1:貴様は俺の子になれるか?
「貴様は俺の子になれるか?」
体の芯に響くような、低く、淡々とした声が響く。
黒い重厚な和風の鎧を身に着けた竜人が、納刀されたままの太刀をまっすぐに眼前のヴァンパイアへ向ける。
真紅のマントを身に着けたヴァンパイアは、困惑の表情で竜人と、その後ろに隠れているコチラへ交互に視線を動かす。
俺も意味わかんない。
コッチ見られても困る。
「子ども……?ヴァンパイア討伐の依頼、受けて来たんですよね……?」
ひとまず竜人に訪ねてみる。
「倒す。俺の子に相応しければ子にする。」
良かった。倒すんだって。
最初の3文字だけ欲しかったなぁ。
ヴァンパイアみたいなモンスターは、眷属化させる能力有るらしい。
そういった意味で「子」と言うならまぁ、理解できる。
んだけど、竜人に眷属化?
竜の眷属が竜人って設定なら見たこと有るけどさ。
日本に生きていた頃に楽しんだアニメやら、漫画やら、小説やら。
そんなのが有ったなぁ…。
「眷属……とかです?」
異世界だしね。知らんことも有るさ。と一応聞いてみる
「違う。子にする。」
やっばい。意味わかんない。
「強者ならばな。」
ヴァンパイアが両腕を胸の前で組み直し、余裕を見せつけるような表情に変わる。
「私より……強いと?」
あ、怒ってるわ。
そらぁね。プライド高そうだもん。
ヴァンパイアって貴族のイメージあるもんね。
「俺の子にするかどうか、選ぶのは俺だ。」
会話する気ある?この人。
「そこのゴーストさん…彼は何を言いたいのですか?」
こっちに振らんで。
わかるわけないの見て理解できない?
「いや、さぁ……?さっき会ったばかりなんで……」
この竜人に、
その間もずっと、竜人はヴァンパイアから視線を動かさず、真っ直ぐに刀を向け続けている。
ひとまず戦ってくれることは間違いない事に安心はしたが、その他が不安でしかない状況に理解が追いつかないず、ただフワフワと浮いているしかなかった。