【第40話】踏切の向こう、立ち止まる選択
木曜日の放課後。
校門を出て、駅へ向かう坂道の途中、
踏切の警報音が響いた。
遮断機が下りて、目の前の道が、ふっと止まった。
その瞬間、なぜか、胸の奥で「このままじゃあかん気がする」という気配がした。
•
最近、“今のまま”がすごく好きになってきてる。
放課後とか週末に会って、どこかを歩いて、
同じものを見て、同じものを笑って。
時々、カリブに乗って海に行ったりして。
そのどれもが心地よくて、
壊したくないって、ずっと思ってた。
でも、“壊したくない”って気持ちは、
裏返せば、“変わりたくない”ってことなんやろか。
ハルくんのことを思い出すたびに、
私の中で何かがすこしずつ、大人の輪郭を持ってきてる。
だけどそれは、今までの“女の子”としての自分と、
ちょっとだけ違う場所に進んでいく気がして、
足が止まることもある。
•
電車が通り過ぎて、遮断機が上がった。
でも私は、まだ渡らずに、その場に立っていた。
制服の裾を風がなびかせる。
ポケットに入れていた、小さなメモ帳を開いた。
「このまま“ずっと続いてほしい”と、“もっと先に進みたい”は、
同時に持てるんやろか」
その一行を、指でなぞる。
答えはまだ出ない。
でも、どこかで「言葉にしたい」と思いはじめている自分がいる。
•
その夜、机の上のカレンダーに、
小さく印をつけた。
ふたりで次に会う予定の日。
赤いペンで、小さな丸を描いた。
それはまだ告白でも、決意でもない。
でも、その印をつけたことで、
私の中の時間が、“未来”に向けて、ひとつ進んだ気がした。
•
寝る前に、窓の外を見た。
空は澄んでいて、星がいくつか見えていた。
ゴローちゃんがまた夢に出てきたらええのに、と思った。
そしてその猫が、
「進んでええよ」って、ひと言だけでも言ってくれたら……。
そんな願いを、胸の中でそっとつぶやいて、
電気を消した。




