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霊窟の悪鬼

「いざ、参る!」

鋼鉄の剣身に鋭気(えいき)(みなぎ)る。

鍛え抜かれた四肢から繰り出される剣戟は目前の悪鬼を斬り倒した。

「親方様、これは殿下から伺っていた通り、前代未聞の一大事のようですね。」

鮮やかな血を流し息絶えようとしている悪鬼を(いぶか)しむように覗き込んだ男が呟いた。

今し方、悪鬼を斬り捨てた男とは別に、三人ほどの従者のような男達がそれぞれ悪鬼を斬り崩した。

「そうだな。」

親方様と呼ばれた一際派手な武装の男が従者に答えた。

「なぜ、一夜にして此処(ここ)までの大群を成したのか、甚だ理解に苦しむ。」

濃霧が漂う山間部で武具を揃えた男達と呻くように威嚇する複数の悪鬼が対峙していた。

悪鬼らの身の丈はどの男達よりも高く、隆々たる筋肉がその身を覆っていて、岩や大木などをそのまま持ち上げては自慢の腕力で振り下ろしていた。

しかし、剣を構える男達は怯む様子もなく、()る者は()なし、或る者は斬り捨てて、それらの衝撃を逃していた。

「しかし、こうも大群で来られると、撃退するのも一苦労ですねぇ。……もう帰りません?」

男達の中で最も若そうな青年が緊張感も見せずに苦言を呈した。

その内容の割には草臥(くた)れる様子もなく悪鬼を斬り刻んでいる。

「これも殿下から命じられた武家としての大切な責務だ。弛む事なく応じようではないか。」

親方様が真っ直ぐな目で答えた。

悪鬼らは山間部の中で示し合わせたかのように皆同じ方向を目指して進んでいたが、それを阻む様に男達が行く道を塞いでいたのだった。

元々は侵攻を止める様、悪鬼らに呼び掛けていたが、奴らが聞く耳を持つはずもなく、意思疎通が破綻した事を確認すると、元来た場所へ押し返すように剣戟を加えた。

そうして、じわじわと山を登る様に悪鬼を薙ぎ倒していた。

宵が更けた頃に戦いが始まり、かなりの時間が経った。

すると、一日の始まりを告げる太陽が登った。

日の出以前から悪鬼の撃退を行なっていた男達は悪鬼の巣窟まで奴らを撃退すると、霧が晴れるとともに踵を返した。

しかし、彼らが悪鬼の巣窟から出ようとすると共に、狙い澄ましたかのようにその門が崩落した。

「矢張り、正面から堂々と攻め込むのは悪策であったか。」

親方様は顔色一つ変えずに自らの行動を顧みた。

「親方様、此処は奇岩怪石の連なる霊窟故、正面以外に入れそうな場所は見付かりませんでした。」

従者が悲しむと同時に、霊窟が揺れ動いた。

少し標高の高い山間部にぽっかりと空いた大穴の天井から大小様々な岩が落ちてくる。

唯一の出入り口である門が崩落し、霊窟に閉じ込められた男達は徐に近付いてくる大鬼を発見した。

身体そのものが山であるかと疑うほどの筋肉組織の塊がその半身と同じくらいの大きさの鉄塊を肩に担いで現れた。

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