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P1「先生には従いましょう」


 屋上だと、日の光をもろに受けることができて暖かいな。

オレは早朝からなぜか屋上にいた。いや、まぁ、乃之芽に来るように言われたからだけどね。

昨日は何だかんだで不良グループに入れられたが、うん、まぁいいや。

にしてもこのソファーいいな、新品だしふかふかだし。

「おい………ここにはリーダーしか座っちゃいけないんだぞ」

なんだぁ?小学生みたいな物言いをするやつは?

オレが目を向けると、あの眼帯をしている男が立っていた。

ていうか昨日は骸骨の眼帯だったくせに今日は花柄の眼帯をしている。

正直違う意味で怖くなった。

「あの……その眼帯は?」

「うっ………め、目のことは、聞かないでくれ」

目じゃねぇよ、その柄が気になっているんだよ。

「そういえばさ、アンタ名前は?」

オレが朝食に持参してきたピッツァを食べながら聞く。

おい、ピザなんて発音するな!ピッツァだ!

「………伊達だてのぞみだ」

ぷっww伊達ってww独眼流ですか?ww

「う!うるさい!とにかくその席はリーダーのなんだから!どけよ!」

けっ、甲高い女みたいな声出しやがって、うるさいったらありゃしねぇ。

「おい、政宗、こんな話を聞いたことがあるか?」

政宗まさむねじゃない!のぞみだ!」

オレはこれまた持参のコーラを飲んでから、静かに話し始める。

「この話はな、かの有名な武将、豊臣秀吉の逸話なんだが……秀吉があの織田信長に仕えている時の話だ。寒い冬に信長が縁側に出ようと履物を履くと、それが妙に暖かかったから、近くにいた秀吉がその履物を尻にしいていたと思った。だが、その事を言うと、秀吉はこう答えた。とんでもない、私は信長様が寒かろうと思ったので、この胸で履物を温めていたのです………ってな」

「……で?」

「ようは、リーダーがこのソファーに座る時、冷たい思いをしないようにオレが暖めているんだよ。お分かりかい?これだから伊達は困る」

「伊達は関係ないだろ!」

ったく、どうやらこの政宗は女々しい性格みたいだな?ワーワーギャーギャーしやがって。

とりあえずここは話題を変えるべきだな。

「そういえばよ、昨日もう一人背の高い男がいただろ?」

「はぁ?………お前の目は節穴か?それとも性質の悪い冗談か?」

「お前こそ何を言っているんだ?」

政宗は相当癇に障ったらしく、さっきよりも喚き散らして叫んでいる。

全く、女のヒステリックみたいだな?オカマかこいつ?

「アリスはちょっと背が高いけど、れっきとした女の子だぞ!」

「え?あのオレンジ色の髪の毛でサングラスの?やっべ、これは予想外。てか外人だったのか?」

「ハーフなんだよ。でも傷つきやすい子なんだから、いいか?絶対変なこというなよ!」

「な~に、レディには優しいのが紳士のたしなみってやつだろ。任せろ、アリスの前では絶対に男っぽいとか!男だと思ってたとか!女の子っぽさがないとか!ぜっっったいに言わねぇから!」


「あの………聞こえてます」


おや、いつの間にか乃之亜ちゃんがいるじゃないか。

そして、その後ろに立っているサングラスで長身のアリスちゃん。ははっ、聞かれてたんだ!

「………ま、まぁ、男に間違えられているのには慣れているさ」

お、おぉ!クールにタバコを取り出しながら言っている。すげぇ、かっこいい。

「…………うぐ……ひっぐ」

サングラスの下から何やら雫がこぼれている。どうやらオレは最低な事をしでかしてしまった様だ。


政宗にボコボコにされて、ソファーからも引きずり下ろされた。

まぁ、オレにも非がある。仕方がないさ。

「てめぇ、今度デリカシーのない事を言ったら死刑な」

政宗め、女の前ではいいかっこか?けっ!イケメンは忙しくて大変ですねぇ?

「お、お姉ちゃんはちょっと用事があるから、朝のミーティング始めちゃっていいよ」

ミーティングって、なんかやる事あるのかよ?

「じゃあ、早速だが、昨日から来ているこの最低野郎が、新たな助っ人になった」

なんか政宗がオレをけなしながら話し始めた。

「これによって、乃之亜の恋路のバックアップもよりやりやすくなった。というわけで、早速だが、なんか作戦立てろ洋季」

政宗がなかなかのキラーパスを出してきた。おいおい、いきなり振るなよな。

まぁいい、とりあえず情報収集といくか。

「ところでさ、乃之亜ちゃんは一体誰が好きなんだい?」

「え、えっと………じ、実は名前は分からなくて」

「どんだけ~」

オレはまた政宗にど突かれた。

「ごめんごめん……じゃあ、何組とか分かる?」

「………………いえ」

「容姿的特長は?」

「えっと………背は低いけど、かっこよくて………一匹狼みたいな、クールな人です」

「ワッカンネ」

「諦めるの早すぎだろ!」

おいおいおい、政宗、さすがにこれはないだろ?

こんな乏しい情報じゃあ相手が誰なのかすらわっかんねぇよ。

全く、制服だったら名札があって楽なのに、これだから私服校は困る。

あ、ちなみにオレは制服。兄貴のお古です。

「なぁ乃之亜、その好きな人はどんな服を着てるんだ?」

おぉ、政宗グッジョブ。

「え?………一応私服ですけど、黒色が多かったです」

黒服でクールって根暗じゃん。しかも一匹狼?孤立じゃん。

コイツは相当へビィな恋路になりそうだぜ。

「とりあえず、洋季、お前ひとっ走りして見つけて来い」

「いやいやいやいや、何をおっしゃいます政宗さん」

「政宗じゃにゃひ………じゃない!希だ!」

「プッww噛むとかwwワロスww」

本日二度目の青タンを食らったオレは急いで屋上から逃げた。


時刻は早朝から二時限目となりました。

一時限目はお昼寝の時間なので、今から行動しようと思います。

「うぉぉおおお!!先生!オレの鬼の手が暴れそうです!トイレ行ってもいいですか!?」

「よし、保健室に行け」

ふふ、現国の真田さなだティーチャーは見た目が神経質な男だからな、オレの言い訳にまんまと引っかかったぜ。

そんな訳で、とりあえず嫌ではあるが、我が校の生徒データー全てを網羅もうらしているリア充大魔王の元へでも行くかな。


やって来ましたリア充大魔王こと設楽龍介の教室です。

まずは侵入するに従い、教師が誰かを確認します。どれどれ?おぉ!英語のマイケル先生か!あいつは話が通じないから適当に英語喋ってりゃ行けるぜ!よし!

「ハ~イ!ハローミナサン!」

「オウ!ミスターヨーキ!ハウアウユー?」

「イエースイエースハッハー!トコロデりあ充キングドコイル?」

元気に返してくれるマイケルはほっといて、お!後ろの席に龍介発見。

「ばっ!何しに来たんだよ洋季!」

「シャラップ、ユー・アスク・マイ・クエスチョン、オーケー?」

「…………すまん、ちょっとその日本語は難しい、もう少し分かりやすく言ってくれ」

「最近気づいたんだが、お前はオレ以上にキャラが濃いぞ」

「い、いいから要件を言えよ!」

「そうだったな。単刀直入に聞くが、この学年に背が小さくてクールな一匹狼、黒服をよくきる、ってな感じの男子生徒は何人いる?」

「…………該当はしめて5人だ」

すげぇ、何で即答できるんだよ。その記憶力別のところで使えよ。

「じゃあそいつらのリストをくれ」

「ちょっと待って………はい、龍介フレンドリスト、詳しい情報が書いてあるから無くさないでよ」

その前に何でお前はこんなものを持っているんだろうな?疑問で仕方ないよ。

「よし、じゃあお返しは鉄拳五発免除な。ところで今から三十発近く殴りたいんだがいいか?」

「よくない。いいから早く教室でないと生徒指導部の東雲しののめ先生来ちゃうぞ?」

「ふむ、そうか。じゃあグッバイ、アディオス!」

オレは最高にカッコイイ笑みをクラス全体に向けながら教室のドアへ向かった。

何だか皆呆気に取られているが気にしないぜ。

さぁて、早く教室を出て”

「待て」

 「ズシャァァアアア!!!」

オレが華麗に走ってドアから出ようとしたら誰かが足を掴みやがった。

おかげで顔面から地面とキッスしちまったが、なぜか唇より鼻が痛い。

とりあえず足を掴んだ無礼なやつに説教をするか。

「何しやがるんだてめぇえええ!!」

「文句あんのか?」

「ハッ!貴様は政宗!?」

本日三度目の政宗鉄拳をくらった。しかも大ダメージを受けた鼻に入った。オレ死ぬかも。

「貴様に常識はないのか!!授業中にいきなり他のクラスに入るとは!傍若無人極まりないぞ!」

「はいはいサーセン」

こっから先の記憶は何故か無い。オレはいつの間にか廊下の隅っこでボロ雑巾になっていた。


とりあえず、リストは手に入ったので三時限目も授業は放棄しつつ該当者回りに行く。

あ、待てよ?この際一年の教室に行って乃之亜ちゃんに確認を取ってからそいつに直接アタックするか。

オレはスキップしながら一年の教室へ向かう。

そして、一年の教室がある階に着いてからようやく、乃之亜ちゃんの教室を知らないことに気づく。

まぁいい、手当たり次第に行こう。

まずはA組から。さて先生は?………ふむ、あれは居眠りの碁五郎ごごろう。いつも寝たような姿勢で歴史の授業をする先生だ。近くにコナンらしき小学生が目撃された事例もある。まぁ特に怖くないが静かに教室へ入ろう。

オレは後ろのドアを蹴破って侵入した。

全員が後ろを振り返る。だがすかさず隠れ蓑の術。オレはカーテンに身を隠す。

「………おや、人がいたと思ったんだがな?」

「センセー、早く続きをお願いします」

ふっふっふ、碁五郎も後輩生徒どもも気づいていないようだな。さすがオレ、完璧。

「……あの、洋季だよね?」

なん……だと?

誰だ!?この華麗な術を見破った奴は!

「え?………あ、アリスだよぉ」

な、何と。貴様かアリス!………誰だっけ?

「………ひどい……朝会ったばっかりなのに」

え?いやだって、なんか目の前の席に座っているこの美少女が?あの背が高いアリス?

「び、美少女って………じょ、冗談は止めて下さいよ」

確かにオレンジ色の頭髪は一緒だ、だが今は何故かアリスが絶世の美少女にしか見えなかった。サングラスを取ったからか?それだけなのだろうか?確かにそのきれいな瞳と、素顔があらわになった為に、より美しい人だと感知はできた。だが、それだけだろうか?透き通った優しい声、どうもあどけなさを感じさせる屈託の無い話し方、まるで頭から足の指先まで、全てが可憐で、艶やかで、見るもの全てを魅了させる何かがあった。これがまさか朝会った子だとは、さすがのオレも気づけなかった。

「~~~~~~!!そ、そんなに褒めないでくださいよ!で、でも………ちょっと、言われた事のないことばっかりですから、その……胸が、どきどきします………あ!でも!ときめきじゃないですよ!………た、多分ですけど、って!わ、私何言っちゃってるんでしょうね!?」

「さっきからごそごそ喋っているのは、お前だ!咲根さきねアリス!」

「え?いや!違うんです先生!ここに洋季先輩が」

碁五郎に指をさされたアリスは必死に後ろのカーテンに指をさした。だが、もうそこに、アリスがいると思っていた人物はいなかった……マルッと。

ははは、いち早く教室を出といてよかったよ。危なく名探偵碁五郎先生にいる事がばれる所だった。あとアリスごめん。君が一年だとは思わなかった。

何だか今謝る所そこかよ!って聞こえたけど、まぁいいや。

さて、先ほどの教室にはいなかったし、次行こう次。


やばい、この教室には、先生ランク鬼レベルの奴がいる。レベルの説明をすると、鬼は武器を持っている先生の事をさす。しかも厳しい先生なので怒らせれば命は無い。ちなみに東雲先生は悪の大王レベル。

話を戻すが、この教室にいるのは、生物教師の桜田さくらだ。女の癖に生物教師ってのはなかなか珍しいが、いっつも変な薬品を常備持っている。この前かけられた薬品は硫酸だった。マジでやばかったよ。

さて、どうしたものか………よし、今度こそこっそり入ろう。

オレは後ろのドアをそぅっと開けて、素早い身のこなしで教室に侵入した。

桜田はまだ気づいていない、よし、このまま後ろの席の奴に声をかけよう。

オレはポケットから定規を取り出して、後ろの席で睡魔と闘っている男子生徒をターゲットにした。

ゆっくりと近づいて、まずは定規を素早く首の頚動脈に当てる。

「うぉ!?」

「静かにしろ」

「ヒッ!……お、お願いです!命だけは!」

「まぁまぁ、お前はオレの質問に答えればいいんだ。夜桜乃之亜はここの教室にいるか?」

「え?は、はい!一番前の席です!」

「え?……うそ?」

オレが目を向けると、何という事だ。マジでまん前にいやがる。

これでは近づくに近づけん。万事休す。

「ふむ、どうしたものか」

「あ、あの……もう放してくれませんか?」

「まぁまて、とりあえず眠っててもらおうか」

「そんな!話が」

オレの手刀は見事に決まり、男子生徒を眠らせる。

そのままこいつの席をのっとり、さぁ作戦を練ろうか。

「おい、一番後ろの貴様は誰だ?」

「ふ、このオレを知らないのか?ならば教えてやろう!オレは伊藤洋季だ!」

「洋季か、ちょっと待ってろ、今ヒ素を微弱成分に変えた劇薬を持ってきてやる」

「さいなら!」

オレがダッシュで教室を出ると、何と桜田も追ってきた。こいつ、陸上部顧問だけあって俊敏な動きだな。

「そのポニーテールは伊達じゃないって事か」

「ポニーテールは関係ないだろう?」

ふむ、クールな表情にクールな物言い、東雲先生よりは可愛げがあるな。

「お前に褒められても嬉しくないな」

「まぁまぁ、東雲先生よりは、っていう評価なんですから、皮肉みたいなものですよ」

「………そうか、どうやらお前は自爆スイッチに手をかけてしまったようだな」

ふん、何をわけの分からない事を。

「洋季。後ろを見てみろ」

「ん?」

オレの後ろには本気で怒った表情をしている不動明王、もとい東雲先生が直立していた。

だが!これ如きで折れる洋季様ではない!

「先生は美人で可愛いですよ!もうね!ショートカット最高!ほら!背も高くてモデルさんみたい!スレンダーだし!胸もあるから彼氏がたくさんいすぎて困っちゃうくらいでしょ!」

「生憎だが………今まで交際した異性はいないんだが?」

「はは、ですよね~」

「だが、ここまで突き合った男は、お前一人だけだぞ洋季」

「ご冗談を、先生が一方的に突き刺しているではありませんか」

オレは頭をかきながら軽やかに笑う。そして次の瞬間、三階ではあるが窓を突き破って外へ飛び出した。

  「ガシッ」

おっと、首根っこ掴まれた。

「危ないぞ洋季?三階からではいくらのお前でも怪我をするぞ?」

「怪我で済まさせてください」

「断る。とりあえず反省室に来い。たっぷり可愛がってやる」

「わ~い!人生オワタ」

オレは翌朝、校庭の木に吊るされた状態で朝を迎えた。

危うくお天道様にも迎えられそうになったが、龍介と佳孝に助けてもらった。ありがとうお前ら。





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