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4話

ダンジョンの楽しみは宝箱と自分より低いレベルステータスのモンスターを全体攻撃で狩り尽くすドクズ。あのバンバンなる音がいい(ゲス)。

 階段を下りた先、地下廊下であったその場所にはホールを使う人が入る楽屋がある。小学校の社会見学でみた時は部屋数が四つだったと記憶していた。それもダンジョンとなったからか、地下が体育館レベルで広くなり、それに合わせたように扉も間隔が広がっている。構造を見るに部屋の中も広がっているだろう。


「一つずつ調べても日が暮れそうですね。郡司先輩、ここは」


「同意見だ。二人と三人で別れてそれぞれ二部屋ずつ探索する。俺と蔵井、村瀬と江藤と天楷くんで別れ、探索を始める」


 村瀬さんと郡司さんのアイデアで別れて探索する。俺達は一番右、郡司さん達は一番左から始めた。


 部屋に入る俺達がまず見たのは、遺跡の一室のような構造に切り出されたレンガ造りの壁。床が抜けたのか下が見渡せるようになっており、そこにはゴブリンが焚き火を囲んで肉を頬張っていた。


「多分来るところ間違えましたね」


「あいつらはまだ気づいていないし、ここは一度引きますか」


 二人の進言に俺も首肯し、静かに部屋を出る。扉を出て広くなった廊下で作戦会議をする。


「もしかしてこれ全部探索して最後にあのゴブリン倒すのが正解?」


 あの部屋にいたゴブリンは五体。丁度石扉の絵と一致する。という事はあのゴブリン五体を武器縛りで倒さなければならない。その武器がどのようなものかも分からない以上、まずはレベルを上げなければならなかった。


「とりあえず、次の部屋を調べようか」


 村瀬さんの提案で次の部屋を調べる。さっきの部屋とは対照的に、この部屋の構造は上に伸びていた。梯子がかけられた壁と、その上にあるのは


「た……宝箱だ!!」


「え、マジ!!」


 俺と江藤さんがテンションを上げる。江藤さんもゲームするのか何やるか後で聞かなきゃ。しかし声が大きいと村瀬さんからチョップを喰らう。


「ここにもゴブリンがいるかもしれないのに気を抜きすぎだ!上を見るのもいいが、まず見るべきは俺達と同じ階だろう!」


「だって……宝箱なんてテンション上げないと失礼っていうか」


「地獄みたいな所で見つけた楽しみ奪うなよ」


「は?」


「「すいませんでした!」」


 村瀬さんの威圧にすぐ謝罪する。まじめな人は怒らせると怖い。古事記にも書かれている。


 気を取り直して同じ階の様子を確認する。さっきの部屋よりは狭いが、それでも三人が手を広げて間隔をあけても十分なスペースが確保されている。ゴブリンも現れず、謎解きのような人間大サイズの四角い木箱が部屋の角に置かれていた。そして梯子をよく見ると途中で切れている。その大きさも木箱のサイズと同じ程度の高さにあった。


「あれを引っ張れって事か」


「子供向けの謎解きですね」


「図書館っていう子供も利用するって所から来てるんだろうか。何はともあれ簡単な事に越したことはない」


 三人で木箱を動かす。梯子の下まで動かして、誰が宝箱を開けるかで揉めた。結果としては


「俺の勝ちぃーーー!!」


 じゃんけんで俺の勝利だった。村瀬さんは兎も角、江藤さんは悔しそうにしていた。


「さて、あの石扉の通りなら棒状の武器だけど…槍とか棍だとこの宝箱じゃ入らないよな?」


 宝箱のサイズは小さく、とても武器が入るサイズではなかった。入ってもナイフやバックラー等の手軽なもの。今は一つでも武器は欲しいが、石扉の謎を解くカギが今は重要だった。簡素なロックを外して宝箱を開ける。そこには


「……瓶?」


 緑色の入った瓶が三個入っていた。どのような効果があるのかの説明はない。飲んで確認しないといけないが、まずは村瀬さん達にこれを見せた。村瀬さんは正体を知りたがっていたが、江藤さんは「ポーションじゃねえか!」と満面の笑みで飛びついた。村瀬さんに叩かれてた。ステータス画面で見られないかと思ったが、所持アイテムの一覧は無かったから調べられなかった。


「兎に角、これは郡司さん達にも共有するべきだ。一度廊下で待とう」


 俺達は部屋を出て郡司さん達が出てくるのを待ち、郡司さん達は間もなくして出てきた。一番左から出てきたから俺達と比べて時間がかかったんだろう。郡司さんも蔵井さんも疲労の色が見えた。よく見ると蔵井さんには打撲痕が、郡司さんの顔には切り傷と擦過傷が見えている。辛そうにしている所から服の下にも傷があるのだろうと窺えた。


「郡司さん!だ、大丈夫ですか?」


「蔵井も、顔色が悪いぞ?何かあったのか?」


 村瀬さん達も心配になって焦っている。正直別れて探索したのは俺達みたいに運よく切り抜けられたり敵がいなかったりした場合はいいけど、郡司さん達みたいに人数不足で苦労する状況だってあり得る。


「……石扉のヒントらしきものがあった」


「え!それってもしかして棒状の何かでしたか?」


「なんで分かったんだ?実際は槍だ。部屋奥に武家の刀みたいに置かれていたからそれを取りに行こうとしたら急にゴブリンが周りから現れたんだ。こうして生きているから生還できたと言えるが……正直もう行きたくないな」


 郡司さんの身体が震えている。蔵井さんは傍目からも分かるくらいに怯え切っている。余程怖い目にあったんだろうと察するには余りあるものだが、後一つの部屋を探索し終えていない。


「後の部屋は俺達で行きます。先輩と蔵井くんはここで休んでいてください」


「い、いや…俺の仕事だ……くぅ」


 責任感があるからか、郡司さんは食い下がる。しかし俺でもしんどそうに見える状況で危険地帯に送るわけにはいかない。二人を村瀬さんに任せて、俺と江藤さんで最後の部屋に入る事になった。

『アイテム』

武具は装備欄で確認できるが、アイテムは初見で内容を確認できない。『鑑定』スキルや『看破』スキル等でアイテムを見破るか、一度使用する事で内容を理解できる。内容を理解できたものは次から確認する時、本人に分かりやすい形で表示されるようになる。

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