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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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11 給料、社割に全額突っ込んでみた


「さて、と」

 倉庫の中を見回して、私は目当てのものをすぐ見つけた。

 棚卸をしたときにここにあったはず、って言うのは覚えてたんだよね……。


 私が一番持ち出したかったのはポータブル電源とソーラーパネル。


 さすがにこれは高すぎて買えてなかった。

 唯一買えたのはソーラーバッテリーつきのスマホ用のモバイルバッテリーくらい。


 迷わずポータブル電源と大きめのソーラーパネルに付箋を貼り、迦楼羅がそれをシャッター前に置いていく。

 あとは、目についてこれにしようと思ったものに次々と付箋を。


 テント。

 ブルーシート。

 ヘルメット。

 ノーパンク自転車と折り畳み式リヤカー。

 大きめのランタン。

 長靴。

 防刃手袋セット。

 軍手。

 防じんマスクセット。

 圧縮タオル。

 のこぎり。

 スコップ2本。

 燃料添加剤。

 ドラストに売ってる各種常備薬とビタミン剤。

 充電式乾電池各種と充電器。

 追加の救急用品。


 うん、今月と来月の給料を全額社割で買ったとしてこんなもんかな。

 ……まあ給料出るならだけど。


 その時 倉庫の奥で、何かが動いた。


「……誰かいる?」


 思わず声が出る。

 今日は一応休日。でも誰か休日出勤で出ていたのかもしれない。


「たすけ……」


 返事があった。

 でも。

 遅い。

 言葉が、妙に引っかかる。


「結花、下がりなさい」


 迦楼羅の声が低くなる。

 微かな腐臭が鼻を突いた。


 その瞬間。

 影が、こちらに向かってきた。

 

「っ!」


 人間の動きじゃない。

 青黒い肌になりかけたその人がこちらにまっすぐ向かってくる。


「結花!車に逃げなさい!あいつはアタシに任せて!」


 あのゾンビになったばかりであろう同僚を見て、私はショックを受ける前に、じゃあさっきまで人間だった人を噛んだ感染源がいるはずだと考え、倉庫の奥を見ながらスコップを手に取る。


「結花!何してんの、行きなさい!」

「迦楼羅。その奥にもう一匹いる」

「え?」

「その人はさっきまで助けを求めてた。つまりさっきまで人間だった。ということは」

「こいつを感染させたやつがいる……?」

「そういうこと。って、そこ!」

 私は思いっきり積み重ねたパレットの向こう側にスコップを投げつけた。

 スコップが転がる音がして、パレットの陰からのっそり現れたのはもう完全にゾンビと化していた同僚。胸の作業着の名札で分かる、資材課の課長だった。腐臭がすごい。もう昨日の段階でゾンビになってしまってたんだろう。


「課長……」

「上司?」

「うん」

「でももうあれは仕事できないわよ」

「だよね」

 

 私はじりじりと後ずさりながら、軽トラに向かってダッシュした。運転席に飛び乗りエンジンをかけると、そのまま倉庫の中に突入する。

 

 覚悟を決めなさい、結花。

 生きるために敵を葬るのは生存本能よ。

 一度大きく深呼吸して、私はアクセルを踏み込んだ。


 鈍い衝撃が車体に伝わる。

 何かを乗り上げて、軽トラがわずかに揺れた。


 見れば二体のゾンビは倉庫の床に倒れて、課長であったモノの作業着の袖口からひび割れているのにまだ動いている腕時計が見えていた。


「……」

「結花。車こっちにつけて」

「……」

「結花!しっかりして!時間がないわよ!」


 迦楼羅の声に現実に引き戻された私はトラックを反転させた。


「ここにある付箋を貼ってあるものだけでいいのね?」

「うん」

 迦楼羅が軽トラの荷台に次々と荷物を積んでいく。


「ここ、防災会社だからどうせそのうち自治体の回収が入るわ。だからその前に来ておきたかったの」

「そうね。防災オタクのアンタの目利きは信用してるわ」

「ありがと」


 まだちょっと手が震えてるけど、しっかりしなきゃ。まだやることがある。


 倉庫の棚へ行った私は、ガソリン携行缶とポンプを持ち出した。


「迦楼羅、荷物の積み込みはお願いね。私ガソリンの回収してくる」

「ガソリンの回収って、ガソリンスタンド?」

「ここにはいっぱいガソリンがあるからね」


 車がある以上、ガソリンは必須だ。でもガソスタなんて行っても入れられっこない。

 だから目の前にある車からガソリンを抜かせてもらうことにした。

 5リットルサイズの携行缶なら私でも持てる。倉庫の脇にある駐車場には車が数台止まっていたので、その車からガソリンを抜き取り、次々と軽トラに乗せていく。ついでに軽トラのガソリンも補充しておいた。


「結花!終わったわよ!」

「ありがとう!じゃあ行こう!そろそろ行かないとあっちに帰れなくなる!」


 軽トラの時計は午後5時半になろうとしていた。

 荷台をラッシングベルトと言う荷締めベルトで固定して荷台を確認して、私は運転席に乗り込む。


 エンジンをかける直前、ふと振り返った。


 ――もう、ここに戻ることはない。


 長年勤めた会社に私は心の中で別れを告げた。

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