第1話 ──試験会場、爆☆裂。そしてお前、また黙ってたなジジイ!!
【第1話】──試験会場、爆☆裂。そしてお前、また黙ってたなジジイ!!
「ふぅ……さて、胸は諦めた」
異世界に降り立ったその日、私は森で色々な現実を受け入れた。魔力測定不能? まあいい。創造魔法が威力50%? ギリ許す。
でも、胸が転生前よりさらに平らになってたのだけは許さない。神に文句言いたいけど、もう言った。いや、ぶん殴った。
「よーし、じゃあまず何すればいいのかね……」
とりあえず、生きるためには職業を持つ必要がある。この世界では、冒険者という職が一番ポピュラーらしい。ほら、あれだ、モンスターを倒してお金を稼ぐやつ。テンプレだが、夢がある。
私は即行で街に出て、ギルドに向かった。見た目は10代半ばの少女、服装は森の中で目覚めたときに着てた……白いワンピース。清楚系。私のキャラ的には合ってない気がする。
「冒険者になりたいんですけど!」
ギルドの受付の金髪ポニテのお姉さんが、少し困ったように笑った。
「あなた、冒険者学校卒業した?」
うん、してないね。てか冒険者学校?
「そうよ冒険者になるためには、1年間、冒険者学校で学んで卒業しないといけないのよ。」
「もちろんOK!……てか、むしろ私、そういうの燃えるタイプ!」
よくわからんが、だいたい訓練校って熱血イベントがあるはず。
私、燃える系女子なんで(※胸以外は)。
──そんなわけで、数日後。
冒険者学校、入学試験日。
街の郊外にある巨大な訓練場に、私は立っていた。これが例の、初級魔法と体術を確認する簡単な実技試験ってやつ。
「では、コハル・ハルノさん。創造魔法を見せてください」
試験官がそう言う。回りには審査員らしき人たち、何人も。
ざわざわしてる。なんでかって?
「この子……魔力測定不能って……え、伝説級? 神話級?」
「創造魔法って基本、最弱だろ……いやでも、規格外らしいぜ?」
そう、みんな警戒してる。けど私、めっちゃノリノリだった。
「ふっ、私の可愛くてすごいとこ、見せてあげるわよ!」
手を前に出して、創造魔法、発動!
「《創造魔法・複製》、きらきら光るちっちゃい雷球、ぽんっ!」
可愛い系の光球が手のひらからぽわんっと……と思った次の瞬間――
──ドッッッッッカアアアアアアアアン!!!!!!
地面が砕け、風圧で壁が吹っ飛び、訓練場の屋根が粉砕された。
あたりは砂煙、絶叫、炎のにおい。そして私は……
「う、うそでしょ……ただのきらきら雷球だったのに……なんで……?」
私、ぽつんと中央に立ち尽くしてた。
試験会場、半☆壊。
しばらくして煙の中から、煤まみれの試験官がよろよろと現れた。
「合格です。むしろ即戦力です」
「いや、待って、私もびっくりしてるから!!」
⸻
──その夜、夢の中。
また白い空間。ああ、来たな。あいつ。
「やあやあ、今日もやらかしたようじゃのう、春野小春」
ジジイ、ニヤニヤしながら登場。こいつ、絶対確信犯。
「ジジイ……てめぇ……」
「ん? どうかしたかの?」
「創造魔法が、あんな威力になるって聞いてないんだけど!!!」
──ドカッ!!!
「ぎゃああああ! 老人虐待反対! 神にも人権があるんじゃああああ!!」(顔面)
「お前が黙ってるせいで、私、建物吹っ飛ばしたんですけど!? え? え???」
「そ、それはじゃな……ほら、そっちの方が面白くなると思って……」
「面白さと命の重さを天秤にかけるんじゃねぇよ神!!」
──バキッ!
「ぐふっ……骨が……!」(治ったばかりの肋骨骨折)
「お前ほんと毎回毎回、重大情報隠してるだろ!!」
「じゃって、おぬし、ギャップある展開のほうが燃えるじゃろ? あと観察してる神々の評価も上がって……」
「なに、配信してんの? 神の間で実況中継???」
「いや、そ、それはその……うっかり……!」
──ドガッ!
「わしのアバラがあああああ!!」(骨折)
「もう黙れ!!!」
⸻
──次の日。
私は「危険人物」として、しばらく単独行動を命じられた。
「他の生徒とは距離を取りつつ、自習形式で学んでください」とか、なんとか。
「ふっ、まあ一人でもやってけるし?」
屋根吹っ飛ばしたやつに誰も近寄ってこないのは当然だけど。
──だけど、私はまだ知らなかった。
このあと、ひどくめんどくさいツンデレ貴族アリサや、元最強幼女リリィ、国からの監視者ゼイドたちという、カオスな仲間に囲まれていくことになるなんて。
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