表紙「思った事を直ぐ口にしない人は利口です」
言い忘れていたが、歴史上の伊達政宗を期待した人々に言っておく、歴史は残念ながら関係ない、なにせ現代の学園だからな。純粋にギャグを求める気持ちで、軽く見てくれ。
この寒い時期。皆様どうお過ごしですか?
私は補習です。めっさ赤点補習を学校の教室で受けています。
本来なら、お正月に新年参りお餅つき。日本国最古から続くお祝い事をしなければならないのにもかかわらず、学校機関はあろう事か、権力無き生徒をいい様に扱う始末。
これは横暴たるものではないでしょうか?
「洋季、何か失礼なことを考えてないか?」
顔だけは美人な東雲先生が竹刀片手に睨んでくる。
全く、こんな奴が聖職たる教師になっているとは、ここは一言物申さねば。
「全然!今数学に勤しんでいますので!失礼なことなんてそんな滅相も無い!」
「フン、そうか。じゃあ私はタバコを吸ってくるが、絶対にサボるなよ?」
ふふ、どうやらオレの台詞に困ったようで、いそいそと逃げていきよったわ。
おい、誰だ今なさけねぇとか言った奴?
にしても、高校数学とは何とも面妖なものだ。
いやね、理解できないわけじゃないんだよ?たださ、面倒というかなんと言うか。
つーか数式じゃなくて文字式ばっかりって、それ数字と関係なくね?数字を学ぶで数学だろ?文字式ばっかりなら文字学にでもしろや!全く!
「洋季、お前今無茶苦茶なこと考えていただろ?」
「隣の席で同じく補習を受けているのは、正真正銘の馬鹿でオレの下僕、設楽龍介。顔がよくてバスケ部エースで女の子にモテるイケメン野郎。インターネット内の某掲示板で使われている用語で言うなら、リア充。リアル充実してます、のリア充。つまり全世界の男の敵って奴だ」
「おい、全部口で言ってるぞ?ていうか下僕じゃねぇよ」
ふん、オレよりも馬鹿なのは否定しないのだな。まぁ事実だしな。勉強しても全く頭に入らないのだからな!努力していても成績は上がらないこいつを見ていると、やはり勉強なんて無駄だというのがよく分かるぜ!よってオレは一切勉強しない!これは天才ゆえの選択なのだよ。
「絶対にお前は天才じゃない。むしろ馬鹿だ」
「貴様ぁあ!いつ読心術を学んだのだ!」
オレが龍介の襟首をつかんで叫んでいると、後ろにいたもう一人の友が口を挟んできた。
「洋季もリュウも早くしてよ?僕ずっと待っているんだよ?」
こいつは黒三沢佳孝。黒沢なのか三沢なのかはっきりしない名字だが、本人は成績優秀な生意気小僧である。しかも対人関係を築くのが面倒のようで、偶然幼馴染である我ら二人としかつるまないという、いわば小動物のようなショタ坊である。
「ちょっと、洋季変な説明してるだろ今?ショタ野郎とか言った?」
幼さが残る整った顔が剣幕に包んだ表情をする。まぁ佳孝は怖い顔をするのが得意だからね、ここは怒らせないように言い訳をしておこう。
「バッカ、ショタ坊って思ったんだよ」
優しい笑みでそう言ってやると、佳孝はカバンをオレに向けて投げつける。
顔面ヒット。やばいぞ!このカバン辞書込みだからくそいてぇえ!
オレは痛い素振りを見せないように教室の床を転げまわった。
「十分痛そうなリアクションだな」
「ふん、変な事を言う洋季が悪いもんね」
龍介と佳孝がオレを見てはいるが、心配する様子を全く見せない。全く、幼い頃からの親友同士だと思っていたのに薄情な奴らだな。オレは恨みを込めながら二人の不幸を心のそこから祈った。
「はいはい。恨めしそうな顔してないで、早く課題終わらせてよ」
佳孝に言われて、ようやくオレは席に着き、課題の続きをする。
そんな日常が、おれ達の日常であった。
「あ、やっべ、これ数学だと思ってたら英語だった」
「どんな間違いしてんだよリュウ」
オレは全てのオチをコイツに持っていかれたような気がして悲しくなった。
生まれた頃から思っていることが表情に出やすい体質、それがこのオレ『伊藤洋季』。新年を迎えたので、いよいよ二年生へと進級する。え?留年?しねぇよ馬鹿!
新入生の頃は知り合いがリュウと佳孝のみだったが、ちゃんとクラスには馴染めた。まぁ佳孝はちょっと異質だったが、まぁ会話はできるんだからオッケーさ。
そして二年生になり、いよいよ新学年としてのスタートが始めるのだ。
リュウと佳孝とは別のクラスでな…………。
あれ?おかしくね?
物語的には二人とも重要キャラだろ?もしや設定ミス?
おいおいおいおいおいおいおい!オレみたいなギャグの塊がツッコミ無しの教室でやっていけるわけ無いだろ?どうすんだよ?どうすんの?
オレの心配は余所に、新クラスになってから数日経った。
何とか女子グループにはリュウの知り合いが多数いたため、クラスの女子とは馴染めた。サンキューリュウ。でもリア充は敵だ。
しかし、ところ変わって男子勢とは厳しいものがあった。それは、野球部などの熱血グループとナヨナヨオタクグループの二つが主な男子グループだからだ。
オタクグループは比較的頭のいい奴が揃っている。結構異質なキャラが多いが、なぜかイケメン部類の奴もいる。まぁアニメ好きが揃っただけのグループなので輪に入れないことは無い。会話は一切理解できないが。あ、でも某掲示板の話になら対応できる。
代わって熱血グループも、悪い奴は一切いないのだが、何せいわゆる身内グループ。つまり野球部ばかりの話で盛り上がるため、ついていけない。
要は、ハブられてはいないが孤立している状態………なのである。
これは非常にきつい。何というか厳しい。
放課はいつもオタクグループの近くにいるが、話に加われない。
組みを作るときは熱血グループの奴らと組むが、その情熱についていけない。てか若干キャラが被っている気がした。
どんどん厳しくなるクラス内での疎外感。オレはどんどん自分のキャラが薄くなっていくのを感じた。
これは一大事だ。オレは直ぐに己のこれからのスクールライフを改善するために二人を呼んだ。
下校時刻。
リュウと佳孝の三人で帰る時、早速オレは今の近況を言った。
二人も別々の教室のため、自分達の近況も織り交ぜながら話は進む。
「つまり……要約すると、洋季は一年次に比べて比較的孤立していると。そして佳孝は完全に孤立していると?」
「失礼な言い方だな?僕は他人に興味は無いんだからこれでいいんだよ」
佳孝のクールぶりは、言い訳っぽさが全くない分、それはそれでどうだろう、という思いが走る。
「にしてもリュウは交友関係が広いからもう馴染めているんでしょ?さすがだね」
「このクソリア充大魔王が!しね!もうホント不幸になりやがれ!羨ましすぎだぞ!てかオレがクラスになじめている相手がお前の女友達ってどんだけええええ!!!」
「そ、そんなに怒るなよ」
はん!嫌味を言われても言いかえさねぇとはドンだけいい奴なんだよお前は!
「はっ!いかんいかん、こんな奴を褒めたらオレの価値が下がる」
「洋季、そこまで言うか?」
龍介がさすがに少しキレた素振りを見せるが、問題ない。オレは空手道場所属だ。勝てる!
「家が空手道場なだけでしょ?」
そ、それでも一応空手学んでいるんだよ!
久しぶりに楽しい会話で下校できた。うん、実にいいことだ。
だが、結局オレのクラス内での孤立化対策は練れなかった。なにそれひどい。
オレは親友どもが役に立たないことを悟り、自分で動くことにした。
まずは同じクラスメートに助言を求めるべきだったな、ふふ、我ながららしくない策を取ったよ。
クラスメートその1
バスケ部マネージャの一人、糸居沙良。かわいい系。
「え?孤立化してるっけ洋季くん?」
こいつは良くも悪くも空気の読めない天然少女なのだが、気軽に話せる人間なので困ったときはこいつを頼る。まぁ頼られるときもあるがそんな時は大抵見捨てる。
「そういえば!洋季くんこの前私が頼んだ遠藤さんへの伝言忘れていたでしょ!マネージャー同士の伝言は大切だからあれほど頼んだのに~」
「安心しろ。お前はいっつも忘れているから大して支障は出なかったと思うぜ」
沙良がギャーギャー喚き始めたので、次行こう次。
クラスメートその2
野球部の豪腕スラッガー、倉知憲太。マッスル形。
「………野球部に来ればいいじゃないか」
「論外」
暑苦しく勧誘してくるのでオレはダッシュで逃げた。
いやね、いい奴らなんだけどね。熱血漢で男らしいけどさ、オレのキャラが薄くなっちゃうから。
クラスメートその3
オタク研究会創設者にしてアニメ研究会会長でもある、高木和紀。デブ体系。
「それじゃあまずは軽くエヴァの映画を見ようか。話はそれからだ」
「オーケー、永遠に話は始まらないようだ」
全て大失敗。
オレのキャラを認めてくれる人間はこのクラスに存在しないのか?
昼食時間になると、野球部はグランドへ、そしてオタク達はパソコン室へ。
オレは馴染むことができず、仕方がないので家から持ってきたティーカップに紅茶を入れながら窓の外を眺めていた。
紅茶にはそこそこうるさくてね、まぁ温めたカップに入れるとか礼儀作法云々は一切知らないが、ダージリンやアッサムティーなどと、結構紅茶の数は知っているんだよ。
ウソだけど。
てかこれ市販のティーカップだけどネ~。
「ね、ねぇ、洋季くん」
やっべ、砂糖だと思ったら塩だww。
「聞いて欲しいんだけど。いい?」
しょっぺぇww。あ、でも糖尿病にならずすみそうだな。
「ちょっと、ねぇ!」
あえて無視するという美学。
「無視してんじゃねぇえよ!」
「すみませんでした」
少し無視しすぎたようだ。しかも女にしては結構ドスの聞いた声だな。
抵抗せず相手に従う、ふっ、これぞ生きていく上での大切な処世訓!長いものには巻かれるぜ。
オレはすぐさま土下座をしたため、相手はいいから顔を上げろと言ってきた。
素直に顔を上げる。すると、全く知らない女子生徒が怒った表情をオレに向けていた。
「伊藤洋季くんだよね?」
「イェスイェス」
「………設楽の友達なんだよね?」
オレの反応が気に入らないのか、相手は引きつった笑みの表情に変えた。
「龍介か?確かにそうだがそれがどうした?惚れたのか?告白したいからオレに伝言か?」
「違うわよ。でも、ここじゃあ言いにくいわ。ちょっと来て」
「だが断る」
「あ?」
やっだー、この子チョー怖いんですけど~?
無理やり連れて来られて屋上へ。
一応立ち入り禁止区域なのに、この少女は何の躊躇もなく入っていく。
すると、屋上でたむろっていた不良方が見える。
三人だ。一人は骸骨マークの入った眼帯のイケメン。こいつはリア充臭がしやがるぜ。
もう一人はサングラスをしてくわえタバコ。オレンジ色のド派手な頭髪がチャームポイントの背の高い男。
残りの一人はPSPの画面に見入っているスケ番らしき不良だ。
「っていうかスケ番って言い方古くねぇかオレ?」
「なに変な事を唐突に言ってんだよ?」
オレをここへ連れてきた女はオレにそんな文句を飛ばす。
そして、屋上においてあるには違和感のあるソファーに座って、オレを改めて睨んできた。
「まぁ、この様子を見れば、私が何者かが分かるよな?」
「あぁ、まさかアンタがこの学校の生徒会長だとはな」
「どこをどうみりゃそう見えるんだよ!ちげぇだろ!不良のヘッドだよ!か・し・ら!」
それにしてはなんとも愉快なツッコミを入れてくれるキャラなんだろう。
まぁそれは置いといて、なぜオレはここに連れて来られたのか聞こうかな。
「実はお前に頼みがあってここに呼んだんだよ」
おっと、聞く前に答えちゃってくれたな。仕方ない、名前を聞こうか。
「私の名前は夜桜乃之芽。この学校で番はってる者だ」
「………なぁ、オレの周りには読心術のプロフェッショナルが揃っているのか?」
「何だかお前の考えって見えるんだよ。分かりやすい奴っていうか」
ふん、どうせ読心術の極意をばらさないための方便だろ?これだからケチな奴は心が狭い。
「け!ケチじゃねぇよ!お前が分かりやすいってだけだよ!」
「ふん、ならオレの今思っていることを当ててみろ!そうだな……なんでオレをここに呼んだんだ?」
「あぁ、お前をここに呼んだ理由だな。それについては今すぐ話すよ」
「おぉ!すげぇ!何でオレの思」
「実は、妹の恋路を手伝って欲しくてな」
やっべ、スルーされたww
「妹の名前は乃之亜、ここの一年になったばかりなんだけどね……中学時代からの思い人がいるのよ」
「え?オレ?」
「まぁ中学の先輩として憧れていたんだけどね、それがいつしか恋心に変わったってやつよ」
「わぉ、スルーかよ」
「でもねぇ、その相手が相手でさぁ。まぁ二年の奴ってだけで、それ以外知っている情報がないもんだから、恋の応援をしようにもできない状態でね」
「そのPSP何のゲーム?」
「………モントリ」
「モンスタートリック?やべぇ、オレも好きなんだよね!武器は?やっぱりハンマー?」
「……双剣」
「あぁ!それもいいなぁ~、大海蛇倒した?」
「………まだ。どうやって倒すかわからない。どうやるの?」
「実はまず海賊船で誘い出して砲弾で攻撃をするんだ、それから」
「なにしてんだ?」
オレは頭をワシ掴みにされる。握力は推定70キロ。正直頭蓋骨にひびが入ったかも。
「聞いてたか?なぁちゃんと聞いてたか?」
「あぁ、とりあえずオレの意見だが、乃之芽とか乃之亜とかっていう名前はどうかと思うぞ?」
「そんなのうちの親に言え!関係ないだろ恋路とは!」
「それとさ、君の名前教えてよ」
「え?………や、夜桜乃之亜です」
「ってあんたが妹さんか~い!あっはっはっはっは~」
PSPをやっていた少女、もとい乃之亜と漫才を繰り広げていたオレは、乃之芽に熱い鉄拳をくらった。
「で?大体の内容は理解してくれたか?」
「はいはい、もちろんですよ姉御」
オレは青タンを右目にできた表情で笑顔を作る。正直泣きそうだががんばる。
「でも、ぶっちゃけ今更ですけど、何でオレを協力者に?」
「うん?いや、丁度教室内で声がかけやすい男がお前だったのと、あの設楽の友人だから、恋愛経験は豊富なのかなと………」
え?何言ってんの?経験0っすよオレ?まぁいいや、相手は読心術のプロ、今ので分かってくれただろ。
「じゃあ、頼んだぞ!」
あれ?気づいていらっしゃない?
「ちなみに………失敗したら、死刑な」
……………………あれ?いつ死亡フラグ立った?
よ、よく最後まで読めたな。驚きだぜ。
更新は遅い可能性があるが、期待してくれるなら全力でがんばる。