電子書籍第一巻発売記念SS-予想が出来ない彼女の言動
タイトルでネタバレしておりますが、後書きにてお知らせがあります!
カイル視点、番外編です。
(ep.14④面倒見が良…すぎません!?後の内容となっておりますので、読了後の方がより楽しんでお読みいただけるかと思います…!)
(カイル視点)
目を瞑り、耳を澄ます。
感じるのは、聞いているだけで心落ち着く風の流れる音、髪や頬を撫でていく感触、少しひんやりとした温度、そして自分の身体に流れる風の魔力。
それらを繋いだアリシア様の手に伝わるように込め、感覚を“共有”する。
そうして毎日“特訓”を続けて早一週間、徐々に変化が見られ、ついに“兆し”が見られた。
(……共鳴している)
アリシア様の手から伝わる、彼女自身に流れる風魔法の力を今日初めてしっかりと感じ取ることが出来た僕は、ふっと魔法を消し、彼女の手を離して距離を取る。
すると、アリシア様はキョトンとしたような顔をして首を傾げる。
「あれ、もう終わりですか? いつもはもっと長いような……?」
と戸惑った様子のアリシア様に向かって僕は言葉を発する。
「はい。もうこの特訓は必要がないかなと感じたので」
「え……?」
僕は少し離れた場所まで歩き、下に落ちていたものを拾うと、アリシア様の元へ戻りそれを彼女の目の前の足元に置く。
「この小石を風で浮かせてみてください」
「……え!?」
アリシア様は両手をバツにして、ぶんぶんと首を横に振りながら答えた。
「む、むり、無理です!! だってまだ一週間ですよ!?
紙を浮かせるどころか一ミリも風を発生させることすら出来なかった私が、小石を浮かせるなんて……っ」
「出来ます」
僕が断言すると、アリシア様の手がピタリと止まり、大きな目がより一層大きく見開かれる。
僕はその紫の瞳から目を逸らさずに口にした。
「確かに感じました。僕の魔力とは違う、貴女自身の魔力……、風が流れるのを。
今までも少しずつその力を感じ取ってはいましたが、今日ほどしっかりと感じ取ったことはありませんでした。
ですので、今の貴女ならその小石を浮かせることは出来るはず。
やってみてください」
「…………」
アリシア様は戸惑ったように、無言で石を見つめる。
その表情を見て、僕はもう一押しと言葉を付け足す。
「それとも、僕の言うことが信じられませんか?」
そう尋ねれば、アリシア様は先ほどの戸惑いはどこへやら、全力で首を横に振りながら即答する。
「いいえ!? まさか!! カイル様の言うことが信じられないはずがないじゃないですか!!」
「そうですか。でしたら、はい、お願いします」
「! うっ……」
アリシア様はしまった! というような顔をして呻く。
その反応を見て首を傾げた。
「なぜそこまで頑なに嫌がるのです? 試さなければ魔法が使えるようにはならないと思いますが」
「そ、そうなんですけどね!? そうなんですけど……その」
アリシア様はもじもじとした後、俯き小さく呟くように言った。
「……もし魔法が上手くいかなかったとき、こんなにカイル様のお時間を奪っておいて申し訳ないですし、それに幻滅されないか心配で」
「……!」
思いがけない発言に目を丸くする僕に、アリシア様は慌てる。
「わーわー今のなし! 忘れてください!
よ、よーし! とりあえず一回やってみますかー!!」
アリシア様は不自然なまでに元気よくそう言いながら、手を石に向かって翳す。
緊張した面持ちでいるアリシア様を見て、放って置くことが出来ず声をかけた。
「アリシア様」
「は、はい!」
「リラックスです」
「リ、リラックスですね!」
彼女は深呼吸を繰り返す。その仕草を見て自身の表情筋が少しだけ緩んだのを感じながら、アリシア様と出会っていなかった頃の自分では出てこなかっただろう言葉が、自然と口から紡がれる。
「……幻滅したりなんかしません」
「えっ?」
集中していたのだろう。アリシア様の真っ直ぐすぎるほどの瞳が僕を見つめている。
そんなアリシア様からは見えていない瞳で僕も見つめ返しながら言う。
「以前にも申し上げましたが、そんな簡単に幻滅しません。そもそも、魔法が上手くなりたいという貴女の願いに付き合っているのですから、魔法を試さずして上手くなるわけがないでしょう。
……それに」
僕は悪戯っぽく笑って言った。
「僕がついているのに上手くならないわけがないじゃないですか」
これはほんの冗談のつもりだったというのに、アリシア様はパァッと顔を輝かせて言った。
「そうですよね!」
「え」
「カイル様がついているのですから、百人力、いえ、千人力です!」
「ちょ」
「こんなに素敵で特別な師匠は、世界に一人だけです!!」
「……っ」
無邪気に、何の躊躇いもなくそう彼女が口にするものだから、顔が熱くなるのはきっと不可抗力で。
アリシア様はというと、そんな僕に全く気が付くことなく拳を握りしめて言った。
「そう、カイル様がいるから大丈夫! 私は出来る!!」
途端に先ほどの迷いはどこへやら、アリシア様の顔にいつもの笑顔が戻る。
(……前髪で顔が隠れていてよかった……)
と、隠れていない顔の下半分を無意識に手で覆いながら思うのだった。
アリシア様を励ますつもりが思わぬ被弾を喰らい、さらに風魔法を使って石を浮かせることが出来た彼女が勢いよく僕の胸に飛び込んできたのは、この後すぐのお話。
あとがきが間に合わないまま公開しておりました…!
申し訳ございません〜!気を取り直しまして。
本日より電子書籍第一巻がエンジェライト文庫様から、表紙はボダックス先生にご担当いただき、電子書店さまにて配信開始されております!
目印となる表紙がこちら↓
美、美…!!ですよね!!カイルとアリシアの親密そうな距離感とカイルのご尊顔!お揃いの色のオッドアイとかやばいですよね…♡
こちら全二巻構成で、第一巻はカイルが表紙絵のように髪を切るに至るまでを校正+収録、そしてカイル視点の番外編2編を加筆させていただきました!
なろう版にはないカイルの本音が明らかに!?となりますので、是非お好きな電子書店様でお手に取っていただけたら嬉しいです♡
どうぞよろしくお願いいたします〜!!




