第8話「卒業試験と、厨二病が世界を終わらせかけた日」
第8話「卒業試験と、厨二病が世界を終わらせかけた日」
(副題:世界終末行進曲、発動──ッ!!)
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え、ちょっと待って。
「明日、卒業試験です」
って、先生が言った時、私は本気で聞き返したからね。
「……え? もう1年経ってたの??」
時が経つのって、マジ残酷。異世界テンポ、えぐすぎ。
というわけでやって来ました、卒業試験。
試験内容は、スキルか魔法を全力で使い、その威力と技術力を測定してギルドランクが決まるというやつ。
Eランク以下は卒業できず、留年。
「これで私、晴れて冒険者! 目指せCランク、街の人気者〜☆」とか呑気に思ってたあの頃の私を、殴りたい。
だってさ……一人目で出てきたのが、アリサだよ?
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「アリサ・レイシュタイン。試験、始めます」
氷の女王、登場。
彼女は両手を広げ、静かに魔力を展開。
「《氷界創成・零ノ律》」
その瞬間、空気が凍った。
目の前に広がるのは氷の宮殿。氷柱、氷壁、氷狼……全部美しい。
でも、それ以上に強烈だったのは試験官の声だった。
「ランク判定──A!!」
「学園初のA判定です!!」
どよめく会場。アリサはクールに微笑んで戻ってきた。
「……ふふ、まぁ当然よね」
「……なにこの少女漫画系ヒロイン展開」
私はその後ろで、胃に穴が開きそうだった。
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──そして、次が私。
「コハル・ハルノ。前へ」
いや無理無理無理! アリサの直後とか無理ゲーでしょ!?
でももう逃げられない。私は腹を括って前に出た。
「えっと、創造魔法使いのコハルです……よろしくお願いします……(震え声)」
「では、全力で魔法を使ってください」
「い、いやいや、あの……ちょっと抑えた方がいいかと……」
「本気でどうぞ」
試験官ニコリ。
「え、ほんとに? 本当に全力でいいの? マジのやつ?」
「本気でお願いします」
「この言葉、録音したい……!」
再三確認したけど、マジらしい。
……いいだろう。言ったな? 言ったな!? 絶対後悔すんなよ!??
私はステータスウィンドウを開き、厨二病時代にノリで作った、あのスキルを選ぶ。
《世界終末行進曲》
──発動。
「え、魔法陣が……何個……!?」
「……あれ、数えて……え、えっ236!?」
「空が……赤い……?」
地面が揺れる。大気が震える。
私は宙に浮いた。魔法陣が光り出し、旋律のように歌を奏で始める。
竜巻が走り、地割れが走り、遠くの山が火を吹いた。
「え……え……え……」
教師、生徒、全員が硬直している。
「これやべぇやつじゃん!?」
今さら!? 私!? いや違う!? これ止められない!?!?
ジジイ(神)※天界にて
「終わった……終末来たわ……」
全力で打ったら世界終わるレベルの魔法。
いや、使った私も半泣きだし!?!?
「いったん冷静になろう。冷静になって……出力、出力……あった!」
私は深呼吸をし、叫んだ。
「威力──1万分の1に制限っ!!」
──ズドォォォォン!!!
それでも、山が5個消し飛んだ。
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静寂。試験会場。誰も言葉を発せない。
試験官「…………」
教師「…………」
ジジイ(神)※天界にて:「おお……まだ世界、壊れてない……良かった……よくやった、わし……」
──そして、結果が出た。
試験官「……春野コハル、卒業試験結果──」
「SSSランク。ギルド最高認定です」
「はぁああああ!?!?!?!?」
私は頭抱えた。
「こんなんで目立ちたくなかったんだけどおおおお!!!」
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(ウィンドウ表示:「レベル12」「新称号:終末奏者」「ギルド登録:SSSランク」「ジジイの叫び:天界での業務評価が爆上がり」)