第9話「SSSランク様、ご来店ですってよ!?(本人めっちゃ庶民派)」
第9話「SSSランク様、ご来店ですってよ!?(本人めっちゃ庶民派)」
(副題:ギルド登録で、コハルまたツッコむ)
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次の日。
「……私、今日から正式に冒険者……なんだよね?」
制服から平服に着替えながら、しみじみ呟く。
いや、冒険者は目指してたよ? でもまさかいきなりSSSランクで登録されるとか、誰が予想したよ?
「派手すぎるデビューなんて望んでなかったんですけどぉぉぉぉ!!!」
部屋の天井に向かって叫んだところで、現実は変わらない。
しかも、街中ではすでに噂になっていた。
「昨日の卒業試験で、山5つ消し飛ばした子がいるらしいぞ!」
「ギルド史上初の入会時SSSランクだって!?」
「えっ、名前なんだっけ? コハ……なんとか?」
──聞こえてんだよ!!! こっちはまだ自己紹介も済んでねぇっつーの!!
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で、ギルドの入り口に到着。
看板には《冒険者ギルド 王都本部》の文字。
ドアを開けた瞬間、場が一瞬止まった。
ギルド職員「……あの、そちら様は……?」
「えっと……昨日、卒業試験で登録の紙をもらって……コハル・ハルノです……」
職員、ビクゥッとした。
「こ……こ、コハル様!?!?」
え、なんで“様”!?
私そんなキャラじゃないし!
「あの、もう準備は整っておりますので、すぐに個室の応接室へ──!」
「いやいやいやいや! 普通にカウンターでいいです!」
「いえ、SSSランク様は別対応ですので!!」
「クソぉ! 偉くなると気軽にパンひとつ買うのも難しくなるのかこの世界は!!!」
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応接室に通されてすぐ、出てきたのは──
「ようこそ! ギルドマスターの代行を務めております、ラメリアと申します!」
めっちゃ美人なお姉さん。まぶしい。胸もまぶしい。てかまたかよ!!
「本日は特別対応として、SSSランク登録の特例処理と、専属の受付嬢のご紹介を──」
「専属!?」
なんかもう、スゴイ人扱いになってる。
なのに私、中身はAすら無い魔法オタク系女子高生(元)なんだが!?
「では、受付担当に──エマ、入って」
「は、はいっ!」
現れたのは、ショートカットでほんのり気の強そうな女の子。
年は私と同じか、ちょっと下くらい?
「コハルさんですね。……あの、あの魔法……本当にあなただったんですか?」
「え、う、うん。たぶん……そう……」
「……やば……推せる……(小声)」
「えっ、今なんて?」
「いえっ! 登録を進めます!」
……え、なんかギルドの子にファンついた!?
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登録完了後、エマに案内されてギルド内の設備を見学。
トレーニングルーム、クエスト掲示板、報酬受付──ひと通り全部見た。
その間ずっと、エマがチラチラこちらを見る。
「……えっと、なにか?」
「いえ、ただ、コハルさんってその……見た目、普通なのに……中身がバケモノすぎて……」
「悪口だよねそれ!? めっちゃ普通に悪口だよね!?」
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帰り道、アリサとリリィとゼイドが合流。
「なんか……また騒ぎになってたわね」
「……リリィ、お姉ちゃん、すごいっていわれてた。えらい?」
「ううん、全然えらくない! 私は地味にやりたいのにぃぃぃ!!!」
ゼイドは無言で今日もお菓子をくれた。
「クッキー。限定味」
「ゼイドはどこからそんな情報仕入れてんの!? ギルドよりよっぽど有能なんだけど!?」
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(ウィンドウ表示:「ギルド登録完了」「受付担当:エマ(新人)」「街のうわさ:レジェンド系新人登場」「ゼイドの手土産スキル:MAX」)