表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

3話

よくある『鑑定』スキルなんかの扱いに困る。

 改めて出発した俺達は、最初の目標として図書館本館に向かう。この町の図書館は大きく、本館と公演ホールがあるが、ホールの方は鎖でガチガチに封鎖されていた。鍵穴があったがそれらしきものもないうえ、本館の方は、石の扉に謎解きのような模様が彫られていたからまだ希望があったのだ。


 本館の扉に着き、扉の謎解きを始める。絵で何かを表現しているのか、人型の何かが同じく人型の何かに向かって片腕を伸ばしている。その手の先には真っ直ぐ一文字が絵が描かれていて、これがヒントなのだと思う。他のヒントとしたら、腕を伸ばしていない方の人型は耳が尖っていて、伸ばしている方から逃げるように描かれている事だろう。そして伸ばしている方は一人で、伸ばしていない方は五人いる事が目立つ。


「これを見るに、『棒状の何かで耳の尖った何かを攻撃或いは殺せ』って事だろう。そして耳の尖っている人型と言えばここではゴブリン。棒状のものは…これから探せって事かな?」


 俺を介抱してくれていた警察官『村瀬憲一(むらせけんいち)』さんが情報をまとめるために話す。俺はそれに加えてこう付け足した。


「後は数ですかね。耳の尖っている方、ゴブリンは五体だけど丸い方は一人。つまり棒状の何らかの装備だけでゴブリンを五体、一人で倒すっていうのがここの扉を開ける条件……でも」


 今俺のレベルはさっきゴブリンを倒した分で上がった【1】のみ。警察官の人達も郡司さんが一番上で【3】、他の人は俺と変わらない。郡司さんだけ高い理由も、皆さんの助けに入って戦闘経験値が入ったためなんだろう。勇敢な人だし、今回の適任もこの人だろうな。


「でも、郡司先輩に頼り切りじゃいけない。ゴブリンが多くいそうな場所を探して、我々もレベルを上げる。天楷くんはどうする?ここは一度休んでも構わないが」


 村瀬さんは俺の身を案じて提案してくれる。でも俺がついてきのは、あの子を助けるためで、それなのに後ろで待っているのではここに入ってきた意味がない。俺もついていくと答えると「いらない心配だったね」と肩を竦めて笑う。全員で移動し、階段を下り、途中にゴブリンが三体こちらに気づいた。


「ゴブリンが…誰が行く?」


「俺は行きます。はやく戦えるようにならないと」


「今回は俺は外れておこう。勿論危なくなったら助けに入れるように準備はしておくが」


 俺の他は、村瀬さんの同期の『江藤智陽(えとうちはる)』さんと後輩の『蔵井朋久(くらいともひさ)』さんとなった。俺は気絶する前にゴブリンを倒す時に使ったククリ、江藤さんと蔵井さんは警棒を持って一対一の形で対峙する。俺の相手をするゴブリンは、ククリじゃなくて従来のイメージ通りであるこん棒を握っている。江藤さんと蔵井さんの相手も同じこん棒だった。


 ゴブリンは俺に向かって階段を駆け上り、俺に迫る。だが戦闘において立ち位置は重要。下から動くゴブリンは、最初のゴブリンより明らかに遅かった。ゴブリンのこん棒より速いタイミングでククリを横薙ぎに振る。ゴブリンは素早く対応するが、こん棒を振る手は間に合わずククリの刃が入る。常人なら生物の骨を切るのに届かず食い込むだけにとどまる。しかし、俺の予想に反し、振ったククリはゴブリンの腕を切り落とした!


「は?」


 俺は状況とは全く違う間抜けな声をあげていたんだろう。実際そう聞こえたし周りの警察官の皆さんもあり得ないものを見るような目で俺を見ている。ゴブリンは切り落とされた腕を抑えて地面に蹲り、うめき声をあげて動かない。他のゴブリンも士気が下がっている今がチャンスだった。


「今だ!畳みかけろ!!」


 郡司さんの発破に俺達の意識は覚醒する。俺はゴブリンのうなじめがけてククリを振り下ろし、ゴブリンは大きく痙攣した後黒ずんで消滅する。江藤さんと蔵井さんもゴブリンを倒せたようだ。


「天楷くん、今のは何だったんだ?君そのナリで実はすごい鍛えてたのか?」


 村瀬さんの詰問に俺も言葉を詰まらせる。その中で思い出したのが【攻撃強化:微】のスキルだった。ステータス画面を開いてスキル欄を確認する。【攻撃強化:微】の項目に何か説明がないかと確認するが、説明が書かれていたので読んでみる。


【攻撃強化:微】

 自身の攻撃力、飛び道具の威力が微増する。(重複不可)


「……だそうです」


「だとしてもあんなになるのか!?間違いなく人間の規格以上出ていたぞ!?」


 く、クリティカル……と言い訳をするが、村瀬さんの目は俺を疑うような目になっている。だって俺も気になったけどゴブリンの遺体もう消えちゃってるもん。なんでさっきはこと切れただけで最後まで残ってたのに今回は消えてんだよ検証できないじゃねえか!!


 運よく手首の関節部位に切り込みやすい角度で入ったと言えば極低確率で起こりえるかもしれないが、正直いたたまれない。「あれ、俺なんかやっちゃいました?」とか今時流行らないって!俺そんなキャラじゃないから!見るな…そんな目で俺を見るな!


 そんな俺の祈りが届いたのか、皆さんこれ以上追及しないでくれた。その中でふと気になったものがあってそれを調べられないかあれこれ探してみた。そしたら見つけたのだ。ステータス画面にある装備の項目だ。


 俺が気になったのは使っていた武器の性能だ。こんなRPGよろしくダンジョン探索とモンスターとのバトルがあってステータスだのスキルだのあるのに装備にその項目がないのはあり得ない。装備項目を確認し、【ゴブククリ】を見る。


【ゴブククリ】

 ゴブリンの持つククリ。

 攻撃力:15


 武器の攻撃力がどれくらいが強いのか分からないが、さっきの戦闘を見ても強い部類なのだと思える。というか、俺自分のステータス見てなかったじゃんと自身のステータス画面を確認する。


【天楷進】

体力 :24

攻撃力:6(+16)

防御力:7(+1)

敏捷 :5

魔力 :3(-2)


『スキル』

『攻撃強化:微』『耐久強化:微』


 大分雑なステータス表だがこれを平均、いや俺は普段運動しないから平均より少し下と見て体力以外の全平均を8くらいとすると、ククリの性能はかなり高い。てか俺これで切りつけられてよく無事だったな。とりあえずこれを村瀬さん達に見せて何とか納得してもらった。


 因みに、村瀬さん達のステータス平均は13、体力平均は35で、警棒の攻撃力は3だった。一応俺の攻撃ステータスがトップだけど、俺のククリを郡司さんに持ってもらった方がいいと思ったが郡司さんが拒否した。「それは俺が手に入れた物じゃない。君が勝ち取ったそれは君の物で、君を守る武器だ。外に出たら回収しなくてはいけないが、今は君が持っていなさい」と言ってくれた時は胸が熱くなった。


 でも魔力が3なのは俺には魔法が使えないと暗に言われているようで辛い。パッシブスキル二つ使ってるから実質1だし。

『石扉の謎』

 人間1人と5体のゴブリンが描かれており、人間の手の先には棒状の武器が投げられているように描かれており、ゴブリンはその武器から逃げるように描かれている。鍵穴は無い。一枚岩でできているが、岩の下部をよく見れば擦れ、削れた跡が見られる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ