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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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48 防衛のための知恵

 ナオトさんのリクエストで、お昼ご飯は味噌の焼きおにぎりになった。

 おにぎりをユウキや彩羽ちゃんも入れてみんなで作って、フライパンに並べて焼いた後に、みりんで溶いた味噌をおにぎりの表面に塗って焼く。焦げないように気をつけないといけないけど、焼きおにぎりのおいしさは間違いない。

「うわ、めっちゃいい匂いだなぁ」

「これ、結花さんの作った味噌?」

「そうだよ。来年も作りたいから、みんなで大豆作ろうね」


 味噌の焼きおにぎりは美味しかった。

 子どもたちも気に入ったらしく「また食べたい!」とリクエストされたので、来年も頑張って味噌作りたいな。

 子どもたちは味噌づくりもしてみたいと言っていたので、教えようと思う。桃ちゃんも「自分で味噌って作れるのね……」と感心してた。その時「トリックに使えそうね……」などと不穏なことを呟いていたのは聞かなかったことにした。

 それから午後は会議の続き。


 

 次の優先度は、防衛ラインだ。

 ツバサくんが、残っていた土嚢袋を確認してくれて、日の当たらないところにあったおかげか、経年劣化はあるけど、数回なら使えそうだと判断してくれた。

 

 鳥居から直線で土嚢で壁を作るのが基本だ。

 大きめの石も使えるだろうと言うことで、石と土嚢で入ってきた車が乗り越えられない程度の低い壁を鳥居の両端に作り、入ってきた車の誘導路にする。その道の先にツバサくんお手製のスパイクトラップを敷き詰める。この作業は子供たちも楽しかったみたいで、ツバサくんに教えてもらいながら土嚢袋を作るお手伝いをしていた。

 

 鳥居から伸びる土嚢と石で作られた壁は真っすぐな道を作り、行き止まりにはスパイクトラップが待っている。

 でもこれだけじゃ足りない。私はツバサくんに相談して、スパイクトラップの仕掛けを壁の外側にもいくつか設置することにした。

 この罠が作ってくれるのは「時間」だ。

 侵入者の足を止め、私たちが逃げるための時間を作るための仕掛けだ。車を降りてきた侵入者から車という足を奪い、降りてきたらこれを踏ませて行動の自由を少しだけ奪う。そうすることで稼げる時間で、私たちは態勢を立て直せる。

 

「なら、壁の外側のスパイクトラップはちょっとえげつない感じにしましょう」

「えげつない?」

「はい」

 ツバサくんが、少しだけ笑った。

「踏んだら終わり、ってやつです」

 さらっと言うけど、その内容は軽くない。

「具体的には?」

 私は聞き返す。

「内緒です。ただ、見えない位置に仕込む。あと、わざと“安全そうな場所”に置く」

「……誘導するってこと?」

「そうです」

 ツバサくんは地面を指でなぞる。

「人って、無意識に“歩きやすい場所”を選ぶんですよ。平らなところとか、開けてるところとか」

「……確かに言われてみれば」

「はい。で、そこで踏ませる。足を怪我したら、人は動けなくなります。狙うのはそういうことです」

 それは経験から来る言葉だ。

「それ、かなり危なくない?」

 ハルくんが顔をしかめる。

「俺たちも引っかかる可能性ありますよね」

「ある」

 ツバサくんはあっさり頷いた。

「だから土嚢の内側も含めて“罠の場所を全員で共有する”のが前提です」

「……なるほど」

「あと目印は作る。でも外からは分からないように」

 私は少し考える。

「それ、人間にも使う前提よね」

 言葉にすると、空気が少し重くなる。

「……はい。むしろ人間に使うための罠です。ゾンビには頭への物理攻撃以外は、効かないでしょう?あいつらはずっと動き続けますから」

 ツバサくんが静かに言う。

「あの秋葉原の連中みたいなのが来たら、話し合いで済む保証はない。飛び道具を持っていたら躊躇なく使いますよ、ああいう奴らは」

 誰も、反論しなかった。

 私は、作りかけの防衛ラインを見る。


 土嚢。

 石。

 スパイク。


 全部、“誰かを止めるため”のもの。


「……使わないで済むのが一番ね」

 小さく呟く。

「そりゃそうです」

 ツバサくんが苦笑する。

「でも、“使える状態にしておく”のは必要です」

 少しの沈黙。

「分かった。やりましょう」

 私ははっきりと言った。

「ただし条件」

「条件?」

「位置の完全共有。子どもたちは絶対に近づけない。あと――」

 ずっと置いておくわけにはいかない。

「“解除方法”も必ず作ること」

「解除?」

「私たち自身が使えなくなったら意味がないでしょ」

 ツバサくんが、少し驚いた顔をする。

「……確かに」

「攻めるためじゃない」

 私は線を引くように言う。

「“逃げるため、時間を作って態勢を立て直すため”の罠よ」

 その言葉に、迦楼羅が、ふっと笑った。

「そうね。この島で好き勝手はさせたくないわ」

「じゃあ、設置位置決めましょうか」

 ツバサくんが立ち上がる。

 さっきまでの“作業”とは違う。


 これはもう――明確な“防衛計画”だ。


 子どもたちの笑い声の向こうで、大人たちは、静かに“備え”を重ねていく。


 その準備が使われないことを願いながら。

 それでも。

 ――使う日が来るかもしれないと、分かっているから。

 覚悟を積み重ねるように土嚢と石と積み重ねていく作業をした。

 

 ちなみに鳥居を私たちが使うための出入り口として、機能不全にならないために、土嚢の壁を少し開けて軽トラと軽自動車が通れるくらいの幅は確保しなければということで、開けた場所には中身が空気の空っぽの土嚢をそれらしく積むことにした。これで出入りはできる。

 スパイクトラップもほぼ完成だ。

 そして、土嚢の外側に作ったスパイクトラップは、場所を全員で共有、そして私たちには分かるように、スパイクトラップを置いた土嚢の外側に赤いテープを貼り付けた。でもこれ夜だと分からなくなるから、防水の蓄光テープのほうがいい、とツバサくんの意見で、調達物資の優先リストに加えた。さすがに蓄光テープは私の備蓄にはなかった。

 それから空き缶を使って、非常事態の音を確保したいということで、鳥居の下部分に取り外し可能な踏んだら音を立てる非常ベルのような細工も作った。取り外し可能にしたのは、私たちが出入りするときには外しておきたいからだ。


 防衛ラインが完成したら、次の調達の遠征の計画だ。

 今度のメンバーは、私、迦楼羅、ナオトさんの三人に決まった。ナオトさんの以前勤めていた郊外の工務店まで行くことを考えると、少しガソリンが心もとない気がしたが、ハルくんに教えてもらったガソリンスタンドの手動ポンプを使って何とか動けるようにするしかない。その時、できれば軽トラの交換用のタイヤも買っておきたい。まだ大丈夫だけど、替えはあったほうが良いと言うのがツバサくんの意見だった。

 それからさらに数日は「訓練」に費やした。

 ツバサくんとサバゲ―好きなハルくんの指示で身を隠す方法や足音を立てずに移動するやり方など即席だけど全員で学ぶ。子どもの頃のかくれんぼみたいで少し楽しかった。


「じゃあ次の遠征は、まず手近なガソリンスタンドに寄って、ガソリン補充、タイヤ補充からの幸手にあるナオトの知ってる工務店に行って、発電機と使えそうな工具を買わせてもらうコースでいいかしら」

「もし余裕があればどこかホームセンターにも。お米と小麦粉の保存袋と、蓄光テープを買いたいの」

「分かったわ。じゃあそのルートで行きましょう。決行は明日朝6時のゲートで」

「分かった。じゃあ荷台には俺が乗る」

 ナオトさんが自ら荷台乗りを申し出てくれた。

「俺は頑丈だし、この間買ってきてくれたこのミリタリージャケットなら寒さは感じないからな」

 

 そうして明日の出発の準備を整えて、私たちは早めに休むことにしたのだった。

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