第3話「監視者ゼイド、降☆臨」
第3話「監視者ゼイド、降☆臨」
(副題:私、合法ですけど!?)
学校、訓練区画・裏庭。
朝からなんか、みょ〜に静かだった。
いや、正確に言うと「私が近づくと誰も寄ってこなくなる」ってやつ。
先日の試験会場ぶっ壊し事件の影響で、私は今やちょっとした有名人。いや、悪名?
「はぁ〜……魔法、抑えめに撃ったのに……」
私の名前は春野小春。身長136cmの合法少女(※16歳)。転生組。創造魔法使い。あとたぶん、爆発物指定。
そして今日、監視役がつくとか言われた。
「監視ってなによ! 国家権力がやるやつじゃん! 私テロリストちゃうわ!」
ぶーぶー言いながら訓練場に向かうと、そこにいたのは――
黒髪で長身、鎧の上に黒コートを羽織ったような男。剣を背負って、片手はポケット。
顔、無表情。背筋、ピン。目つき、鋭い。
……で、でた……まごうことなき、エリートSP感……!
「コハル・ハルノ。今日からお前の監視を命じられた」
無表情のまま、男が名乗った。
「ゼイド・シュトラウス。元・王国騎士団直属特殊部隊。よろしくな」
……情報多いな!? あと、元軍人とか普通に怖いんだけど!?
「いや、待って? 監視ってどういう……」
「“危険人物レベルC”判定を受けた。建物破壊、魔力制御困難、本人自覚薄し──」
「いやだから自覚はあるっつーの!! あれはほんの事故で!」
「なら、以降は気をつけろ」
超真顔。ひたすら無表情。
私はピクピクしながら、ふと彼の目線が妙に低いところを見てることに気づいた。
「……なんか?」
「お前、本当に16か?」
「失礼な!? 見た目はアレでも中身はちゃんと年相応ですけど!」
「身長136。体重、軽すぎ。子供にしか見えん」
「合法だって言ってんでしょ!? 合法ッ!!」
「……何の?」
「そ、それは……その……ね!?」
ぐぬぬぬ……!
ああもう、なんで毎回こうなるの? 胸はない、身長はちんちくりん、国からは監視されるって、私どんだけ属性詰め込まれてんのよ!
そんな私の憤りをよそに、ゼイドは普通に、というか当然のように訓練場のベンチに座った。
「今日のスケジュールは自由訓練。勝手にやれ。監視はする」
「いや、もっとフォローとか、指導とか……優しくしてよ!」
「子供には優しくする」
「だから私は合法だって言ってんだろォォォ!!!」
⸻
その日の午後。
買い物帰りの寄り道中。私は屋台でリンゴ飴を見つけた。異世界でも売ってるんだコレ。
「うわ、なっつ! 食べたい……けどお金ギリだな……」
屋台の前でうんうん悩んでたら、後ろからスッと手が伸びた。
「……二つくれ」
そう言って銀貨を出したのは、もちろんゼイドだった。
「な、なんで!?」
「子供が欲しそうな顔をしていた」
「わーれーはー! 合ー法ーっ!! 合法美少女ぉぉぉ!!!」
周囲に完全にドン引かれる中、ゼイドは渡してきたリンゴ飴をスッと差し出した。
なんだこの静かな優しさ……逆にムカつく! ……でもありがと!
「……あ、ありがと」
「礼は不要。任務だ」
「くっそぉ……!!」
⸻
──その夜。夢の中。
「やあ、順調に監視されてるようで何よりじゃな!」
ジジイ(神)、開幕から煽ってきた。
「なぁぁぁんで監視対象になるような設定しといてくれなかったんだよおおお!!!」
「いや〜、言おうと思ってたんじゃが、忘れてのぅ」
「忘れてた!? マジで!?」
──ドガァン!!!
「ぎゃああああああ!! 老人虐待反対! 神にも人権があるんじゃあああ!!」(みぞおち)
「お前が人権って言えるのは情報全部言った後だけだろがああああ!!」
──ガンッ!!!
「ぬぁあああ……頭が割れる……」(ゲンコツ)
「割れてから反省しろジジイ!!!」
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こうして、私の監視生活(とリンゴ飴の時間)は始まった。
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(ウィンドウ表示:「監視対象レベル:C」「現在レベル:5」「ゼイドとの関係:無口SP → よく飴くれる謎のお兄さん」)