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内燃機関式戦斧

薄氷氷雪は敢えて津雲の練った作戦に沿う形で銃撃を行った。

火薬の発火によって打ち出された銃弾は『銀の絃』が伝達する通りに空中を舞う。

事前に全ての着弾地点を感覚したあすかは騎士の矜持とも思しき白銀の盾で銃弾を弾く。

如何なる罪があれど、『白裂王家親衛騎士団』の一員であるあすかにとって、教官の銃撃から津雲を守護することなど造作も無かった。

それが『銀の絃』によって予知し得るのならなおさら、確実に津雲の作戦通りに動くことができる。

あすかと津雲は更なる傷を負うことなく氷雪の元へ辿り着いた。

二人は『銀の絃』の感覚を確かめると、お互いの意志を重ね、示し合わせたように剣技を放った。

「天剱流剣術『椿』」

「我流火禱『白繡火』」

氷雪の片側から剣戟が横一線に加わり、もう片側から白い炎が十文字に襲い掛かる。

「やるわね。」

生徒二人の威勢溢れる剣技は氷雪を圧倒するに充分な気迫だった。

氷雪はあすかの一閃の威力を小刀で反らすと、回転しながら津雲へ発砲し、白く燃え盛る『白繡火』の閃きを相殺した。

【王立白裂銀海学園】の一教官を勤める者として申し分のない戦闘能力が生徒たち三人に『銀の絃』によって感覚共有された。

三人は氷雪を抑え込んでいるのにも関わらず、彼女の戦闘能力の高さに恐れ慄いた。

しかし、達は恐怖を興奮へと変換したかの如く高々と戦斧を掲げた。

すると、何かしらの機構が起動したのか、戦斧内部が回転しながら火花を放った。

火花は次第に勢いを増し、畝る炎が戦斧を包み込んだ。

起動した戦斧を構え、達が反撃の咆哮を上げた。

「先公、この軍事演習、最高に楽しいぜ。俺の自慢の内燃(ないねん)機関式(きかんしき)戦斧(せんぷ)の強さを見せてやるぜ。」

「良いわよ。かかって来なさい。」

氷雪の回答とともに達は大地を蹴って駆け出した。

それに合わせてあすかと津雲が更なる剣戟を氷雪に加える。

天剱流剣術と津雲の我流火禱が合わさって氷雪の行動を封鎖する。

達の一撃のために二人は力の限り剣を振るった。

その想いに応え、達が空中へ飛躍すると『銀の絃』が一層輝き出した。

対峙している三人を演習場の天井近くから眺めながら、達は炎に包まれた戦斧を頭上に構えた。

ふと、柄にもなく昔の事を思い出した。

なんとなく「こんな風に目上の人間に対して戦斧を振り翳した事があったっけ?」と。

達の瞳にぼんやりと赤い陣羽織が風に翻った。

「力だけでは私は超えられぬぞ。」

追憶の陣羽織が達に囁く。

「ったく、(むかつ)くぜ。」

達は小さく溜息を吐くと思うがままに戦斧を振り下ろした。

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