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6話

仕事忙し働けお前(投稿が遅くなった言い訳)

 サーベルを獲得した俺達は再び槍を取りに行くために村瀬さん達に協力を申し出た。村瀬さんは乗り気だったが、蔵井さんはまだあの部屋に怯えている。それも仕方ない。俺達は戦って勝利できているが、郡司さんと蔵井さんは敗北に近しいものを味わっている。郡司さんはすぐに気を取り直したが、蔵井さんはそうでもないらしい。


「蔵井くん、無理に来いとは言わない。天楷くんにも同じ事を言っているわけだしな。ここは敵が来ない事は確認できているし、悪いが一人で待ってもらう事になる。それで構わないかい?」


「……はい。すいません」


 蔵井さんは申し訳なさそうに顔を俯かせる。俺達は互いのコンディションを確認して左端の扉を開けた。


 扉の先には、まるで巣窟という表現が適当な程にゴブリンが待ち構えていた。数はざっと二十体を越えているそいつらは、全員が俺達をにらみつけながら武器を構えた。俺達も武器を構えるが、郡司さんが口を開く。


「村瀬、江藤!拳銃の使用を許可する!何か言われた時は俺に責任を押し付けて構わん!俺と天楷くんで敵の注意を引くからそこを狙え!!」


「「分かりました!!」」


 二人は警察官が拳銃、ニューナンブM60を抜いて構える。俺は郡司さんと合わせてそれぞれ左右に回り込んでゴブリンの攻撃を捌きながら、切りつけてゴブリンの注意を引いた。


「村瀬、こんな状況になるのもレアだし勝負しないか?」


「こんな時に何言ってるんだ。集中しろ」


「こんな時だからだよ!勝った方が今回のメンバー全員分飯奢りでどうだ?」


 瞬間、乾いた破裂音が響く。敵味方関係なくその方向へ目を向けると、村瀬さんの握る拳銃の銃口から硝煙がのぼっている。


「まず一体だ。このままだと俺が全員持っていくぞ?俺は味噌ラーメントッピング全乗せと餃子炒飯な」


「はっ!俺は焼き鳥メニュー全制覇だ!!」


 村瀬さんと江藤さんが急に食べ物の話をしだす。二人の放つ弾丸は寸分違わずゴブリンに命中してその命を奪うが、あの気迫はなんか戦いから来てるのとは違う気がする。


「あいつら…またやってるのか」


 郡司さんも何かを察したのか苦笑いを浮かべている。サーベルの動きは変わらない所を見るに慣れているのか、それでいて二人の射線の邪魔にならないようにゴブリンを盾にするよう立ち回っている。


 俺も郡司さんを真似てゴブリンが二人の射線に入るように立ち回るが、これが中々うまくいかない。訓練を受けたプロとド素人が何を比べるのかと思うだろうが、俺はできると思ったんだ。無理だと諦めた俺はすぐに切り替えていつも通りの戦い方でいく事にした。ゴブリンの腕を狙いながら攻撃を回避する。回避が間に合いそうにない時は肩や背中で受けた。かなりダメージが入ってくるが、そこからゴブリンの首をかけば問題ない。肉を切らせて骨を切るというものだ。


 この調子で徐々にゴブリンの数を減らすが、それでもゴブリンはまだ最初の半分はいた。郡司さんは疲労が見えているし、村瀬さんと江藤さんも弾薬のリロードに手間取っている。二人のダメージソースは重要だし、郡司さんの近接戦闘はこれからも重要になる。ここで俺がとるべき行動は


「ウオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 全力でこいつらの注意を引く!俺は全力で叫びながらゴブククリを振り回しながらゴブリンの集団に突っ込んだ。ゴブリンも意識が絶叫に向いていたためか攻撃をよける事ができずに様々な傷を作っていく。でもそれも一時的なものだ。


「ギギァアアア!!」


「があっ!」


 後ろからゴブリンのこん棒が俺の頭を撃つ。意識が飛びそうになるが、歯を食いしばって踏みとどまる。後ろのゴブリンを切りつけ、腕をひっつかんで振り回す。小柄な体躯通りの体重は他の仲間の顔を蹴り飛ばす。最後に投げ飛ばしてゴブリンの集団にヒットさせるとその勢いのまま今度はすぐ横のゴブリンに切りかかる。しかし俺の体力も予想以上に削られていたらしい。振り下ろした拍子に俺は地面に倒れてしまう。ゴブリン達はこれ幸いと俺に群がり、自分のこん棒でメッタ打ちにしてくる。俺は身体を丸めて頭を手で抱えるが、こん棒が身体の様々な部位を打ち付ける。


「いっ…っつう……が!!」


 カバーしきれない場所がひび割れないように少しずつ逸らしながら受けるが、痛みが絶え間なく襲い掛かる。少しずつ頭がぼんやりとしてくる……視界もぼやけ、痛覚が麻痺してきた俺に聞こえたのは


 乾いた発砲音だった。


「な…が……」


 言葉も途切れ途切れになった俺の目に映ったのは怒りの色を露わにして拳銃をゴブリンに向けた郡司さんだった。


「天楷くん、君に言いたい事が色々あるが、この時間を作ってくれたのには感謝する」


「ここからは」


「俺達の番だ!!」


 村瀬さんと江藤さんもさっきの表情などなかったようにニューナンブM60から弾丸を放つ。ゴブリン達は敵の優先度を俺から三人に変えて駆けだすが、三人は表情を変えずに一体、また一体とゴブリンを撃ち殺す。郡司さんは全て撃ち終えると拳銃をしまい、再びサーベルを抜いてゴブリンの首を切り、村瀬さんと江藤さんはさっきより格段に速いリロードで再びゴブリンを撃ち殺す。ゴブリン達は三人に近づく前に全て力尽きた。


「つ……つえ…え……」


 俺も戦って強くなった気になっていたけど、上には上がいる事を改めて意識する事になった。

【ゴブリン】

ダンジョン内で最もメジャーなモンスター。小柄な体躯はその自重に反して成人男性レベルの膂力を持つ。ただし体力、耐久は脆く、平均的な筋力を持つ成人男性なら拳で倒すことができるレベル。(ダンジョンのレベルによって上位種が存在する。)

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