国民大会
この世界で一番平和な街と呼ばれるゴールデンシティいう緑豊かな国があった。100万人が暮らすこの国は、食物の宝庫で、ありとあらゆる農産酪農で人々は豊富な資源のもと生活している。その頂点にいる若き女王アクアは国民の生活を第一に考える盟主であった。毎月必ず国民総会を開き、女王自らが皆の前に立ち、国民の悩み事を解決していく。
その姿を見ている全国民は、寵愛を感じ女王を愛していた。アクアの先代である父の前国王と母は魔王の襲来に立ち向かい、軍団を率いて戦いに向かったが、魔王と差し違えて亡くなってしまっていた。それから5年の月日が経過し、アクアは今年で20歳を迎えたばかり。若き国の主は、父と母が生きていればどう国を動かしていただろうか。迷ったときはそう考えるようにしていた。
国の中央に位置する巨大な城。アクアの住む王の城だ。アクアは王室の座に、まっすぐ伸びた白木のような美しい佇まいで座っていた。長く伸びた水色の髪の頭には母が遺した金のティアラが輝く。そして王室にはドタバタと大きな足跡が近づいていた。
「アクア女王!」
ドアを勢いよく開けて、政務官のレンダンが王室内に入ってきた。
「まーた勝手に国民大会の催しの予算を倍額にされて! このままだと国防予算と同額になりますぞ!」
レンダンは低身長で120センチの身長だった。アクアに物申せる数少ない人材であった。今日も昨日もいつも怒ってばかりだったが、迫力は皆無で子供が駄々をこねているようにしか見えない。国政のことや膨大な知識は頼りになるが、如何せんすぐに怒る扱いづらい性格であった。
「わかっていますよ。レンダン、先の魔王戦争からちょうど5年です」
「ですから、国防費を上げるべきです!」
レンダンの口から唾が床に飛び散る。アクアは王座から立ち上がり、レンダンはアクアの顔を見るために大きく見上げなければならなくなった。
「亡くなった国民の残された家族の空白は埋まりません。私にはよくわかるのです。少しでも国民の心が癒やせるのなら、尽力したいのです」
アクアの視線は部屋の北側に掲げられた一つの絵に向けられた。父と母の肖像画であった。
先代から政務官を務めてきたレンダンは言い返す言葉が無かった。現に実際にゴールデンシティの現状は、全面的に平和を謳ってはいるが、5年前の戦争で失ったものは大きい。
国民大会は毎年行われており、全国民が参加できる武道料理大会であった。年代別の男の部、女の部があり、武道大会は名の通り武技で競い合うのだが、料理大会も白熱しており、ルールは新しい料理を発明し味を競う。高齢の国民も参加でき、皆が大きく前のめりに参加していた。
レンダンはブツブツ文句をアクアに聞こえる声でつぶやきながら王室を出ていった。
「今日は聞き分けがいいのですね」
レンダンに聞こえるか聞こえないかの声量でアクアも呟き返す。
今回の国民大会もついに一ヶ月後に迫っていた。全国民参加の大会は規模も大きく、今回の開催期間は10日間。それぞれの地方から勝ち上がった者たちがこの王都に集まる。
すでに大会の予選は始まっていた。




