第7話「幼女と買い物と乙女のサイズ問題」
第7話「幼女と買い物と乙女のサイズ問題」
(副題:私はAも無いのに!!!)
「ねぇねぇ、リリィって今どれくらい服持ってんの?」
リリィは黒いフードを差し出してきた。
「……これだけ……」
「それしか無いんかい!!?」
──ということで始まった、リリィ服強化作戦☆in 王都商業区。
参加者は、私・リリィ・ゼイド・アリサの4人パーティー。
まさかこのメンツで買い物に行く日が来るとは……。
しかもゼイドはめっちゃ浮いてる。
無言で黒いコートに剣背負ってるし、どう見ても買い物じゃなくて暗殺任務なんだが。
「……あの、ゼイド様。もう少し服装をですね……」
「任務中だ」
「いや、今の任務って“子供服選び”だからね!? 街中で戦い起こらないでしょ!?」
ゼイド、完全スルー。
で、一方のリリィはというと、私の袖をがっちり掴んで離れない。
リリィはアリサから小さい頃の服をひとつ借りた(白いワンピース)。てか可愛いな、おい!
「リリィ……この店で好きなの選んでいいからね!」
「お姉ちゃんが、えらぶの……すき……」
天使か? おまえ天使なのか?
「わかった! お姉ちゃんが責任を持って、リリィの可愛さを3倍にする服を選ぶよ!!!」
私は勝手に気合を入れ、次々と服を物色。
フリル! レース! 動物耳付きパーカー! ピンクのワンピ!
──そして、選んだ。
「これとかどう!? ひらひらしてて、魔法少女感あると思うの!」
「……きがえる」
店の試着室に入ったリリィが、数分後に出てくると――
「……か、かわいい!!!」
そこには、ふわふわワンピ+ケモ耳フードの超キュートな幼女。
「はぅ……私の推しが現実に……!!」
「お姉ちゃん……すき」
ダメだ、この子……天使通り越して心臓に悪い。
「……あ」
そこに、アリサが戻ってきた。
「悪いわね、ちょっと見てたら私も欲しくなって……下着買ってきたわ」
「えっ、アリサってこういうとこで買うんだ?」
「そりゃあ、貴族でも下着は必要でしょ。まぁ、サイズ合わなくなったから買い直しだけど」
「へぇ〜、何カップ?」
「Eだけど?」
「…………E」
脳内にリバーブがかかる。
E、E、E、E……Eィィィィィィ!?!?!?
「小さくなったから不満なのよ。昔はもっと……ん?」
その瞬間、私の中の何かが壊れた。
「わたし……Aもないのに……Eが不満って……」
──ガクッ。
崩れ落ちた。文字通り、膝から。
「ちょ、ちょっとコハル!? 大丈夫!?」
「……うう、神よ……なんで私の胸は……転生しても平らなの……」
「でも、合法ロリじゃない」
「合法に興味ねぇ!! 私だって……ちょっとは欲しかったんだよぉぉぉ!!」
⸻
その間、ゼイドは隅で黙々と屋台からお菓子を大量に買っていた。
帰り道、手渡された。
「飴、クッキー、パイ。子供用」
「……優しいんだけど、言い方もうちょいなんとかしろォォォ!!」
⸻
その日の夜、リリィは買った服を抱いて眠った。
「お姉ちゃんが、えらんでくれたの……だいじ……」
「もうほんと……天使やわ……」
でも私は、ひとり鏡の前で胸元を見て──
「……Eとか許せねぇぇぇ!!!」
⸻
(ウィンドウ表示:「レベル7」「好感度:リリィ MAX」「サイズ格差ダメージ:999」「ゼイドとの関係:無口だけどママみある」)