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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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1 防災オタク、ゾンビパンデミックに遭遇する

一度書いてみたかったゾンビパンデミックからの避難と拠点作りがメインのお話です。割と自分で用意している防災用品が出ます。

50話くらいで終わらせる予定です。

7話までは30日までに。以降はストックがある限り毎日20時更新です。

今日は3話まで、18時、19時、20時で更新します。

 私の部屋のクローゼットの半分は、非常食で埋まっている。


 フリーズドライのご飯、レトルトカレー、羊羹、ビスケット、栄養バー。

 さらにその横には、携帯トイレの箱が二十個。水は500MLが60本、ケースでおいてある。

 一人暮らしの20代女子の部屋にはあまりにも可愛くないものばかりだ。


 友人の千里に言わせれば、やりすぎ、らしい。


「そこまで備蓄するなら、もうシェルター作りなよ」


 と呆れ顔で何度も言われた。

 そりゃ作れるならシェルター作りたいですよ。

 

「違うの。これは現実的な備え」


 と私は都度反論する。


「じゃあ何かあったら結花のとこに避難してくるわ」

「いいけど、ある程度、自分が生きるために必要なものは持ってきなさいよね」


 私は、防災オタクが高じて防災用品会社に就職した。

 そして——元・被災者でもある。

 あの時、避難所で配られた乾パンの味は今でも覚えている。

 喉が渇いて、でも水は少なくて。

 家族はその災害でみんな亡くなり、まだ中学生だった私は地方の親戚の家に預けられ、何とか中学高校大学を出て自立することができた。


 だから私はあの経験から決めたのだ。


 二度と、無防備ではいないと。


 希望通り都内の端っこにある防災用品会社へ就職した私は、社内で取り扱っている商品を社割で買いまくった。

 同じ社内の人たちにもやりすぎでは?と呆れられるくらい。

 それでも私は備えをやめない。

 備えのない怖さが身に染みているからだ。


「今日の夕飯は……」


 私は棚から缶詰を取り出す。

 ローリングストックで新しい缶詰を買ってきたので古いものを今日の晩御飯に使うと決めていた。


「鯖味噌」


 賞味期限、明後日。

 ローリングストックとしては完璧。


 その時だった。

 スマホが震えた。

 緊急速報。


 画面に表示された文字を見て、私は首をかしげる。


『原因不明の暴動が各地で発生』


 暴動?


 ニュースを開く。

 映像は、休日の渋谷だ。

 人が走り回り、警察が叫び、そして——大きく画面が揺れた。


 カメラが転倒する。

 映ったのは。

 目の焦点が合っていない血まみれの男だった。

 男はふらふらと歩き、目の前の人に噛みついた。

 私はテレビを凝視する。


 沈黙。


 そして、ぽつりと呟いた。


「……ゾンビ?」


 いやいや。

 そんなわけがない。

 これはきっと、何かの事件だ。

 冷静になろう。


 私はスマホを操作する。

 情報収集。

 SNS。

 ニュース。

 動画。


 ——そして五分後。


「……ゾンビだこれ」


 認めたくないが、どう見てもゾンビだ。

 噛まれた人が倒れ、数分後に起き上がる。

 目の焦点はあっていない。酔っ払いのようにがくがく動いてる。


 そしてまた目の前の人を噛む。

 同じことが起こる。

 感染。

 増殖。


 それはパンデミックと呼ばれる現象。


 私は立ち上がった。


「よし」


 避難するならまだ間に合う。

 ここは都内の端っこだ。都内の一部で起こっているだけなら、まだここには届かない。

 自衛隊や警察の奮闘を期待して、私は避難しよう。

 

 スマホの通知をちらりと見ると、避難所開設のお知らせが自治体から届いていた。

 でも私は何か起こった時に一人で自主避難する場所は決めていた。

 玄関先にいつも置いてある避難リュックを背負い、スニーカーを履く。


「自転車の鍵は、と」


 通勤バッグから部屋と自転車の鍵を出す時にふと目に着いたのは毎日持ち歩いている0次防災ポーチだ。

 一応、それも防災リュックに突っ込んだ。

 リュックの中身は、

 

 ペットボトル2本。

 アルファ米おにぎり。

 飴とビスケット。

 護身用ライト。

 救急キット。

 圧縮したバスタオルとフェイスタオル。

 アルミブランケット。

 ゴミ袋数枚。

 携帯トイレ3個。

 乾電池のモバイルバッテリー。

 いつも持ち歩いている0次防災ポーチ。

 これは1日から2日を生き抜くための最適解の中身だ。


 まずは三階の自分の部屋を出て一階まで駆け降りる。非常時にはエレベーターは使わないのが基本だ。自転車置き場へ行き、自分の自転車を出す。

 目指すのは、駅の向こうにある神社だ。あそこなら境内に避難できる。


「よし」


 もうかなり暗くなっている町の中を全速力で飛ばす。

 途中のコンビニに寄って、念のため乾電池と水を追加で買った。

 スマホは命綱だからね。


 そのまままっすぐ神社へ向かっていると、見えてきた鳥居が何だか変だった。目の前まできた時、鳥居の内側がぼんやり青白く光ったのだ。

 鳥居の向こうは暗い境内のはずなのに。

 だけど、ここまで来て避難しないという手はない私は、自転車に乗った勢いのまま、鳥居をくぐった。


 その鳥居をくぐれば。


 ——少なくとも、今日の夜は無事に生き延びられる。


 そう思っていた。

 だからスピードを落とさず鳥居に突っ込んだ。


 まさか。


 この避難が。

 100年後の世界への避難になるとは、この時の私はまだ知らなかった。

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