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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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4 ホテルの探索、ホームセンターの異変

 市庁舎から一番近いホテルに行ってみると、入口は壊されていて入りやすかった。


「おじゃましまーす……」

 

 ロビーに入ると、ひどく埃っぽくてマスクをしてきてよかったとホッとする。

 人の気配はない。

 ただ冷え切った空気だけがここにはあった。


「ええと……まず厨房」


 食料は残っていなくていい。それは考えてない。

 ただ、使えるものを探しに行くだけだ。


 厨房は荒れていて、調理道具が転がっていた。

 ステンレスの台には錆が浮いている。

 でも、磨けばまだ使えそうだ。

 それより大事な確認がある。

 私は蛇口をそっとひねってみた。固い。そしてやっぱり水は出ない。

 うん当たり前だ。上水道が生きてるはずがない。

 と、思った時、ゴボゴボと音がした。

 

 え?


 蛇口から出ていたのは間違いなく水だった。

 

 思わず手を当てると冷たい水で間違いなかった。少し蛇口はひねりにくいけど、ここには水が生きてる。この瞬間、生存確率が跳ね上がった。

 そうか。

 この島が数十年も持ちこたえたのは、水があったからか。

 おそらくは地下からの湧き水。あとで再度市庁舎の観光案内を確認してみよう。



 水が出ることを確認して、私は次に上層階の客室へと向かった。

 昔ながらのキーを差し込むタイプのホテルだったので、フロントで見つけた客室の鍵束を手に2階へ上がる。

 うん、階段もまだ崩れるような様子はないのでとりあえずは安全だろう。

 長い廊下は静まり返っていてちょっと怖い。

 私は一番手前の部屋を開け、中に入ってみた。


「あ……」


 その部屋のベッドにはかつて人だったものの亡骸があった。

 すでに骨となっているので一瞬驚いただけで恐怖はない。

 

 ベッドのそばのテーブルにメモらしきものがあったので手に取ってみる。

 かさかさに乾いてしまっている紙にはまだ読める文字が残っていた。


『本土へ行けばよかったのかここまできてもわからない』

『でも最後はこの島がいい』


 ひょっとしたら、この人は市庁舎で見た日記を残した人なのかな……。


 私はベッドに向かって一度手を合わせると、ベッドを避けるようにして窓に向かい窓を開ける。

 一気に部屋に外からの空気が循環し始める。

 窓を開けた向こうには畑らしき跡地が見えた。


「うん……普通の宿泊施設には違いないな。なら、次は……」


 部屋を出て、次に向かったのは必ず各階にあるはずのリネン室だ。

 廊下の一番端っこのリネン室を見つけ、ドアが開いていたので中に入ってみたけど空振り。残っていたのは埃をかぶった古い毛布が数枚だった。

 他の階も同じような状態だった。

 おそらく、他の宿泊施設も似たようなものだろう。

 古いリネンが残っていたら、救急用品、三角巾やマスク代わりに使えると思ったんだけどなぁ。

 あ、待てよ?そうか、客室のベッドから剥がせばいいんだ。

 

 ふと時計を見ると、そろそろ12時が近い。

 私はホテルを出ると徒歩で鳥居に向かった。

 車は使わない。まだ荷物を下ろしていないし、どうせなら、と考えていることがあるからだ。

 神社から家までは走ればいい。



 鳥居の前に来ると、やはり12時ジャストで鳥居が青白く光った。でも少し光が弱く見えるのは昼間だからだろうか。

 私はその光の中に駆け出した。

 果たして、その向こうには見知った町があった。ただ少し静かすぎる。


「……まさかもうゾンビここまで来ちゃった……?」


 一日そこらで?

 噓でしょ?


 私はスニーカーの靴紐をしっかり締め直して、静かすぎる町を走った。

 いつもならこの時間は買い物客やランチタイムであちこちの店から声が聞こえてくるのに。

 何より——ここから見える大きな病院。

 いつもなら、ひっきりなしに人が出入りしているのに。


 今日は誰もいない。


 私は背中を這う冷たさみたいなものを振り払って我が家へと走った。

 部屋の中は私が出かけた時と何も変わっていなかった。

「ええと……」

 クローゼットの中のお出かけ用の小さなリュックを出して、洗面台の引き出しに無造作に放り込んでいた歯ブラシセットの替えと石鹸をいくつか、それからタオルを数枚放り込む。衛生管理は生存率のために必須だ。

 幸いあの島には水がある。衛生環境を保つことは可能だろう。


「よし」


 次に向かうところは決まっている。

 近所のホームセンターだ。

 私は外に出ると自転車に乗って徒歩30分くらいのところにある大きなホームセンターへ向かった。

 自転車で向えば10分もかからないくらいだ。

 道中、一台の車とも一人の人間ともすれ違わなかったのが不気味すぎた。

 ホームセンターに着くと、そこはいつも来ている場所とまったく変わった光景になっていた。

 駐車場には無数の車が取り残され、店内の照明はついていないのが外からでもわかる。

 人の気配がない。

 私は外の園芸品コーナーでスコップを手に取る。

 しまった、ヘッドライトを持ってくればよかったと悔やむ。

 だって一日そこらでこんな壊滅状態が始まってるなんて思わなかったから。

 

 みんな避難所にいるのかな……。

 ——それとも、もう。


 店の入り口に近づく。

 自動ドアは生きてなかったので、無理やり手でこじ開けた、その瞬間——


 ——ガンッ!!


 店の奥からけたたましい音が響いた。


 誰か、いる?


 

 

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