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P4「廊下は走っちゃいけません」


 あらぁ~?すっげぇラブコメムードなんですけど?


 生徒会室には遊戯がない。

というわけでオレは麻雀ボードを持ち込みました。さすがオレ、手際が良い。

「いやいや、どうせならもっと面白そうなゲームを持ってきてくださいよ」

アリスが文句を述べる。仕方がないので知恵の輪を投げてやった。

「………馬鹿にしてます?」

アリスが両手で金属で出来ているはずの知恵の輪を引きちぎった。おいおい、薄々感じてはいたがお前馬鹿力ありすぎだろ。

「乙女にそんなこと言わないでください!」

さも恥ずかしそうにかわい子ぶっているが、どう考えても手遅れだぞ。

それにしても今日は集まりが悪い。

現にこの場に居るのはオレとアリスのみだ。全く、役立たず共が。

「リーダーは族の集会で、希先輩はその付き添い。乃之亜ちゃんはわかんないけど、会長さんと副会長さんは定期学園会議ですよ」

「うん、意外と皆忙しいね」

オレは一抹の寂しさを感じた。


「ところで、その、黒三沢?……さんは、どういう人なんですか?」

ほう、アリスが興味心身で聞いてくるな。

まぁ同級生の乃之亜ちゃんが好きな相手なのだから、どんな人間かは知っておきたいのだろう。

オレは嘘をつくことにした。

「実はそいつは究極のロリコンで5歳以上9歳未満の幼女にしか興味を」

「洋季、適当ほざかないでね?」

アリスが今だ持っていた知恵の輪の残骸を握る。そして鉄の塊に変えた。

「オーケー、一言で言うなら佳孝は一匹狼だ」

オレは動揺を隠そうと麻雀牌を卓上で混ぜる。あ、これよく見たらドンジャラだ。

「一匹狼?………暗い性格の人?それとも激しい?」

アリスが今だしつこく聞いてくる。せめておねだりのポーズで上目遣いくらいしてほしいものだ。あ、背が高すぎて無理か。

オレはアリスからスクリューパンチを顔面に食らった。

「暗い性格だな。人ともあんまり喋らん。ただ頭はいい。礼儀も一応わきまえてはいるが、若干生意気だな。まぁそれがあいつらしいって所なんだがな」

「ふ~ん」

アリスがオレの顔面には目もくれず頷いた。ていうか鼻が痛い。

「仲良いんですね」

「まぁな、腐れ縁って奴だ」

「じゃあ、その人の好きなタイプってのもわかるんですか?」

おぉ!それは盲点だった。それを参考にするのは確かに有意義だな。

「アリスもたまには役に立つじゃねぇか!」

「洋季はいつ役に立つのかな?」

くっ、可愛い笑顔でやなこと言ってくれるじゃないか。

「そ!そんな言葉では騙されませんからね!」

なにやらムキになって怒っているようだが、それよりも佳孝のタイプを知るために、オレはあいつの元へ向かった。


が、下校時刻も過ぎて部活動時間なので、帰宅部のあいつが居ないことに気づいたオレは仕方なく生徒会室へ戻ってきたのだった。

「気づくの遅すぎでしょ」

アリスが呆れた顔を向ける。全く、一生懸命働こうとした人間にその仕打ちか?

オレは将棋版を取り出して一人で将棋を始めた。

「将棋あったんだ………チェスならルールがわかるのにな~」

「そう言うと思って駒はチェスにしといた」

将棋版の上にチェスの駒。意外としっくり来る。

「きませんよ。洋季はどうしてそう変なことばっかりするの?」

非常識だから…さ。

「意味わかんないよ」

アリスがため息をつきながら、学校から出された課題を解いていた。

ふむ、ここは一つ先輩であるオレが勉強を見てやるとするかな。

オレは数学の教科書を片手にアリスの手元を覗き込んでみた。

「残念でした、英語だよ~」

アリスがしてやったりな笑みを浮かべる。正直、普通に腹が立った。

だがこんなこと如きで怒っていてはクールじゃない。そう、男はクールであるべきだ。

オレは数学の教科書を真っ二つに引き裂きながら笑顔でいた。

「怖いよ!そこまで怒らなくていいでしょ!?」

アリスが怯えた顔を見せるので冗談はここまでにしておこう。

「英語か……で、分からないところある?」

「幼少期はイギリスに居たから分からないわけないでしょ?」

アリスが淡々と言った。正直寂しくなった。

「ていうかイギリス出身なのか?」

「うん。お母さんが英国人でお父さんが日本人。だからハーフなのよ」

そうか、彼女にはボルオニュアルッサ人の血が半分流れているのか。

「ボルオッ!?なに??そんなわけの分からない未開の人種の血は流れてないわよ!」

なかなかいいツッコミだ。だが伊達政宗ほどではないな。

「あぁ~、また希先輩にそんなこと言ってぇ。そういうのって周りは楽しくても本人には辛いときもあるんですからね」

ふむ。まぁ本人は確かに困っていたようだし。

「………柳生十兵衛やぎゅうじゅうべえじゃあ眼帯の位置が違うしなぁ」

「洋季、いっぺん地獄が見たいの?」

ワォ!アリスさんの血が頭に上っちまったようだ!へへ!こいつぁオワタww

オレはアリスのパンチを10発くらってから考えるのを止めた。


もう一度起きると、既に最終下校時刻目前だった。

おいおい、オレはどれだけの間意識を失っていたんだ?

「さ、三十分だけだよ!」

すぐ隣に、ソファーに座っていたアリスが言い訳がましくそんなことを言った。ていうか三十分も気を失ってたとか。

「いいから!帰りますよ!」

アリスがせかせかと生徒会室を出て行く。オレも帰るしかないので起き上がるか。

一応ソファーに横になっていたオレは上体を起こすと、額に何かが乗っていたことに気づく。

湿っていたそれを手にとって見ると、桜の花びらの柄をしたハンカチだった。

「………ほ~?」

オレは分かったような表情をしながら立ち上がった。

そして、部屋を出る。すると、ドアの先にアリスが立っていた。

「……………あの、ハンカチ」

目線はずらしながら、顔を少し赤くしてアリスはそうポツリと言った。

「う~ん?どんなハンカチ?」

「ちょ!意地悪しないでくださいよ!」

必死になっているアリスを見て、オレは少し笑ってから……………、


  ダッシュした。


「えぇぇぇええーーーー!?」

アリスの叫ぶ声が聞こえる。だが、オレには関係ない。

「なんで!?返してくださいよ!ていうかせっかくの雰囲気が!」

「はっはっは!人から貰ったものは貰いっぱなし!これはオレの極意!」

「ばかぁああ!バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカぁああああ!!!」

廊下を全力疾走する。これはもうお遊びではない!戦いだ!

アリスも猛然と追いかけてくる。ていうか明らかにオレより速い。

やばいな、このままでは捕まってしまう。だが安心しな。地の利を使えばこっちのものだ。

オレがここで何年間生徒をやっていると思っているんだ?

「私だってここの生徒だから分かりますよ!」

あ、それもそうか。

まぁいい。基本追いかけっこは追う方より追われる方のほうが真剣に走れるのだから、このまま下駄箱まで一直線だぜ!

と、思っていたオレの目の前に人影が。そして仕方なく急停止するオレ。

「え?ちょ!急に止まらないでくださいよ!」

アリスがオレの背中にタックルしてきた。ヤバイ、背骨いったかも。

だが問題はこの次だ。アリスが乗っかってきた。オレは反射的に顔をアリスに向ける。

だが体のバランスは崩れたためオレはしりもちをつく。

そしてアリスはオレの方に倒れこむ。もとい抱きついてきた。

「ひゃ!ち!違います!違うよ!抱きついてません!」

腕をしっかりオレの体に巻きつけて体を合わせているくせに言い訳か?

「なんで洋季はそこまで平然としているのよ!」

アリスが恥ずかしさのあまりか真っ赤になって、しかも涙目だ。

うむ。さすがにおちょくりすぎたか。サーセン。

だが何で今だ抱きついたまんまなんだ?

「あう!それは………こ、こけた瞬間に、力が抜けちゃって」

「おいおい、怪我してるんじゃねぇだろうな?」

オレがアリスの腕に手をやると、アリスが更に赤くなった。

「う、う~……で、できればもう少しこのまま」



「ほう?私の目の前でいちゃつくとは………洋季、私という存在を忘れてしまったのか?」



うぇーーーい!東雲せんっせい!

オレはアリスの腕を巧みにすり抜けて東雲っちの前で土下座した。

「そんな事ありません!ただアリスとオレは生き別れたキツネとヒョウの兄弟みたいなものでして」

「おい、キツネとヒョウが兄弟って意味が分からんぞ?」

東雲先生がオレの言葉に惑わされている間に、オレはアリスに逃げるようにハンドサインを出した。

グッドラックのグーサインを必死にアリスに向ける。

「いや、洋季…親指立てただけじゃあ逃げろってハンドサインに見えないよ」

アリスが今だ顔をほんのり赤くしているが、多少冷静になったようだ。

「すみません先生。すぐに帰りますので見逃してください」

「ほう?………洋季もモテナイと思っていたが、そうでもないんじゃないか?」

うん?どしたのどしたの?

何だかにやけ顔の東雲先生が気味悪いぜ。

「シバかれたくなきゃ黙ってな」

はい。


ようやく校門まで来れたぜ。

アリスも外に出てから一息ついた。

「全くもう!先生に変なところ見られちゃったじゃん!」

変なとこ?追いかけっこか?

「………バーカ」

アリスがじと目でこっちを睨んでから、一人で歩き出す。

「じゃあ洋季。また、明日」

アリスが手をひらひらと振ってから、とぼとぼと去っていく。

う~ん………正直寂しいな。オレ自身も、んで、あいつの後姿も。


「ア~リス、一緒に帰ろうぜ」


オレは声を上げて、アリスの後姿にぶつけた。

ふと、止まるアリス。そして、固まっていた。

おいおい、もしかして今更嫌ですとか言われそうだな。

「………やく」

ん~?あんだって?


「はやく来てくださいよ!一緒に帰って………くれるんでしょ?」


「………そうだな」

オレは駆け足でアリスに追いつく。

周りはすっかり暗くなっている。冬季は太陽が早くに落ちちまうのが嫌だな。

でもま、街灯が付いたし、家々の明かりがしっかり見える。

「で?家ってどこなんだ?」

「ミズガメ通りのマンションですよ」

「もしや富宝マンション?」

「うん」

へぇ、近いじゃん。オレの住んでいるところと。


ざっと40キロぐらいしか離れてないな。


「遠いです、明らかに」

アリスがさも残念そうな表情でツッコんだ。




 男の登場人物が圧倒的に少ない!?

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