第4話「幼女襲来。正体? 実は元・破壊者でした」
第4話「幼女襲来。正体? 実は元・破壊者でした」
(副題:甘いモノの恨みは、命で払ってもらう)
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その日、私は勝ち組だった。
「ついに買えた……! 王都でも年に数回しか入らないっていう、伝説級スイーツ──“クリーム蜜パイ”!!」
プルプルふわふわ、しかも表面パリパリ。中には濃厚なはちみつカスタードクリーム。
朝から鍛錬もこなして、この甘味が私を待ってるとか、もうご褒美以外の何物でもない。
私はスプーンを持ち、パイにとろける笑みで手を伸ばした。
「いただきま──」
──その瞬間だった。
空間が裂けたような轟音。次の瞬間、爆風が吹き荒れ、視界が灰色に染まる。
「な──」
スローモーションの中、私の“蜜パイ”が、空中でくるりと一回転して──地面に叩きつけられた。
ぐしゃっ。
とろける甘さが、大地に吸い込まれた。
「……あ?」
ピキ……と、私の中で音がした。
「……てめぇ……」
風の中、黒いフードをかぶった男が立っていた。銀色の髪、赤い目。全身から立ち昇る殺気。
「貴様、破壊対象に認定」
淡々とした声。
何かを始めようとしていたらしい。
でも。
「てめぇ、今……私の蜜パイを、ぶっ飛ばしたな……?」
私の中で何かが弾けた。
「このクソ野郎ォォォォ!!!!!」
──ズドン!!!
地面が爆ぜ、私は覚醒モードに突入した。
魔力スパーク。創造魔法が暴れ出す。
《創造魔法:反応式バリアブレイカー・雷撃槍(試作)》!
「うおっ……!?」
男が避けようとしたその瞬間、私は前に跳び、顔面にひざ蹴り。
「てめぇ、他人のスイーツに手ぇ出すとか、マジで命知らずぅ!!!」
雷が空に踊り、空間が震えた。
私の怒りゲージはMAX。ゼイド? あいつたぶん背後にいて黙って見てる。
「さぁ次だ……そこのソレ、息子って呼んでいいのかわかんねぇけど」
《創造魔法:スパーク包丁&神罰フォーク!》
「そいつ切り落として、代わりにコレつけといたるわ!!」
ゼイド「…………(絶句)」
※明らかに股間を押さえた。
「待──っ……あ、あああ──!!」
男の体に、光が溢れる。
そして──
ポンッ!
黒い服が宙に舞い、中から出てきたのは――
「……えっ」
ふにゃっと尻もちをついた、銀髪の幼女。
赤い目を瞬かせ、ふるふる震えながら、涙を浮かべた目で私を見上げた。
「……ご、ごめんなさい……」
「ええええええええ!?」
戦場、静寂。
私はしばらく言葉が出なかった。
「ちょ、ちょっと!? どゆこと!? 今までの威圧感どこ行った!? さっきまでの殺意どこ置いてきたの!?」
幼女は涙目で、私の袖をキュッと掴んだ。
「……お姉ちゃん、こわい……でも、あまい匂いする……お姉ちゃん、すき……」
「この展開は読めねぇぇぇ!!」
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──結果。
私はリリィ(らしい)という名の幼女を、お姉ちゃんと呼ばれたまま連れ帰った。
ゼイドは終始無言だったが、帰り道ずっと下を向いていた。たぶん、さっきの寸前のアレのせい。
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その夜。夢の中。
「やあやあ、よくぞあの破壊者を撃退したのう!」
ジジイ登場。
「お前……あの幼女がそんな存在だったって、知ってたのか……?」
「うむ。言おうとは思っていた。いずれ、おぬしと関わるとわかっていたからな」
「“いずれ”じゃねえよ!!!!」
──ドガッ!
「ぎゃあああああ! 老人虐待反対! 神にも人権があるんじゃああああ!!」(みぞおち)
「お前にだけは絶対言わせねぇ!!!」
──バキッ!
「ぬふぅっ!!」(顔面)
「なんで毎回、肝心なこと後出しするんだこのクソ神がぁぁ!!」
──メキッ!
「骨が、骨が折れたぁぁ……!!」(足骨折)
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(ウィンドウ表示:「レベル6」「新スキル:《創造・高威力物理式》《感情暴走:臨界突破》」「リリィとの関係:敵 → 妹?」)