P2「生徒会の権限は程々に」
まぁいろいろとありまして、またまた朝の屋上でソファーに寝そべっている洋季です。
「おい、昨日は午後の活動サボりやがって、それと私のソファーに座るな」
お、昨日はいなかった乃之芽が来ました。そういえばあなたは何組ですか?
「あ?三年B組だが?」
「金八せんせ~~」
「うるせぇよ」
ふむ、まさかの先輩だったとはな。ていうか受験の年なのに妹の恋路を応援してていいのか?
「勉強はしっかりやってるからいいんだよ。どうせ推薦だし」
「不良の癖に頭良いとかなにそれ?」
「お前は授業妨害しまくって我が校のブラックリストナンバー1に居続けている問題児だろ?むしろなぜ退学にならない?」
それは天才ゆえの所業だからさ。
「正直に馬鹿だからって言えよ」
「そんなことより、この5人のリストを見てくれ」
「ん?なんだこのパッとしない根暗5人組は?」
ひでぇ言いようだな、まぁ同感だけど。
「その中の一人がおそらく乃之亜ちゃんの片思いの相手だ。で?本人は?」
「あぁ、クラスの代表委員だから今は来れない」
「スケ番みたいなオーラだったけど普通にいい子なんだね。姉がこんなだとかわいそうだよ」
オレは持参の朝食であるステーキセットドリンク付をミニテーブルの上にセッティングして優雅に食べ始める。
「いいからソファーからどけよ」
乃之芽がミニテーブルを蹴っ飛ばす。クソッ!オレの朝食が!
だが何気にステーキだけは素手で掴んだので無事だ。うん、手掴みでもうまい。
「お、おい、絶対にソファーを触るなよ?絶対に触るなよ!その脂ぎった手で触るなよ!!」
「それはネタフリだな?要は触れってことだろ?いよっしゃぁああああ!!」
「さわんなっつったろぉおおおおお!!!」
乃之芽の回転後ろ蹴りがオレのあごにヒット。危なく外れ掛けたがこれぐらいどうってことない。
「ひはんはほへぇ」
「す、すまん。でも触るなって言っただろ!」
ふん。女なら謝ればいいとでも思っているのか?とんだ甘ちゃんだな!
オレは自分のあごを殴りつけて異常を治す。
「オレに謝る気持ちがあるんならメイド服を着て”ごめんなさいご主人様”って言いながら上目遣いするんだな」
「全く無いからしなくていいだろ」
ものすごく残念ではあるが無いなら仕方ない。
「そうだ、政宗はどこ行った?」
「政宗?………希か?希はまだ来てないな?」
「ふっ、オレに恐れをなして逃げたか!」
オレのかっこいい台詞のあと、不快なでかい音をたてて屋上のドアが開かれた。
「ようきぃぃいいいい!てめぇ昨日アリスを弄んだだろぉおおお!!」
政宗だ。本日は柴犬のアップリケの眼帯での登場です。
しかもものすごくキレていらっしゃいます。見間違いであることを祈りたいのですが木刀を所持しております。
「ヘイヘイ落ち着け政宗、オレはアリスにちょっかいを出した覚えは無い。つまりお前の勘違いだ」
「政宗じゃない!希だって言ってんだろぉおおお!!」
めっちゃ木刀を振りかざして切りかかってきます。冗談抜きで死んじゃいます。
だがしかし、私の華麗な動きで避けてしんぜよう!はぁあっ!
「バキャア!!」
しまった。避け損ねて背骨をぶった切られた。
「おいおい、お前全然華麗に避けてねぇよ。むしろ無様にも当てられに行ってたぞ」
乃之芽がなにやら言っているが、ソファーにくつろいで座っている所を見ると、助けようとする気はさらさら無いようです。
よし、逃げましょう。オレは華麗にダッシュを決めてゆっくりと背中をかばいながら足をずった。
「どこが華麗なダッシュだよ。完璧落ち武者歩きだろ」
全く、本当に乃之芽はうるさい。何もする気が無いなら黙ってろ!
「洋季~~~まだ制裁はおわっとらんぞぉぉおおお!」
制裁が終わる前にオレが終わりそうだよ。
さすがに死にたくは無いのでドアをすぐ開けて階段を転げ落ちながら下りる。というか本当に転げ落ちてる。
後頭部や背中など全身を強打しながらも、走っている政宗より格段に速い。
オレは体の健康を犠牲にして一階までノンストップで降り立った。
「ちょ、ちょっと、あなた大丈夫?」
見知らぬ心優しい生徒が暖かい声をかけてくれる。だが心配ご無用。多少頭から流血してはいるがそのくらい何とも無い。オレはピースをしながら駆け足で去った。
保健室です。ここに来て治療をします。
頭の流血や全身の複雑骨折もここのベットで寝れば回復します。
「いやいや、回復するのは洋季君ぐらいだよ」
このメガネをかけた優男が学校保健医です。腕は確かなブラックジャックです。
「また東雲先生にでもシメられたのかい?」
「いえね、今回は政宗にやられたんですよ」
「政宗?………う~ん、そんな子いたかなぁ?」
「そう言えば自称希とか言ってましたね」
「いや、それが本名なんだよ。希ちゃんかぁ、確か生徒会に誘われたけど断ったあの子だろ?」
はぁ?なに?どんだけあの不良軍団は優秀揃いなんだ?ていうか木刀持って振り回す奴を生徒会にって、馬鹿じゃねぇの?
「どうせまたロクでもない事をしたんでしょ?」
「いえね?先生は保健の先生だから話すんですがね、まず不良のヘッド夜桜がね、己の妹の恋路を応援しようとしてましてね、その助っ人として私が選ばれたんだが、他の仲間がいかせん役立たずでね。まぁ政宗は怒りっぽいし、アリスは素直だし、どうも自分勝手に動く人が多くていけねぇや」
「つまり全ての元凶は助っ人に君を選んだってことかな」
ほぉ?爽やかな笑顔で言うこと言うじゃねぇか?言っとくがオレは強いぞ?
「まぁまぁ、そんなケンカ腰にならないで。ところで、君は何を手伝ったんだい?」
「まずは本人すら片思いの相手の名前を知らないので、その特定のためリア充の龍介に情報をもらって、今本人に確認をしてもらえば、意中の相手がわかる段階ですが?」
「………思ったよりも働いているんだね?」
「そうなんだよ!なのにあいつら邪魔ばっかりしやがって!こちとら命かかっているんだぞ!」
なにせ死亡フラグが立っていますから。
「………でもまぁ、君は常識のない子だからなぁ」
「いいんだよ。どうせ常識なんてあったって、ピカソの絵は理解できないし、エジソンの素朴な疑問に対して真面目に答えることもできない。空を飛べることも気づかなかっただろうし、宇宙に行けることだって気づけないだろ?常識なんてみんな持っているんだから、オレぐらい非常識を持ってなきゃ人類は進歩できないんだよ」
「そ、その考えには感服せざるをえないな」
ふふ、どっかの本の受け売りを言っただけなのに、こいつマジで尊敬してるぜ。
さぁて、丁度休み時間だし、乃之亜ちゃんの教室にでも行きますか。
さて、一年生の階に来ました。
そのまま乃之亜ちゃんの教室へ進みましたが、残念、本人は教室に不在です。
仕方なしにフラフラしようと思います。スケボーで。
「いぇ~い」
勢いつけて滑ります。なんだか後輩生徒を何人か轢いちゃってますが、どうせスケボーなので大丈夫でしょう。はっはー!オレを止められるなら止めてみろ!
「あ!危ない!」
「どっぶしゃぁぁあああらあああああ!」
曲がり角で現れたオレンジ色頭の少女にドロップキックをくらいました。危ないってオレが危ないよ。
顔面がメキョって言ったけどオレ本当大丈夫かな?
「あ!洋季だ!」
「ふ、その声は不思議の国のアリスか」
「不思議の国は要りませんよ」
冷静にツッコムな。というか元気ないな?どうした?
「どうしたもこうしたも!洋季が昨日私に濡れ衣をかけて逃げちゃったのが悪いんだよ!その所為で私生徒会に入れられそうなんだからね!」
「何がどうなって生徒会に入る羽目になるんだ?」
「碁五郎先生は生徒会顧問だから、態度の悪い私に監視をつけるために生徒会に入れようとしているのよ。そりゃあ隠れてタバコ吸ってたりするけど、私の国では法律的に問題ないし、それにちょっとしか吸ってないから問題なかったのに、昨日のドアを壊したのだって私の所為になっちゃったんだからぁ。責任とってくださいよ!」
「ごめん。もっと短くして言って」
「だからぁ!洋季の所為で大変な事になっちゃったから責任とって!」
「なんと甘美な響きだろう」
アリスが泣きはじめた。殴られるよりも辛い反応なので慌ててオレは謝る。
「なぁに、要するに生徒会に入りたくないんだろ?ちょっと待ってな、こういう時に役立つ奴がいる」
オレはそう言ってアリスを連れて生徒会室に向かった。
特別に生徒会にだけ支給された生徒会室はそりゃもう広い。
じゅうたんが敷かれているし、絵画がかけられているし、テレビはハイヴィジョン、パソコンも設置されており、もはや普通ではない豪華生徒会室がオレの目の前に広がる。
「全く、何度来ても見る度に身震いするぜ」
「よ、洋季と同じ気持ちになるのは何か変だけど、私もそう思う」
アリスもこの部屋の異常さに顔が引きつっていた。
「こんなところで一年間、生徒会役員として拘束されたら、流石のオレでも身が持たんな」
「い、いやだよ~、生徒会に入りたくないよ~」
アリスがオレの腕にまとわりついてくる。まぁ感触がバッチグーなので問題ナッシング。
「おやおや、ここに来てイチャイチャするバカップルは誰かと思いきや、洋季君じゃありかせんか」
おやおや、誰かと思いきや、我が校の生徒会の会長をしている勝浦春ではないか。相変わらず優等生が板につくねぇ?
「か!カップルじゃありません!」
「そうだ。さしずめ例えるならばオレとこいつはライオンと猫の関係みたいなもんだ」
「え?遠い親戚?」
「洋季と血が繋がっているとか勘弁してください」
二人とも嫌に冷たいな、まぁいい。
「早速だが春、オレに面倒を起こさせてもらいたくなけりゃこいつの生徒会入会を即刻取りやめるんだ」
「却下」
なんと!中学からの知り合いであるこいつが始めてオレの命令を無視した!
「君の命令に従った覚えは一度もないけどなぁ?とにかく、碁五郎先生が決めたんだから、取りやめ不可能だよ」
「そうか………よし、アリス、諦めろ!」
「………ウッ、ヒグ……責任とるって洋季言ったくせに」
はいー!すみませんでした!もう一度がんばります!
「頼む春!この通りだ!」
オレは胸を張った。
「どこに君の誠意を感じればいいんだ?」
くそ!だめか!こうなれば!
「ぶっちゃけ生徒会を壊滅させりゃあ入る入らないなんて話もなくなるんだ。まずは手始めにここの生徒会室を破壊させてもらうぜ」
「副会長~」
はっ!殺気!これは!?
突如としてナイフが飛んでくる。さすがに刺されば死ぬのでオレは真剣に避けた。
「わぁ~、洋季って意外と早く動けるんだね」
この夢見る少女アリスは何をのんきに言ってやがる。まぁぶっちゃけ奇跡的に全部避けれたんですけどね。
「洋季様、申し訳ございませんが、会長の命令ですので」
むむ!そなたは副会長の皐月美恵!オレと同じくらいむちゃくちゃなキャラで有名な美少女じゃないか!
「副会長、この子はアリスちゃん。うちの新しいメンバーだよ」
「え?いや、まだ決まったわけじゃ」
ほっほ~、どうやらアリスを無理やり入会させる魂胆のようだな?
「やれやれ、春、おいたが過ぎるようだな?」
「今の君に何ができるんだい?アリスちゃんはうちのメンバーになる、これは覆せないことだ」
はっはっは、いい気になった顔で笑うお前は、さながら道化師だな。
「いや、道化師は君だ。それだけは間違いない」
ふん、今更そんな苦しい言い訳など見苦しいだけだ。
「春、お前はオレを甘く見すぎている。オレの恐ろしさを再度思い出させてやらんとな」
「そんな事、させませんよ!」
副会長の美恵が今度は薙刀で襲い掛かってきた。いやもう本当コイツ何もんだよ?
オレは太刀を懐より取り出して応戦する。
「洋季だってそんなもの何で持っているの!?」
アリスのオレを応援する声が聞こえた。うん、がんばろう!
太刀は綺麗に空を切り、薙刀を真っ二つにした。
「くっ!ではこれをくらいなさい!」
美恵は今度はショットガンを取り出す。だが、オレのハリセンによってはたかれた。
「でわっ!こちらを!」
サブマシンガンか、もう本当なにもんだよお前?オレは輪ゴムを飛ばしてそれを弾く。
「非常識なっっ!これでもか!」
今度はバズーカー?おぉ怖い怖い。オレはデコピンをして美恵を眠らせる。
「はうっ!……会長……申し訳…ございま…せん……でした」
美恵は力なく倒れる。その刹那の最後まで主を思うとは………。
「敵ながら!天晴れなり!!」
オレは扇子を取り出して天にかざした。
「ここまで非常識な戦いは初めて見ました………」
ふふ、アリスがオレに熱い視線を送っている。
まぁこれはほんの序の口、生徒会滅亡への一歩に過ぎん。
「今度はどんな非常識で攻めるんだ?」
ふふふ、春がとうとう根を上げて諦めの境地に至っているぜ。
まぁ待ってな、すぐにでもケリをつけてやる。
オレはとりあえず生徒会室を出て奴らを呼びに行った。
「いや!奴らって誰だよ!?」
春の断末魔の叫び声を背に、オレは政宗&乃之芽を探した。
「えぇっ!?二人を連れてきてどうするの?」
「あ、ごめんアリスちゃん、副会長を運ぶから足持って」
「え?あ、はい」
「仕方ねぇな、オレも手伝うよ」
オレはそう言って春と協力して美恵を生徒会室にあるソファーに運んだ。
「っていうか何で普通にいるんですか!?二人を呼びにいったんじゃないんですか!?」
夢見る少女アリスがまた何かを言っているが、オレには関係ないな。
「大有りですよ!私の生徒会への入会阻止はどうなるんですか!」
「それなら無問題。五秒後に二人がこの部屋にくる」
「は?」
五秒という時間は、アリスが驚いているうちにあっという間に過ぎる。
そして生徒会室のドアが何者かに破壊された。
その破壊音にアリスが驚いて振り返ると、オレは瞬時に春の背後に回る。
ドアの前で姿を現したのは、もちろん最強最悪極悪コンビ。
政宗&乃之芽が目を光らせてこの部屋に足を踏み入れてきた。
「え?なに?なに?」
ふっ、常人のアリスでは理解すら追いつかないこの超展開。
そうだな、一言で言うならば、オレは嘘をついて二人をここへ連れてきた。
そう、シンプルで、かつ、単純明快な回答。
二人を煽った。これがこの世界の結論だ。
「意味わかりませんよ!!」
悲痛なアリスの叫びが聞こえる、だが、もう物語りは止まらない。
「政宗!乃之芽!アリスを監禁しようとしたのはこの生徒会長の勝浦春だ!存分にいたぶってやれ!あ、後この部屋をきれいにして我が部室にしよう。恋路応援倶楽部って名前にしてな!」
「「オウ!!!」」
イェイ、ナイスお返事!
次の日から生徒会は学校から消えた。
いや、正確には、生徒会は恋路応援倶楽部へと変貌を遂げた。
部長は夜桜乃之芽。副部長に政宗。会長は春。副会長は美恵。
そして、このオレ伊藤洋季は、参謀長官という役目をもらったのだ。
いえ~い!生徒会との合体だぜ!
アリスは相変わらず泣いているが、お母さん、アリスは元気ですよ。
この小説は、文学のような高尚な文章も描写も何一つなく、ただ主人公が暴れる様子を淡々と綴った小説です。悪ふざけに付き合える心の広い方に読んでいただければ助かります。
あ、これはむしろ前書きに書くべきものだったか!