8話
ここでの投稿方法を勘違いして毎回消しかけてる。(今回もそれ)
石扉に描かれた槍を装備して一人で戦うというものに従い、最後の部屋で戦うために作戦を考えていた。
「あの時に見えたゴブリンは五体。あの石扉通りなら、あのゴブリン達を一人で倒し切るのがカギなはずです」
「槍術はからっきしだからスキルを持ってる天楷くんに頼んだ方がいいが…嫌なら俺が行こうか?」
「大丈夫です。さっきのでレベルも上がったし、この調子を逃したくないですから。でも五体を一人か」
プロの格闘家でも、武器を持った素人三人を相手にすると負けるという話を聞いた事がある。二人を視界に捉えても、残った一人に背後から襲われたらそこから押し込まれてしまうのだという。それが怪物で更に五体だというのだから言ってしまえば無理ゲーもいい所だ。
「さっきの戦闘もそうだけど、やっぱゲームとか特撮みたいに一人二人前に出てる時に他はウロウロしてるなんて無かったよな。あいつらですら後方にいる奴等は回り込んだり端に追い込んでって立ち回りしたり数の力を理解してやがった」
「ある意味あの戦闘は奴等の能力を深く知る事ができたと言えますね。個体のスペックは勿論、チームワークや相手の弱点を観察する力や隙を見つけて共有する術も持ち合わせている。一人でとなると簡単にはいかないだろうね」
江藤さんの言葉に村瀬さんも同意する。あのゴブリン達の戦い方は滅茶苦茶に見えて徐々にこちらを追い詰めていた。銃という現代の武器がなければ危うかっただろう。流石にあれを近接武器だけではどうする事もできない。
「角で戦えたら少なくとも後ろから奇襲を受ける事はないが、その槍となるとその利点を生かせないだろうな」
「ランスならもう少しなんとかなったかもしれないんですけどねー。後は怪我を治せないかですかね」
江藤さんの言う通りだ。俺は今打撲や擦り傷で体力的には瀕死一歩手前の大怪我だ。郡司さんはこの状態でも戦う事を止めないが、内心穏やかではないだろう。もし郡司さんにも槍術スキルが手に入ったら俺の戦闘は許してくれなかったはずだ。
「そうだ!天楷くんが開けた宝箱に入ってた瓶!あれ回復ポーションとかじゃないか?」
「確かに、ダンジョンでは定番ですよね。三本あるし、一本試しに飲んでみるのも」
「大丈夫なのか?もし毒薬とかだったりしたらここには解毒剤もないぞ?」
郡司さんは渋い顔をして瓶の中身を飲む事に否定的だが、俺は意を決して蓋を開け、中身を一気に呷る。口に入った瞬間、病院の消毒液のような匂いが鼻を抜け、蜂蜜のような味が口に広がる。相反する匂いと味だが、不思議と嫌悪感はない。全て飲み干した後には先程まであった痛みは消えて、身体が軽くなった。
「すげえすげえ!顔にあった傷全部消えてるよ!やっぱり回復ポーションだったんだ!」
江藤さんは大はしゃぎで俺の手から瓶をひったくり掲げながら眺める。村瀬さんが呆れた様子で叱るが、聞こえていないようだ。俺はもう一本の瓶を取り出してみてみると
【ヒールリキッド】
体力を30回復する。余剰分は半分の数値が加算される。
この回復で加算された分が身体が軽くなるという形で現れたのかと理解する。しかしどれだけ回復しているのか、レベルアップした分を合わせて29のはずだったけど
【天楷進】
体力 :29(+2)
攻撃力:9(+19)
防御力:10(+1)
敏捷 :7
魔力 :5(-3)
体力が2追加されてる。30回復して余剰分は半分上乗せするという話だから出た分は4。それで回復した量は26。てことは
「俺…体力残り3まで削られてたって事……?」
そう考えるとゾッとする。感覚的にはまだ余裕があったが、それはRPGでいう所のレッドゾーンに入っても攻撃や魔法を使える事と同じ原理なのだろうか。いちいち確認しなければあっという間に体力0になってしまうだろう。そうなった時、待ち受けているのは良い事ではない事だけは確かだ。
「そう考えると、呑気な考えはできないぞ……」
『まだいけるはもう危険』という言葉があるように、体力管理はできなければここでは死ぬしかない。死にかけたからこそその現実が俺をやんわりと、でも確かにとらえて離さなかった。