かった。


 まず私はヘッドライトを確保すると、大型のワゴンを押して、とにかく水のケースを積んだ。島の水はあのまま飲めるかどうかまでは確認できていない。となると飲用のための水の確保は絶対だ。

 重いけど、そんなこと言ってられない。

 ワゴンに積んだ水を表の駐車場の端っこにあった軽トラに積んで、と何度か繰り返し、とりあえず2L✕6本入りの水のケースを20箱確保した。私と迦楼羅だけならこれで約3週間分だ。次に向かったのは食料品の棚。缶詰やカロリーバー、フリーズドライなど手あたり次第に入れていく。ラッキー、防災用食料棚発見!

 持ってきたお金足りるかな……。

 レジが生きてなくても、人として略奪みたいなことはしたくない。それは私が人間として生きる上での矜持だ。これを捨てたら私はあの時災害現場で見たやつらと同じになってしまう。


 食料品をビニール袋に入れて軽トラの荷台に積んだ後は本命だ。

 向かった先は園芸売り場。

 ブルーシート、野菜の種、肥料、ロープ、鍬。

 いずれ自給自足も考えなければいけなくなるだろう。

 そしてこちらからの物資の調達も近いうちにできなくなる。

 自慢じゃないが、野菜作りは初心者に毛が生えた程度の知識しかないので、一から開墾とか無理だ。

 ならばホテルの窓から見えた畑らしき場所の再利用を考えたい。

 園芸用品コーナーに行ってそこにあった「野菜の育て方<初心者向け>」という本を始め、使えそうな道具を適当にワゴンに積み上げ軽トラの荷台を埋めていく。ちょっとやりすぎた?

 園芸のところのレジに財布から出してきた一万円札三枚を置いておく。足りなかったらごめんなさい。また払いにきます。

 最後に自分の乗ってきた自転車を積む。これは貴重な足だ。特に向こうでの。


「結花!鍵あったわよ!」


 グッドタイミング。迦楼羅がカギを探し出してきてくれた。


「アンタ行かなくて正解だったわ。裏の従業員用クローク、ゾンビが残ってた」

「で、ゾンビは?」

「瞬殺」

「なら行きましょう、迦楼羅。そろそろ時間だわ」


 もうすぐ夕方6時だ。道さえ混んでなかったら5分で着くけど、さすがに5分じゃ無理だろう。

 私は運転席に乗り、迦楼羅が助手席。彼は手にはバールを持ったままだ。


「行くわよ」


 駐車場を出たところでゾンビが複数待っていた。エンジン音で集まってきたのだろう。


「結花!アタシがやるから、アンタはアクセル踏んで突っ切りなさい!」


 窓を開けて迦楼羅がバールをかざす。

 なるほど。


 私は思いっきりアクセルを踏んだ。

 迦楼羅が窓からかざしたバールが凶悪な打撃になってゾンビたちを粉砕していく。

 ミラー越しに倒れてしまったゾンビを見ながら、夕暮れの道を私は神社に向かって車を走らせた。


 午後6時ちょうど、鳥居が青白く光って、私は迷わずその光に向かって突っ込んだ。

「え?え?何?何?」

 隣で戸惑う迦楼羅の声に答えてる余裕はなかった。


 青白い光の向こう側に着くと、そこも夕暮れだった。

「え?え?何、ここ?神社の境内……には見えないわね」

「ようこそ未来の避難場所へ」

 私の言葉に迦楼羅が驚いた顔を見せる。

「未来……ですって?」

「ええ。……ええと、私もまだよくわかってないからここの調査はこれからなんだけど、とりあえず分かってることだけでも説明したいからあっち行きましょう」

 私はノロノロと軽トラを運転し、迦楼羅を比較的しっかりした造りの市庁舎へ連れていく。

「ここは……?」

「かつてこの島に人が暮らしていたころの市庁舎よ。中にここが未来である証拠があるわ。着いてきて」

 まだ夕暮れの色が濃いけど、それなりに話は長くなりそうだったからヘッドライトをしたまま私は迦楼羅を案内した。



 ≪神集島へようこそ≫と書かれた島の地図が貼られている壁には誰かの手作りらしいカレンダーが貼ってあった。

 それはあの時本土から切り離されたこの島の時間をカウントするために必要だったのだろう。


「2086年……ですって?」

 

 そう私も最初はこのカレンダーに気づかなかった。でも今日の帰り際、一度ここに来てこれを見つけたのだ。

 それを見て納得した。ここは私がいた時間軸より最低でも60年以上未来の島だと。


「凝った冗談……」

「だと思う?」

「……じゃないわね。ここにはゾンビがいないもの」

「どうしてわかるの?」

「臭くないからよ」


 なるほど。

 腐臭は確かにここにはない。


「それでどうしてここを知ってるの?」

「偶然よ」

「偶然?」


 私がここを見つけた経緯を話すと、迦楼羅はやっと現実を飲み込んだみたいだった。


「ゾンビがいない無人島なんて、避難先としては最強ね」

「でしょ?で、あっちとこっちを繋いでる条件なんだけど、毎時6時、9時、12時に鳥居が青白く光るほんの数秒がどうもゲートって私は呼んでるんだけど、ゲートが開く条件みたいなの」

「それであんなに時間を気にしてたのね」

「そう。本当に数秒だから、そこからまた何時間かゾンビがいる中で待つの嫌だったから。下手したら致命傷だし」

「それは確かに。で?どうするの?」

「どうするって?」

「何から始めるのかってことよ」

「それは明日からにしよう。もう今日は疲れたからご飯食べて寝たい」

「……まあ一日色々あったもんね。で、どこで休むの?」

「寝袋持ってきて、この庁舎の仮眠室でも使おうかな」

「まあここいきなり崩れたりとかもなさそうだもんね……」

「うん、だから、基本はここを拠点にして、明日は自転車で島を見て回ろうと思ってる」

「自転車?」

「そうだよ。ガソリンは節約しなきゃ。特に軽トラは後何度か向こうと行き来するのに使いたいから」


 私は水とカロリーバーを自分の車の積んであったダッシュボードから出して、水のペットボトルを迦楼羅に投げる。


「とりあえず今日の報酬分よ」

「ありがたくいただくわ」

「カロリーバーもあるわよ」

「そっちはいいわ。味も分からないし」


 味覚はないのか……。あとでノートに書き足しておこう。

 そして私たちは簡単な食事を床に座ったままして、寝袋と毛布を引っ張り出してきて、庁舎の仮眠室へ。

 迦楼羅に毛布を渡したけど「暑いのも寒いのも分からないからいらないわ」って言われたけど、単純に私が嫌なので無理やり渡した。

 そしてしばらくは何となく話をしていたけど、色々ありすぎて疲れ切っていた私はほどなく眠ってしまったのだった。

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