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第44話 ダンジョンに入ります

ダンジョンというのは不思議な場所だ。


グレンコットの街外れに大きく口を開くような洞窟。


それがダンジョンの入り口だった。


そこに足を踏み入れた瞬間、まるで異世界に迷い込んだような感覚になる。


「これがダンジョンですか」

「ええ。面白いでしょ?」


最初こそ、洞窟然とした一本道が続いていた。


だが、次の階層に降りると……。


「これは……」


大きな空間……そして、迷路のように入り組んだ通路……。


そして、マグマが滾る場所……。


そんな景色が眼前に広がっていた。


「この階段を降りてからがスタートよ。ちなみにここで見ている景色は幻。だから、覚えても意味ないわよ」


すごいな、の一言だ。


冒険者という人たちはこんな場所で命を削って、稼いでいるのか……。


「この奥には一体何があるんですか?」

「え? 決まっているじゃない。次の階層に向かう階段よ」


……は?


ここだけじゃないのか?


「ちなみに次の階層の奥には?」


「同じよ。そのさらに下への階段」


……マジか。


「ここってどこまで下に続いているんですか?」

「さあ? まだ、分かっていないわよ。でも、すごいお宝があるのよ、きっと」


なるほど……それを夢見て、冒険者はダンジョンに潜るのか……。


そんな物見遊山気分は一瞬で吹き飛んでしまった。


通路の影からモンスターが現れたのだ。


「ここは私に任せて!!」


これが冒険者の戦いか。


すごいな。


一撃で倒してしまった。


「凄いですね!!」

「そう? でも、こいつは雑魚。奥にもっと強いのがいるわ」


そう言いながら、マリアさんは倒したモンスターの体を漁っていた。


「何をしているんですか?」

「何って……ドロップ品の回収よ。これが私達の生活の糧なんだから」


手にしていたのはモンスターの指だった。


「これをどうするんですか?」

「売るのよ。ギルドで」


へぇ……そんな仕組みだったのか。


モンスターを倒して、お小遣いを稼ぐもよし。


最下層を目指して、一攫千金を得るもよし。


そういうことなんだな。


「ダンジョンって、面白いですね」

「そうでしょ? だけど……もっと面白い場所があるのよ」


本当に奥が深いんだな。


「フェリシラ様。大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫ですわ。でも、ちょっと……」


フェリシラ様が震えている?


「僕の手を握りますか?」

「いいのですか? それではいざという時に……」


こう言っては何だが……。


多分、このメンバーで一番役に立っていないのが僕とフェリシラ様だろう。


だって……。


「お兄ちゃん、ぶちゅって潰れちゃったよ」

「ライル殿。これはウィネット様が喜んでくれるだろうか?」


もう、勝手にモンスターを倒しまくっていた。


「僕の調査はもうちょっと開けた場所でやるつもりですから」

「それなら……お言葉に甘えさせてもらいますね」


フェリシラ様の手はすこし汗ばんでいた。


やっぱり、怖いんだな……。


まぁ、僕の手のほうが酷いことになっているだろうけど。


「ごめんなさい。僕の手……」

「とっても落ち着きますわ。ありがとう、ライル」


……可愛いな。


僕達は快進撃をするように、どんどん先に進み次の階層にたどり着いた。


「ここから先は危険になってくるわ。落とし穴にも注意よ」


そんなものまであるのか……。


ここは本当に不思議な場所だ。


一体、誰がこんなものを作ったのだろうか?


「ねぇ、ライル。私も戦ったほうがいいかしら?」


それを僕に聞きますか?


もっとも役立たずの僕に。


「えっと……今は大丈夫じゃないですか? 魔法はいざという時の方が」

「そう? そうよね」


まだ、怖がっているのか。


……それにしても……


「お兄ちゃん!! 見てよ。おっきいトカゲだよ。食べたら美味しいかな?」

「ライル殿!! これもウィネット様が喜ぶだろうか?」


元気だな。こいつらは。


「さて、ここらへんで休憩にしようか」


ん?


ここは……モンスターの気配がないな。


「ここはセイフティーゾーンっていってね。モンスターが入れないように結界が張られているんだ。これのせいで、私達がいくら払わされているか……」


維持費がとても高いようです。


「まぁ、これがないと休憩も出来ないから、仕方がないんだけどね」


休憩中もずっとフェリシラ様と手を握っていた。


「ねぇ、二人って付き合っているの?」


マリアさんの他愛のない言葉だった。


手を繋いでいるから誤解しているのだろう。


ここは……。


「違……」

「そうみえるかしら?」


ん?


「あ? ああ、まぁ……」

「そう……」


あれ? 終わり?


でも、フェリシラ様、とっても嬉しそうな顔だな。


「さて、行こうかね」


そろそろ僕の調査もやらないとな。


「あの、ちょっと開けた場所ってありませんか? 硬そうで、剣で太刀打ちできなさそうなモンスターがいるといいんですけど」


「硬そう? ……そうね。うってつけの場所があるわ。私にとっても、あなた達にとってもね」


……ん?


もしかして、おいしいドロップ品でもあるのかな?


まぁ、今回はドロップ品は全部、マリアさんに譲しかない。


それ位のお返しはしないとな。


「案内、お願いしてもいいですか?」

「ええ、もちろんよ。そういえば、貴女達!」


マリアさんがイディア様とアリーシャに話しかけるなんて珍しいな。


「そこのエルフさんはキレイな物を探しているの?」

「む? ああ、私の崇拝する方のお嬢様が気に入るものを」


「だったら、いいのがあるわよ」

「本当か?」


……。


「お嬢ちゃんはおいしい食べ物を探している?」

「うん。料理に使える新食材をゲットしたい」


「だったら、ここからちょっと行った場所にマモーっていう牛のようなモンスターがいるわ。そのお肉は最高なのよ」

「にくぅぅぅ」


流石だな。


二人の会話を戦いの中でもしっかりと聞いていたんだな。


マリアさんはやはり凄腕の冒険者なのかも知れない。


「だが、私は護衛としてライル殿についている。離れるわけには」


「いいじゃない。私がいるんだし。キレイなもの……欲しくないの?」

「ぐぬぬぬぬ、ライル殿!!」


……。


「まぁ、別にいいんじゃないですか? ウィネットちゃんが喜んでくれるものがあるなら……」

「本当か? じゃあ、行ってくる!!」


行ってしまった。


「私も行ってもいい?」

「ああ。だけど、無理はするな。怖かったら、戻ってくるんだぞ」

「うん!!」


本当に食べ物が好きなんだな……。


今度はちゃんとした調理セットでも買ってやるか……。


「やっと、三人になれたね」


ん?


「ええ。じゃあ、お願いします」

「行きましょうか」


不敵な笑みを浮かべたマリアさんが少し気になったけど……。


フェリシラ様の手の感触がとても幸せで、全てが良く見えてしまいます。

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